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第一章

35話

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 元魔王サタナスは魔力が枯渇して眠った、2人を連れて夜空を飛び、シュノーク古城から離れた草原に降り立ち2人を木の幹に寝かせた。

 実に心地よい風だ。

 サタナスは草原のなかに1人たち、ときおり吹く風を体に感じ、深く深呼吸した。

「うまいな……黒く、よどんでいない新鮮な空気が吸え、肌に風を感じる。なにより窮屈ではない。魔力がほぼもどり、力が満ちあふれる……ようやく、ワタシは自由になったのだ、ククッ、ハハハッ!」

 サタナスは全身で喜びを感じ、感謝しなくてはと眠るアールとエルバを見下ろした。
 
 さて、2人はどこに住んでいるのだ。
 
 アールは魔族、エルバはタクスの娘で人間ではないとなると、ここ人の里の者ではないな。

 このときエルバは夢の中でジャロ芋――ジャガイモでポテトチップ、細く切ってカリカリポテト、櫛形に切ってホクホクジャガイモを、博士としゃべりながら油で揚げていた。

 博士、ジャロ芋の効能は。

《ジャロ芋の効能はストレス軽減》

「へぇ、ストレス軽減かぁ。――どうして、いまのいままで、私はジャガイモ料理のことを忘れていた?……ポテトチップ、フライドポテト、肉じゃが、コロッケ……まだ、まだジャロ芋の料理はあるのに――ムニャムニャ」

「ポテトチップ、フライドポテト……?」

 おもしろい寝言だ。サタナスはエルバのそばに座り"ステータスオープン"と唱え、エルバのステータス画面を開きステータスを確認した。

 そして、ある文字にニヤリと笑う。

「ほほう、エルバは"時渡り"か――話を聞いて、おかしいと思ったのだよ、魔族と魔女のあいだに子は生まれぬ。しかし、エルバから魔族、魔女のものでは無い魔力を感じたのはそういうことか――クク、神に選ばれしもの」

 古き書物の中に記されていた――この世界にないおもしろい力を使い、長い年月を生きる我らを楽しませる存在。アールはそれに気付いて、使い魔になってでもエルバのそばにいたいと思ったのだな。

 ズルいぞ、アールばかり楽しい思いはさせぬ。

(うむ、いいことを思いついた。ワタシもエルバの使い魔になり、これからの余生を楽しもうではないか)

 サタナスは眠るエルバの指に噛み付き、血を舐め、術を唱えて使い魔の契約を果たす。知らずのうち、元魔王サタナスに気に入られたエルバは、夢の中でジャガイモに埋もれていた。

 ポテチ、フライドポテト……この、ジャロ芋だけで作ったジャーマンポテトおいしい。塩加減がいい塩梅、おいしくて箸がとまらない!!
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