野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ

文字の大きさ
10 / 171
第一章

9話

しおりを挟む
 この黒猫のアール君との出会いは一週間まえ。
 私は新作の"コメ団子"を食べながら、いつものエルブ原っぱにきている。

「おいしい! この新作モチモチ団子、作った人に感謝!」

 この魔法都市に住む、実験好きな魔法使い、魔女、亜人達はコメ草が食べられると知ったやいなや。
 野菜などの具をたっぷり挟んだお焼き、せんべい……いま私が食べているモチモチ団子……などなど。元から栽培している食材を掛け合わせて、新しい商品を産みだしている。

 怒涛の勢(どとうのいきおい)とはこれの事ね。

 いまに異世界風のカツ丼、親子丼、牛丼……ドリア、シチュー、カレーと、いった私が食べたい食べ物が、知らないうちに出来ているかもしれないくらいの勢い。
 まあ、カレーはターメリック、クミン、コリアンダー……とか? スパイスがいくつも必要だから、いますぐ作るのは無理かな。

 異世界の植物でそれらしい香草、薬草が見かかれば話は別だけど。でも、コムギン――小麦粉はある、あとバターと牛乳があればシチューもできる。



「ん?」

 エルブの原っぱを探索中、足元に一センチくらいの丸い赤い実が落ちていた。私はしゃがんでその実をつまみ「博士、この実は何?」と聞いた。

《これはシュワシュワの実と言います》

 シュワシュワの実? 
 博士、食べられる?

《はい、食用ですが。そのまま食べるのは危険です》

 ――なに? 危険な食べ物?

 匂いは無臭、この赤いシュワシュワの実が気になる。
 しばらく悩んだすえ……好奇心は勝ちマジックバッグから水筒を出して実を洗い、ペロリと舐めた……。
 
 お、おお、舌の上で名前のとおり"シュワシュワ"する。
 しかし、このシュワシュワはどこかで味わったことがある。

「あっ!」

 そこでピンとひらめき、その実をポチャンと水筒に落とした。すると、水筒のなかでシュワシュワ、パチパチ聞き覚えがある音がする。


(私の記憶が間違っていなければ!)
 

「いただきます!」
 
 私はシュワシュワ入りの水を一気に喉に流しこんだ。
 シュワシュワ、炭酸を飲んだときの爽快感が過ぎていく。

「「お? おお――! ……やっぱり! 温いけど炭酸水だ!!」」


 私のひらめきは間違っていなかった……で、この実はどこから転がってきたの? と、原っぱを見渡すと。
 近くの低木(ていぼく)――私の腰くらいの木にその赤い実はみのっていた。

 博士に低木の名前を"シュワの木"だと教えてもらい。
 "タネ"をもらって畑に植えると、ページの一角にドンとシュワの木が実った。

(ほぉ、いつもの一マスとは違い、低木(ていぼく)は四マス必要なのかぁ……リンゴの木とか、果物の木はまるまる一ページ使うのかな?)
 

 そうだ、博士。
 シュワシュワの実効能は?

《整腸作用、腸内環境を整えます》

 ほほう、お通じがよくなるのか……飲んどこ。

「プハァ、ひさしぶりの炭酸はうまし!」

 "いつでも炭酸水が飲める!"と喜ぶ私は、後ろから鋭い視線を感じた。――だれ? だと振り向くと。
 もふもふの黒猫が1匹、尻尾を揺らし、草の陰からこちらをジッと見ていた。

(私が一人原っぱで、ゴゾゴゾしているから気になったのかな?)
 
 異世界の猫ちゃんか……この子の尻尾が二本だ、可愛い。もふもふ、ふわふな見た目の猫ちゃんにのほほんと声をかけた。

「君はどこからきたの?」

 私が猫ちゃんにそう聞くと。
 黒猫はいきなり"キッ"と膨らみ、威嚇して、バシバシニ本の尻尾を地面に打ちつけ。
 
「君はここで変わったものを食べて毒、麻痺になったのにもかかわらず。また、調べもせずに食べているのです? ……あなたは学習しないバカですか!」

「…………ええ?」

 いきなり"モフモフ黒猫ちゃん"に怒られた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...