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一
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遠くからでいいので攻略対象の方々、見ていてもいいですか?
それともダメなのでしょうか? と離れてひっそりと、見ていたはずなのにどうやらそうはいかないようですわ。
♢
婚約者の王子様とご一緒の馬車で登校。
常に王子様の側にいる、私こと、ルリア・バーレルは悪役令嬢である。
教室に着くまでの二人の時間だけど、いつものように隣を歩かず、一歩、二歩下がって後ろを歩く。
王子様はそれが不満らしく、振り向き眉を潜めた。
「君はどうして? いつも、そんなに離れて歩くんだ?」
「えーっと……」
(今から、ヒロインさんが王子様の隣に来るのに、私なんかが隣を歩くなんて出来ませんわ)
ほらっ、今すぐ。ドタドタ、バタバタと音にすればこんな感じ?
そう、こんな音が出せるのは、ただ一人。
この物語のヒロイン。男爵令嬢のローリスさんだけですわ。
「おはよう、アルフレッド様ぁ!」
私を無視して、王子様に笑顔で駆け寄ってきた。いつもどこか、ピンク色の髪が跳ねている元気なヒロインだ。
「おはよう、ローリス嬢。朝から元気だね」
まあまあ、あらあら。お二人並ぶと素敵、美男美女。では、では邪魔者の私は、この場を去りましょう。
「アルフレッド様、ローリスさんがいらっしゃいましたので、私はこれで失礼いたしますわ。ご機嫌よう」
「ルリア嬢?」
呼び止める王子様を無視して、会釈をしてその場を離れた。
仲の良い、お二人の邪魔なんてしませんわ。
と、少し離れた廊下の端から、猫のように、こっそりと二人を覗き見ている。
うーん、どうして? いつも、そうなのかしら? ローリスさんは押せ押せで、グイグイ行くのに、肝心の王子様は距離を置き眉を潜めていた。
(ヒーローとヒロインなのですから、もっとこうギュッと、仲良くしてくださいませ)
そのご様子では私は萌えませんわ。もっと、もっとイチャラブしてくださいですわ。
そのとき、トントンと肩を叩かれて声をかけられた。
「ルリアちゃん、おはよう。また、こんなところで君は何してるの?」
「お、おはようございます。カルザード様」
この方も攻略対象の騎士カルザード様。人なっこい垂れ目で、ちょっとチャラ男風のイケメン。
離れた騎士クラスからローリスさんに会いに来たのかしら?
(まさか、これは!)
王子様とカルザード様がヒロインのローリスさんを、取り合う姿が見れるのでは?
突然のイベント発生ね⁉︎
『王子だからと、僕のローリスちゃんを独り占めにするな!』
『いいや、俺のローリス嬢だ』
『やめて! 私のために争わないで!』
(とかベタベタな展開を求む)
しかし、肝心のカルザード様は動かないどころか、私の肩に手をかけたままだわ。
そしてなぜか? イケメン、スマイルを私に見せた。
「ねぇ、ルリアちゃん。最近、新しく出来た王都の喫茶店にパンケーキを食べに行かない?」
ローリスさんとではなく?
「私とですか? パ、パ、パンケーキ⁉︎」
大好物のパンケーキ。三食パンケーキでもいいくらいの大好物。
「そっ、ルリアちゃん。パンケーキ好きでしょ?」
「えぇ、好きも好きすぎ、大好物ですわ」
「じゃー帰りに食べに行こ」
カルザード様とご一緒にですか……うぅーん。パンケーキは捨てがたい。
でも、攻略対象の方に好意を寄せてしまうと、最後の日に悲しみそうなので、余り。お近づきにはなりたくないのですが、パンケーキは食べたい。
あのふわふわでクリームがたっぷり。口に入れると幸せ気分になるパンケーキ。
頭の中はパンケーキ一色になり口元が緩んでしまう。
「その顔は決まりだね。今日の帰りクラスに呼びに来るからね、一緒に歩いて行こう」
「はい、え、歩いて?」
「うん、歩いて。寄りたい店があるんだ」
それなら仕方ないか……学園から王都は目と鼻の距離ですけど、貴族の方々って歩かないものだと思っておりました。
これは勉強不足、反省ですわね。
それに、クリームたっぷりのパンケーキに罪はありませんもの。
「またあとで、そうだ、昼食も一緒にね」
昼食の約束もして、カルザード様もパンケーキが楽しみなのか、手を振り笑顔でクラスに戻っていかれた。
さて私もクラスに行きますか、と、そのときクイッと袖を引っ張られた。
(ひやぁ、誰?)
