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第一章

27話

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 これが異世界チート! だと。自分の能力に驚いていたけど、レンモンのとなりに"枝豆"らしいものが生えていた。

 博士、これは?

《エダマメマメという、マメ科の野菜です》

 食べられる?

《食用です。たんぱく質と食物繊維が豊富です》

 やった、枝豆だ。塩茹でにして食べると美味しいのよね。スーパーに行くとついつい買っちゃうし。枝豆って茹でて食べるほかにも枝豆ごはん、卵焼き、料理の彩りに使える。

 博士から、タネをもらって畑に植えた。


 この原っぱからシュノーク古城に行くまでには、いくつもの畑と原っぱがあるみたい。だから、みたことがない薬草、野菜を見つけられるかも。


(クゥ、ワクワクする!)


「さてと、休憩を終わりにして、アール君そろそろ行こう」

「はい、ところでエルバ様。ここからだと、シュノーク古城まで、まだ距離がありますがどう行かれますか?」
 
 まだ、私たちがいる場所からシュノーク古城はみえない。小説の通りだと、丘の上に建つシュノーク古城……と書いてあった。

「歩いていくのはちょっと無理な距離かな? ほうきで、やすみ休み飛んで行こう」

「かしこまりました。では、姿を消しますね」

 アール君は魔法でスーッと姿を消し、私は身消しのローブを羽織って、ママに借りたホウキにまたがり魔力を集中する。

「エルバ様、魔力が安定していません。落ち着いてください」

「わ、わかってる……フウッ――よし、いこう!」

 私は地面を蹴って飛び上がると、上手く魔力が乗って、空高く飛び上がりホウキに乗れた。ここで乗れたと喜び、気を抜いてはダメ。
 練習ではこのあと気を抜いて、高度がストーンと下がり尻餅をついたのだ。


(まだ、集中!)


「エルバ様、魔力が安定いたしました」
「そう? すこし、コツが掴めてきたのかな?」

 そういうと、肩に乗るアール君は"いいえ"と首をふった。

「少しだけですが。僕の力も使っているので、まだまだです」

「え、アール君の力? 私は自分の力でホウキに乗れていないんだ」

「はい、そうなります」

 クゥ――乗れたのかと思ったけど。まだ、ホウキに乗るのってむずかしい。訓練のときママが言っていたのだけど、私は他の魔法使い、魔女よりも魔力の量が多いらしい。

 しかし、未熟な、いまの私ではその魔力量は手にあまると言っていた。

「アール君、ありがとう。日々訓練だね」

「ええ、訓練は大事です。魔法都市に戻ってからも、毎日いたしましょう」


 その数分後、私とアール君は順調に進み丘の上に建つ、シュノーク古城の近くに降り立った。
 
 いやぁ、ここにくるまでが楽しかったなぁ。
 
 たまたま通った畑に実っていた野生のトマトマ、レタスス、キャベンツ、トトロモウシをみつけて、博士からタネをもらいエルバの畑に植えた。

 効能もトマトマは風邪予防。
 レタススは美肌効果。
 キャベンツは胃痛を和らげる効果。
 トトロモコシは腸内環境を整えると、博士に教えてもらった。

 フフ、城に着くまでに色鮮やかな、野菜畑ができあがったのだ。だけど、薬草は見つけたものばかりで、新しい発見がなかったのは残念。
 

 

「…………ウヒョォ」

 変な声が漏れた。

 辿り着いた、丘の上の森の中に建てられたシュノーク古城――所々、レンガで作られた外壁がところどころ崩れていて、苔とツタが巻きついている。
 

 こ、こ、このシュノーク古城に人が、ほんとうに住んでいるの?
 

「ねえ、アール君、どう? このシュノーク古城にお化けとかいない?」

 アール君の『ええ、なにかいますね……』と、淡々とこたえた言葉に私は震えた。

「ヒェ――ほんとうにいるのぉ?」

「フフ、エルバ様はお化けが怖いのですか?」
「怖いよ、実態のないお化けだよぉ……」

 私を驚かしているのか?
 ほんとうなのか?

『ここと、そこに何かいますね』という、アール君の言葉も怖いのだが。――シュノーク城に近寄ればちかよるほど寒気がしてくる。
 マジで怖いから、肩の上にいるアール君を抱っこしたいと言ったら断られた……とほほ。


 な、何故かわかりませんが……このシュノーク古城が怖い。ガタガタ震え、その恐怖を乗り越えてシュノーク古城の外壁近くまで来た。

「《…………》」

「え? アール君何か言った?」
「いいえ、なにも言っておりませんが」
 

「《……ウ、ウウッ、なんとも懐かしい魔力の気配がする。近くにいるのか? この魔力を持つもの……はやく、ワタシのところに来てくれ!》」
 

 ハッキリ聞こえた、地を這うような低い声。
 

「うぎゃあ――!! アール君、アール君、へ、へ、変な男性の声が聞こえたよぉ~!」

「はい、聞こえましたね」

(へぇ? あれ? なんで、君はそんなに落ち着いているのぉー?)
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