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番外・シャルロットの休暇 (短編)

シャルロットはみんなと休暇を過ごしたい

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 お昼前の水龍様の森。
 青空の下、今日は魔法師匠のラーロさんとホウキに乗る、練習をしていた。
 やはり、シャルロットと一体化してから、魔力が安定してた様な気がする。

 うまく口で説明をするのは難しいけど、そんなような気がしてる。

 そして、この日の、わたしは調子に乗りまくっていた。
 えぇ、もうね、ホウキに乗るなんて朝飯前よ、だとも思っている。

 新しい練習着をマリーに作って貰い、気分上昇、もうウキウキだ。
 魔法師匠ラーロさんに貰った、ホウキを持ち練習は始まった。

「シャルるん、さあ、ホウキに乗ってみて」
「はい!」

 シーラン様達の訓練着に似せて作ってもらった、シャツとズボンの服。
 魔女の秘薬はバッチリ体に塗った、ハーブの様な、なんとも言えない匂いにも耐えてる。

 気合を入れてホウキにまたがって、思い出すのは、前世に何度もテレビで見たあのアニメ。


(まあ、わたしの方が上手いけど)


 魔力を感じて、地面を蹴って飛び上がった!


 やっぱり、安定して……

(えっ⁉︎)

 すぐそこの木陰にシーラン様とリズ様、リオさんがいた。
 みんなの表情はなんで、そんなに心配そうなの?

 それに

「ちょっと、みんなぁ! 今朝、訓練に行ってくるって、言って出て行ったじゃない!」

 訓練は一日中行われるから、みんなの帰りは帰るのは夕方のはず。
 最近、と言うか、目覚めてからずっと心配性だから、ホウキに乗る練習をすることは黙ってたのに。

 ラーロさんに「降ります」と合図をして、みんな近くに降りた。
 わたしが降りてくると、シーラン様達は木陰から出て来る。

「シーラン様。訓練はどうしたのですか? サボりですか?」

 ホウキからは降りず、低空飛行でみんなの周りを回りながら聞いた。

「兄上、俺達は訓練してきたよな」
「あぁ、訓練はしてきた」

「シャルロット様、我々の朝練は終わっています」


「朝練?」


 お揃いの訓練着を身につけた、みんなは「そうだ」と頷く。

「今日は朝練が終われば訓練は休みだから、シャルロットの後をこっそり着いて来た」


 着いてきたって……シーラン様、堂々とストーカみたいな発言はやめて欲しいし。

 でも。

「休みだなんて、なんで朝のうちに言ってくださらなかったの!」

「いや、シャルロットが無理をしないかを見守るのも、仕事だ」
「そうだね」

「シャルロット様。青桜の木によじ登るのは危ないのでおやめください」

 それって、ラーロさんとの魔法訓練の前じゃない!

 そんな前から見ていたと驚き、魔力が抜けて、コテンとホウキから落ちた。


「シャルロット!」


 それだけでみんなは心配して集まってくる。
 いくら「元気だよ」って「食事も、もりもり食べても」心配性は治らない。

 そりゃ、あれだけの事があったから、仕方ないのだけど。

「嘘は嫌よ!」

 また、地面を蹴って空高く飛び上がった。


 クルクル回りながら、プリプリ文句を言った。


 朝練だけだと言ってくだされば、みんなと、竜人の森でお昼をとったり、散歩にお昼寝だって、できるのに!

 森に魔法銭湯を作る話もできた。
 もちろん作るのはわたしではなく、竜人の森を作った竜人王様に協力してもらうのだけど。
 
 それに時間があるのなら、ダンジョン、キャンプ、バーベキュー、海水浴、人族の街、遊べるうちに、みんなとたくさん遊びたい!

 まったり、図鑑を眺めたりしてもいい。
 一日中、部屋や庭園でおしゃべりしたっていい。

 まったり、のんびり、したい。
 
 今はそれをしても許される。
 できなかった事をしたい。
 やりたいことだらけで爆発しそうだ。

 あまりにも降りてこないせいか、ラーロさんとみんなが側に飛んできた。

「シャルるんそんな空高くで、ちび竜に文句言っていても聞こえてないぞ! でも、一定速さで同じ所を回れるなんて、魔力が安定した証拠だな」

 ラーロさんに褒めてもらった。

「やった!」
「手を離しちゃ……って、遅いか」


「ひやぁ、落ちる!」


「「シャルロット⁉︎」」


 まだ気を抜くと落ちちゃうから、補助に魔女の秘薬を使っているのに、手を離したから魔力が乱れた。
 
 ここは、慌てず気持ちを落ち着けて……
 ふうっ、なんとか体制の立て直しができたのだけど。

 後ろからニュッと手が伸びて、わたしをホウキから引き離す。
 落ちそうなホウキは、リズ様が無事にキャッチしていた。

「まったく気を付けろ、それにホウキの練習はもういいだろう」
「そうだな、これ以上は怪我をするかもしれない」

「マリーさんとお弁当を作ってきました、竜人の森で食べましょう」

「まだ、ホウキに乗りたい」と言っても、みんなは勝手に行き先を決めて、文句を言っても聞く耳を持たない。


 魔法の師匠ラーロさんは? と期待したのだけど。


「じゃ今日の練習はここまで、次回はそうだな、一週間後のお昼過ぎにしよう」

「え、一週間後なの?」

「シャルるんごめんね。しばらく、アル様の手伝いで忙しい」

 アル様の仕事なら仕方がない、お礼を言ってラーロさんと別れた。


 ♢


 竜人の森に移動中。
 やはり、ホウキは返してもらえていない。

「そうだシャルロット。三日後、両親が開くお茶会に呼ばれたんだけど、どうする?」

 あの美形な、シーラン様とリズ様のお父様とお母様。

「もちろん参加します。三日後か、帰ったらマリーとドレスを選ばなくっちゃ」

「それでな、悪いんだけど。両親がシャルロットの【植物を育てる魔法】が見たいと言っていた、やったてくれるか?」

 わたしは「やります」と頷く。
 シーラン様の婚約者として、いいところを見せなくっちゃ。

「シャルロットちゃん、あまり張りきっちゃだめだよ」
「リズ様、大丈夫ですよ」

「何かあったら俺が助けるから、安心してやってくれ」

「私も何かあったら手助けをいたします」

 なんて、過保護なの?

「もう! みんなしてわたしが失敗すると思っているのね。三日後みてらっしゃい!」


 三日後、竜人の国の庭園に立派なバラを咲かせて、みんなを喜ばせることに成功した。

 シーラン様のご両親も喜ばれた。


(森でたくさん練習してきて、よかった)

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