と見れば。可愛く人なっこいグリーン色の瞳が私を下から覗く。
まあ、この方も攻略対象の魔法科のマサク様。今日も黒いローブと魔法の杖がお似合いですわ。丸い眼鏡をかければ、まるで……のよう。
「おはようございます、マサク様」
「おはよう、ルリア。何かいいことがあったの?」
いいこと? え、それが分かるくらいに表情が綻んでしまっている、というのかしら? これは引き締めないと。
「で、何かいいことがあったの?」
「えぇ、今日の帰りにカルザード様と、新しくできたお店にパンケーキを食べに行く、約束をしましたわ」
一瞬マサク様の可愛い瞳が細められた。
「ふーん、カルザードとパンケーキね」
「はい、パンケーキを食べに行くんです」
そっかと、いつものニコニコ顔に戻り、僕も着いて行こっと。と、言いながら魔法科の教室に戻っていかれた。
それを見送っていたら、隣にスッと誰か立つ。
「ルリアさん、おはよう」
「おはようございます、タイガー様」
この方も攻略対象、獣人族のタイガー様。私とは同じクラスなのですよ。
あぁ、今日もお耳と尻尾がもふもふ、ふわふわ。
(横に、揺れる尻尾を触りたい!)
それはダメよルリア!
タイガー様に触れることができるのは、ヒロインのローリスさんだけの特権なのよ! と。常日頃、我慢しております。じゅるり。
「今日はお昼寝をされに、書庫には行かれないのですか?」
タイガー様は成績優秀で授業に出なくても、テストは常に上位の方なの。私はと言うと真ん中くらいかしら。
「今から行くけど、ルリアさんも一緒に行かない?」
お昼寝のお誘い! と、タイガー様に手をギュッと握られた。
(うわっ、大きな手)
今からタイガー様とのお昼寝の誘いは捨てがたいのだけど、今日は魔法基礎の授業がありますのよ。
魔法は使えても、使えなくてもいいのですが、気分だけでもファンタジーを味わいたいのですわ。
「タイガー様、嬉しい誘いなのですが魔法の授業を受けたいので、お昼休みに行きます」
「だったら、俺も授業に出る」
タイガー様が? 繋いだままだった手を引かれて、クラスの中に連れて行かれた。
教室に現れたタイガー様と私を見て驚くクラスメイト達。
そんな集まる視線を気にせず、タイガー様は窓際、日向ぼっこができる席に腰を下ろした。
「隣はルリアさんの席ね」
「えぇ」
教科書は後ろのロッカーの中だから、自由に席に座れるからいいのだけど。
(……これは)
周りの視線が痛い。王子様とローリスさんにも見られてるわ。
(そうよね。今は一応、王子様の婚約者ですものね)
でも、王子様はローリスさんに夢中だから私のことなど、論外。
授業開始のチャイムが鳴り、転送の魔法で現れた魔法使いの先生。
「皆さん、魔法の基礎について教えますね」
目の前で始まった。魔法の授業に興奮して手をギュッと握ると、私だけじゃない手がある。
(あ、忘れていましたわ)
私って、タイガー様と手を繋ぎっぱなし、そっと、手を離そうとすればギュッと握り返されるのだけど、これは、いいのでしょうか?
当の本人、タイガー様はそんなことは気にしていないみたいで、眠そうに欠伸をしていた。
♢
「これで授業を終わります」
授業が終わると、魔法使いの先生は来たときと同じ、転送の魔法で帰っていった。
(いやぁー魔法ってすばらい!)
