野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ

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第一章

37話

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 サタナス様は大丈夫だと言った。
 そのことを連絡する為に、ママから借りた笛でフクロウ便を呼びよせ。魔王サタナス様に出会えたこと、魔王様が魔王の座を退いたことを手紙に書き、ママの所まで送った。

「エルバ様。これでママ様達も安心いたしますね」

「そうだね……早くパパに会いたい」

「ワタシも昔の仲間――友に会いたい」

 3人で夜空に飛び去っていく、フクロウを見送った。



 元魔王――サタナス様が狩ってきた、もち鳥を食べたけど、お腹と魔力不足の私とアール君。

「もち鳥が余っているし、何か作ろうかな?」


「「賛成!」」


 さて、何を作る? んー、雑炊が食べたいかも。

 まずは、コメが3合炊けるラージメスティンでコメを炊いて。もち鳥で出汁を取り、トマトマ、キャベンツ入りの雑炊、彩りにエダマメマメは茹でよう。

 メニューが決まってエルバの畑を開き、コメ、キャベンツ、トマトマ、エダマメマメを採取した。

 ポンポンと目の前に、あらわれる食材にサタナス様は驚くも、どこか楽しげに隣でみていた。

「エルバの能力はおもしろいな……さすがだ」
「サタナス様も、そう思いますか?」

「ああ、珍しい」

 アール君とサタナス様は意味ありげな発言をしているけど、彼らは深くは聞いてこない。明日、魔法都市に戻ってママに説明するとき、一緒に聞いてもらえばいいかな。

 コメを振って袋に採り、ラージメスティンに水魔法で600mlの水をいれ、焚き火の上に網を引きでコメを炊く。炊けるあいだにエダマメマメをサヤから出してむき身にして、キャベンツ、トマトマは食べやすい大きさにカットした。

 飲み物はやっぱりシュワシュワ。

 空っぽになった水筒を水魔法で洗い。水を入れてシュワシュワの実をポンと一粒いれ、レンモンを採取して輪切りにカットして入れた。

 シュワシュワはこのまま飲んでもおいしいけど、やっぱり冷えたシュワシュワが飲みたい……のだけど。出発まえ、ママに氷魔法で出してもらった氷は全て溶けてしまっていた。

(アール君は火属性、私はまだ水魔法だけ……サタナス様は?)


「あの、サタナス様は氷魔法が使えますか?」


 私のとなりで焚き火の火をたやさないよう、薪をくべるサタナスに聞いた。

「氷魔法? 聖魔法以外は全て使えるが……もしかして、そのシュワシュワする飲み物を氷で冷やすのか?」

「はい、冷やして飲むと更においしいのでお願いします」

「サタナス様、レンモン入りの冷えたシュワシュワは最高です!」

『ほお、それは飲んでみたい』と、氷魔法を使いテーブルに置いた、コップに氷を入れてくれた。



 ラージメスティンを強火にかけ、沸騰したら弱火で10分加熱する。加熱が終わったらタオルに包んで10分置く。
 
 コメを蒸す間に、私は大きめの鍋に水ともち鳥入れて出汁を取り、カットしたトマトマ、キャベンツを入れて煮込んだ。

 野菜が煮えてきたら、蒸しが終わったコメを2合分入れた。最後に塩コショウで味を整え、エダマメマメをちらして雑炊の完成だ。

「んーん、ここに卵がないのは残念だけど……お腹がすく、いい匂い」

「おいしそうだな」
「サタナス様、おいしそうです。はやく食べましょう」

 人数分のシェラカップに、折りたたみのお玉で雑炊をよそい。

「「いただきます」」

 もち鳥のエキスを吸ったコメ、キャベンツ、トマトマ、エダマメマメがおいしい。胃にも優しい味付け。

「これは美味だ。エルバらおかわりをしてもよいか?

「僕もおかわりします」

「ええ、残ったコメを握った、塩焼きもち鳥のせおむすびもどうぞ」

 残っていた、もち鳥をスキレットで塩コショウをかけて焼き。これまた残っていた、コメでおむすびを握り上に乗せた。

「いただこう。おお、もち鳥の皮がパリパリ、このおむすびも最高にうまい」

「エルバ様、サタナス様、おいしいです」

 私も、アール君も、けっこう食べる方だけど、サタナス様はそれをうわまった。彼は雑炊をすべて平らげ、おむすび、シュワシュワを一気に飲み干す。

「あいかわらず惚れ惚れする、サタナス様のいい食べっぷり」

「そうか? ワタシはみんなで食べる食事が好きだ……それに300年あの鳥籠の中にいて、まともな食事を取れなかったからな。それに、この料理は最高にうまい!」

 と、ほっぺたにコメをつけながら、笑った顔が素敵だった。


《風邪予防、胃痛、食物繊維がとれる栄養満点雑炊――レンモン入りのシュワシュワ。体力、疲労回復(大)発動いたします》

 ――え? 体力、疲労回復(大)?

 レンモン入りのシュワシュワを飲んだときとは違い、光る量も、枯渇していた魔力は全開とはいかなかったけど……ほぼ回復したみたい。
 
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