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第一章

41話

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 サタナス様、アール君とで、人里の原っぱで野営していた。

「いいよ、テントに入ろう」

 3人でテントに入って驚いた。
 何というか……白い空間にベッドとお風呂、トイレしかない。まあお風呂とトイレは別に一つでもなんとかなるけど。入ったすぐに天蓋付きの大きなベッドが、ポツンとひとつだけって。

 初めて神様仕様のテント――空間魔法を使ったからどうなるかわかっていなかった。『こんな部屋がいいなぁ』と部屋の構造までイメージして、3人分といわないとダメみたい。

「あの、寛いでいるところ悪いのだけど……いちど、テントからでてほしいな」

「なんでだ? 3人余裕で寝れるベッドの大きさではないか?」

「ええ、ふかふかのベッドいいです。サタナス様と寝るのは初めてです」

 2人はテントに入ってすぐに見えた、天蓋付きのベッドに驚くことなく飛び乗りくつろぎ始めた。私は彼らを眺めながら、もう一度とテントの中で願ったが、ベッドは増えなかった、
 
 もう一度……これは、テントのなかに人がいると、空間魔法は使えないみたい。

「触り心地、寝心地、よいベッドだ」
「はい、テントに入ったすぐに寝れます」

 サタナス様とアール君が楽しそうだし、今日は疲れたから、私もはやくベッドに横になりたい。アール君は猫で可愛い、サタナス様はパパと同じだとおもえばいい。

 マジックバッグから、2人のタオルを取り出しベッドに置いた。

「サタナス様、アール君。先にお風呂にはいってきます」

「「いってらっしゃい」」

 キャンプに出かけたら必ずと言ってもいいほど、ご当地の温泉に日帰り入浴していた。自分専用のお風呂セットをアイテムボックスから出して、ベッドから離れた位置にあるお風呂場に向かった。

(一応、温泉をイメージしたのだけど……どうなっているのだろう?)

 お風呂に進むにつれて――ん、ほのかに硫黄の香りがする……たちこめる湯煙のなかを通り、目の前にお風呂がドーンと現れておどろく。
 
「なっ!」

 だだっ広い真っ白な空間にポツンと。あの日、最後にはいった旅館の露天岩風呂があった。さっき、テントの前でお風呂を想像したとき頭によぎったのか。

 だけど……この空間にしっとり乳白色の露天岩風呂はミスマッチで、脱衣所、風呂桶、洗い場がない。
 まさかトイレはどうなっていると探すと、近くに壁紙が貼られた真っ白な扉だけが浮かんでいた。恐る恐る取っ手を回して、その扉を開けると見覚えのある水洗トイレ、これまた最後に寄ったコンビニのトイレだった。

 このありさまは……私の想像力のなさが引き起こしたのだろう。とりあえず温泉に浸かろうと服を脱ぎ、掛け湯をしてから、しっとり乳白色の露天岩風呂に浸かった。

「クゥ、ハァ――お湯の温度がちょうどよく、全身が温まって気持ちいい。いっきに体の疲れが取れる」

 岩に体を預け、周りを見回すも真っ白。そうだけど、テントの中でお風呂に入れるのは有難いし、おもしろいかも。――まあ、色々気になるところはあるけど、いいっかと、ゆったり露天風呂に浸かった。

「さてと、体も温まったし……あれ?」
 
 湯船からでて気付く、自分の左胸に黒い鳥の様な紋様をみつけた。

「何これ?」
 
 これに似た紋様が左手の甲にもある――この紋様はアール君と使い魔契約をしたときについた、猫っぽい契約紋だ。
 まさかとお思い指を確認すると、右手の人差し指に噛まれたあとがあった。私はタオルで体をサッと拭きベッドにくつろぐサタナス様に聞いた。

「サタナス様、私と使い魔契約しました?」

 アール君とベッドでくつろぐ、サタナス様はしれっとこたえた。

「したぞ。なんだ、ようやく気付いたのか――エルバ、これからよろしくな」

「よろしくって、2人も使い魔の契約をしたら……私の魔力が枯渇するじゃない」

 使い魔と主人は魔力の供給をしている、どちらかの魔力が減ればたされる仕組み。さっきは2人共に枯渇したから、2人共に眠ってしまったのだ。

 アール君との魔力はほぼ対等だけど、元魔王サタナス様の魔力量は私とアール君の魔力を吸い取っても、彼はフルには回復していなかった。そんなサタナス様と使い魔契約すれば私だけではなく、サタナス様とアール君の体がもたなくなるのは目に見えている。

「なんて事をしたの、サタナス様!」
 
「エルバ、そう心配するな。これからワタシは、このリラックスモードで過ごす」

 サタナス様は"リラックスモード"と訳のわからないことを言い。ポンとふわふわでモコモコ、つぶらな瞳のまんまるな黒鳥に姿を変えた。
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