もう興奮して、ふーふーと鼻息荒くなって、しまうところでした。
【ファイア】とかファンタジーすぎてたまりませんわ。授業が終わってしまって残念ですけど、魔法の授業は面白かった。
「よかったね、ルリアさん」
「えっ?」
「魔法の授業、楽しそうだったから」
やだっタイガー様ったら、こっちを見ていらしたの? 鼻息大丈夫だったかしら……。
「魔法が好きって、笑ってる顔が可愛いかった。僕は書庫で昼寝してくるね」
ポンと頭を慣れられて、タイガー様は教室を出ていった。
タイガー様の、その行動に思わず赤面してしまった。
やはり攻略対象の方は仕草もイケメンですわ。
♢
昼食。誘ってくれた皆さんには悪いのですが、皆さんの従者にお断りの言付けを頼んだ。
私は庭園の隅で、朝作ってきたサンドイッチを食べていた。
サンドイッチといっても、まだ料理は料理長に習い始めたばかり。
バスケットの中身は白と黄色。卵一択。この料理? は失敗しないので安心。味もまあまあ。
それを隠れて食べている、私の前に芝生を踏む音と影が落ちる。私はさっとバスケットを背に隠した。
「ルリアちゃん、断るなんて酷いな」
「ルリア、僕が呼びに行ったのに、なんでいないんだよ」
「ルリアさん、お昼寝一緒にするんでしょ」
庭園の隅もすみのはなっこ、タイガー様は鼻が効くとしても、どうして皆さんに見つかるの?
困りました……私としては、余りコレを見られたくないのですが。
来られてしまった以上、むげには致しませんわ。
「ご機嫌よう。カルザード様、マサク様、タイガー様……? ローリスさんと食べるのではないのですか?」
いや、そんな約束してない。してないよ。しない。
いやいや約束というか……自ら、自発的に行くはずなのですが?
(ここに来たとなると)
皆さんはローリスさんに攻略されていない。フラグを回収されていないということでしょうか? となるとローリスさんは王子様一択!
そうなのでしたら、ご一緒に食べましょうとバスケットを背から出した。
「卵?」
「それは、サンドイッチ?」
「……ふっ」
皆さんの目が点になるのを始めて見ましたわ。コレ、そんなに酷いのかしら?
やはりパンから卵がはみ出しているから、なのかしら?
(これは、言い訳だってわかってるけど)
だって王子様が朝迎えにくるから急いで作った、からなの……と、自分の中でごちる。
「あの、まだ慣れていなくて……やはり見た目悪いですわね。でも、味はまあまあなんですよ……でも、皆さんのお目汚しをしてしまいましたわね」
(卵のサンドイッチ美味しいのに……)
しゅんと肩を落として背中に隠すと、はぁ⁉︎ 皆さんの驚きの声が重なった。
それともダメなのでしょうか? と離れてひっそりと、見ていたはずなのにどうやらそうはいかないようですわ。
♢
婚約者の王子様とご一緒の馬車で登校。
常に王子様の側にいる、私こと、ルリア・バーレルは悪役令嬢である。
教室に着くまでの二人の時間だけど、いつものように隣を歩かず、一歩、二歩下がって後ろを歩く。
王子様はそれが不満らしく、振り向き眉を潜めた。
「君はどうして? いつも、そんなに離れて歩くんだ?」
「えーっと……」
(今から、ヒロインさんが王子様の隣に来るのに、私なんかが隣を歩くなんて出来ませんわ)
ほらっ、今すぐ。ドタドタ、バタバタと音にすればこんな感じ?
そう、こんな音が出せるのは、ただ一人。
この物語のヒロイン。男爵令嬢のローリスさんだけですわ。
「おはよう、アルフレッド様ぁ!」
私を無視して、王子様に笑顔で駆け寄ってきた。いつもどこか、ピンク色の髪が跳ねている元気なヒロインだ。
「おはよう、ローリス嬢。朝から元気だね」
まあまあ、あらあら。お二人並ぶと素敵、美男美女。では、では邪魔者の私は、この場を去りましょう。
「アルフレッド様、ローリスさんがいらっしゃいましたので、私はこれで失礼いたしますわ。ご機嫌よう」
「ルリア嬢?」
呼び止める王子様を無視して、会釈をしてその場を離れた。
仲の良い、お二人の邪魔なんてしませんわ。
と、少し離れた廊下の端から、猫のように、こっそりと二人を覗き見ている。
うーん、どうして? いつも、そうなのかしら? ローリスさんは押せ押せで、グイグイ行くのに、肝心の王子様は距離を置き眉を潜めていた。
(ヒーローとヒロインなのですから、もっとこうギュッと、仲良くしてくださいませ)
そのご様子では私は萌えませんわ。もっと、もっとイチャラブしてくださいですわ。
そのとき、トントンと肩を叩かれて声をかけられた。
「ルリアちゃん、おはよう。また、こんなところで君は何してるの?」
「お、おはようございます。カルザード様」
この方も攻略対象の騎士カルザード様。人なっこい垂れ目で、ちょっとチャラ男風のイケメン。
離れた騎士クラスからローリスさんに会いに来たのかしら?
(まさか、これは!)
王子様とカルザード様がヒロインのローリスさんを、取り合う姿が見れるのでは?
突然のイベント発生ね⁉︎
『王子だからと、僕のローリスちゃんを独り占めにするな!』
『いいや、俺のローリス嬢だ』
『やめて! 私のために争わないで!』
(とかベタベタな展開を求む)
しかし、肝心のカルザード様は動かないどころか、私の肩に手をかけたままだわ。
そしてなぜか? イケメン、スマイルを私に見せた。
「ねぇ、ルリアちゃん。最近、新しく出来た王都の喫茶店にパンケーキを食べに行かない?」
ローリスさんとではなく?
「私とですか? パ、パ、パンケーキ⁉︎」
大好物のパンケーキ。三食パンケーキでもいいくらいの大好物。
「そっ、ルリアちゃん。パンケーキ好きでしょ?」
「えぇ、好きも好きすぎ、大好物ですわ」
「じゃー帰りに食べに行こ」
カルザード様とご一緒にですか……うぅーん。パンケーキは捨てがたい。
でも、攻略対象の方に好意を寄せてしまうと、最後の日に悲しみそうなので、余り。お近づきにはなりたくないのですが、パンケーキは食べたい。
あのふわふわでクリームがたっぷり。口に入れると幸せ気分になるパンケーキ。
頭の中はパンケーキ一色になり口元が緩んでしまう。
「その顔は決まりだね。今日の帰りクラスに呼びに来るからね、一緒に歩いて行こう」
「はい、え、歩いて?」
「うん、歩いて。寄りたい店があるんだ」
それなら仕方ないか……学園から王都は目と鼻の距離ですけど、貴族の方々って歩かないものだと思っておりました。
これは勉強不足、反省ですわね。
それに、クリームたっぷりのパンケーキに罪はありませんもの。
「またあとで、そうだ、昼食も一緒にね」
昼食の約束もして、カルザード様もパンケーキが楽しみなのか、手を振り笑顔でクラスに戻っていかれた。
さて私もクラスに行きますか、と、そのときクイッと袖を引っ張られた。
(ひやぁ、誰?)
と見れば。可愛く人なっこいグリーン色の瞳が私を下から覗く。
まあ、この方も攻略対象の魔法科のマサク様。今日も黒いローブと魔法の杖がお似合いですわ。丸い眼鏡をかければ、まるで……のよう。
「おはようございます、マサク様」
「おはよう、ルリア。何かいいことがあったの?」
いいこと? え、それが分かるくらいに表情が綻んでしまっている、というのかしら? これは引き締めないと。
「で、何かいいことがあったの?」
「えぇ、今日の帰りにカルザード様と、新しくできたお店にパンケーキを食べに行く、約束をしましたわ」
一瞬マサク様の可愛い瞳が細められた。
「ふーん、カルザードとパンケーキね」
「はい、パンケーキを食べに行くんです」
そっかと、いつものニコニコ顔に戻り、僕も着いて行こっと。と、言いながら魔法科の教室に戻っていかれた。
それを見送っていたら、隣にスッと誰か立つ。
「ルリアさん、おはよう」
「おはようございます、タイガー様」
この方も攻略対象、獣人族のタイガー様。私とは同じクラスなのですよ。
あぁ、今日もお耳と尻尾がもふもふ、ふわふわ。
(横に、揺れる尻尾を触りたい!)
それはダメよルリア!
タイガー様に触れることができるのは、ヒロインのローリスさんだけの特権なのよ! と。常日頃、我慢しております。じゅるり。
「今日はお昼寝をされに、書庫には行かれないのですか?」
タイガー様は成績優秀で授業に出なくても、テストは常に上位の方なの。私はと言うと真ん中くらいかしら。
「今から行くけど、ルリアさんも一緒に行かない?」
お昼寝のお誘い! と、タイガー様に手をギュッと握られた。
(うわっ、大きな手)
今からタイガー様とのお昼寝の誘いは捨てがたいのだけど、今日は魔法基礎の授業がありますのよ。
魔法は使えても、使えなくてもいいのですが、気分だけでもファンタジーを味わいたいのですわ。
「タイガー様、嬉しい誘いなのですが魔法の授業を受けたいので、お昼休みに行きます」
「だったら、俺も授業に出る」
タイガー様が? 繋いだままだった手を引かれて、クラスの中に連れて行かれた。
教室に現れたタイガー様と私を見て驚くクラスメイト達。
そんな集まる視線を気にせず、タイガー様は窓際、日向ぼっこができる席に腰を下ろした。
「隣はルリアさんの席ね」
「えぇ」
教科書は後ろのロッカーの中だから、自由に席に座れるからいいのだけど。
(……これは)
周りの視線が痛い。王子様とローリスさんにも見られてるわ。
(そうよね。今は一応、王子様の婚約者ですものね)
でも、王子様はローリスさんに夢中だから私のことなど、論外。
授業開始のチャイムが鳴り、転送の魔法で現れた魔法使いの先生。
「皆さん、魔法の基礎について教えますね」
目の前で始まった。魔法の授業に興奮して手をギュッと握ると、私だけじゃない手がある。
(あ、忘れていましたわ)
私って、タイガー様と手を繋ぎっぱなし、そっと、手を離そうとすればギュッと握り返されるのだけど、これは、いいのでしょうか?
当の本人、タイガー様はそんなことは気にしていないみたいで、眠そうに欠伸をしていた。
♢
「これで授業を終わります」
授業が終わると、魔法使いの先生は来たときと同じ、転送の魔法で帰っていった。
(いやぁー魔法ってすばらい!)
もう興奮して、ふーふーと鼻息荒くなって、しまうところでした。
【ファイア】とかファンタジーすぎてたまりませんわ。授業が終わってしまって残念ですけど、魔法の授業は面白かった。
「よかったね、ルリアさん」
「えっ?」
「魔法の授業、楽しそうだったから」
やだっタイガー様ったら、こっちを見ていらしたの? 鼻息大丈夫だったかしら……。
「魔法が好きって、笑ってる顔が可愛いかった。僕は書庫で昼寝してくるね」
ポンと頭を慣れられて、タイガー様は教室を出ていった。
タイガー様の、その行動に思わず赤面してしまった。
やはり攻略対象の方は仕草もイケメンですわ。
♢
昼食。誘ってくれた皆さんには悪いのですが、皆さんの従者にお断りの言付けを頼んだ。
私は庭園の隅で、朝作ってきたサンドイッチを食べていた。
サンドイッチといっても、まだ料理は料理長に習い始めたばかり。
バスケットの中身は白と黄色。卵一択。この料理? は失敗しないので安心。味もまあまあ。
それを隠れて食べている、私の前に芝生を踏む音と影が落ちる。私はさっとバスケットを背に隠した。
「ルリアちゃん、断るなんて酷いな」
「ルリア、僕が呼びに行ったのに、なんでいないんだよ」
「ルリアさん、お昼寝一緒にするんでしょ」
庭園の隅もすみのはなっこ、タイガー様は鼻が効くとしても、どうして皆さんに見つかるの?
困りました……私としては、余りコレを見られたくないのですが。
来られてしまった以上、むげには致しませんわ。
「ご機嫌よう。カルザード様、マサク様、タイガー様……? ローリスさんと食べるのではないのですか?」
いや、そんな約束してない。してないよ。しない。
いやいや約束というか……自ら、自発的に行くはずなのですが?
(ここに来たとなると)
皆さんはローリスさんに攻略されていない。フラグを回収されていないということでしょうか? となるとローリスさんは王子様一択!
そうなのでしたら、ご一緒に食べましょうとバスケットを背から出した。
「卵?」
「それは、サンドイッチ?」
「……ふっ」
皆さんの目が点になるのを始めて見ましたわ。コレ、そんなに酷いのかしら?
やはりパンから卵がはみ出しているから、なのかしら?
(これは、言い訳だってわかってるけど)
だって王子様が朝迎えにくるから急いで作った、からなの……と、自分の中でごちる。
「あの、まだ慣れていなくて……やはり見た目悪いですわね。でも、味はまあまあなんですよ……でも、皆さんのお目汚しをしてしまいましたわね」
(卵のサンドイッチ美味しいのに……)
しゅんと肩を落として背中に隠すと、はぁ⁉︎ 皆さんの驚きの声が重なった。
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