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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

第34話 黄色い花の話。

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「シャルロット嬢行こうか」
「はい、シーラン様」

 彼はわたしに近寄ると抱きかかえて空高く飛び上がる。
 湖に行こうとシーラン様が言った時に、わたしは久しぶりにホウキに乗りたいと言うと、シーラン様を始め、リズ様、リオさんがそれを止めた。

「ダメだ、絶対にホウキには乗せない!」

 必死にダメだと彼らが言うので渋々諦めることにした、だって…抱えられると、なんだか恥ずかしくてもじもじしてしまう。

「ん、どうした? シャルロット嬢」
「なっ、なんでもないよ」

「そう? もし体調が悪いのだったら教えてね」
「大丈夫だよ、ただ恥ずかしいだけ」

 そうなの、わたしからシーラン様に密着をするのはまだいいのだけど、彼から来るとドギマギするって…

 わたしはいま、声に出して言った?

「あっ⁉︎」

「ふふっ、なーんだそうだったのか…では、もっとくっつこうかな」
「シッ、シーラン様⁉︎」

 驚くわたしをもっと強く抱えて微笑むシーラン様、わたしは空の上で真っ赤になった。
  
「シャルロット嬢のその、表情が見られるのは俺だけの特権だな」

 その後ろでは呆れた声が聞こえた。

「シーラン楽しそうだな」
「そうですね」

 呆れるリズ様とリオさんの声も届かないのか、空の上で楽しそうに笑うシーラン様に抱えられて、わたし達は青龍の湖に着いた。
 水辺のほとり青桜の近くで、アル様のお師匠様が色々と話してくれるらしく、みんなはその周りに座る。

 みんなの前に座るお師匠様の膝の上には精霊さんがお昼寝をしていた。時折優しく髪を撫でるお師匠様の姿に顔がほころんだ。

 みんなが集まりお師匠様は話しを始めた。

「先に言っておく、みんなありがとう…こうしてアオに会えたのはみんなとおかげだ…よ」

 師匠様はみんなを見渡して、最後にわたしをじっとお師匠様の糸目は開き、その後微笑んでくれた。
 
 青桜のアオさんとお師匠様。2人がまたこうして会えた、わたしはそのお手伝いができて心から嬉しい、わたしもお師匠様に微笑み返した。

 お師匠様は頷き一息付いて話し出す、それはルルさんの事だと言った。

「みんなにはちゃんと教えておく、今から話すことは花の魔女ルルの話だ、まあ、アルボルにも関わるが身内のことだしなぁ、儂が皆に話すことにした」

「すみません、師匠」
「いいって事よ、儂も近くで見ていたからな」

 ルルさんの話だということは、セルト様、アル様のお兄様の話になるのだろう。

 お師匠様は話始めた。

「昔も昔、ルルは花の魔女と呼ばれていた。彼女が見つけ、彼女だけしか探す事のできない球根【魔吸根】それ使い、色んな薬草を調合して彼女は病気を軽くする、又は治す花々を咲かせていた」

 病気を治す花…

「彼女の元には難病に苦しむ人や、病気を患った者の依頼が集まる、彼女はその病に合った花を作り咲かせてそれを人々に配っておった…その噂を聞き付けたのが獣人の国の当時の王」

 近くの木が風もないのにガサッと動いた、その木を見上げると、1番太い幹にフォルテ様とヘルさんの姿が見えた。彼らはこちらの輪に入らず木の上で話を聞くみたいだ。

 お師匠様は彼らを見て頷き話し出す。

「その獣人の国には病弱な王子セルトがおった。幼少の頃から彼は直ぐに病に伏せる、その王子は成人をして結婚もしていた、このままでは良い世継ぎが生まれぬと焦った国王は花の魔女の噂を聞き、直ぐに花の魔女ルルを国に呼んだ」

「ルルは獣人の国を訪れて王子を診察して王に申した。これは元から体に巣食う病魔であり、軽くする事は出来るかもしれませんが、治すことは出来ませんと王に申した。王はそれでも良いとルルに城の庭園の奥にある温室を与えて、そこで王子の体に効く花を育ててくれとルルに願う」

「ええ、そこで私は王の依頼を受けたのよ」

「あっ、え、わたし?」

 口が勝手に動いた…ルルさんはお師匠様の話を聞き、わたしの中で目を覚ましたみたいだ。

「ルルか…お前とセルト王子の事情は人から聞いた話しか知らないが、儂が話しても良いか?」

 わたしの体を借りてルルさんが頷く。

「その方がいいわ。余り詳しくは知って欲しくない…わたしとセルトの大事な思い出でもあるし、いまからあなたが話す話よりも、みんなを悲しい気持ちにさせてしまうわ」

「そうか…わかった」

  ♢♢ 

 ルルさんがわたしに話しかけてきた。

〈ごめんね、勝手にあなたの体を借りてしまったて〉

〈ううん。大丈夫、驚いただけだから〉

〈ありがとう〉

 それだけ言うと、ルルさんはすうっと気配を消した様に静かになった。

「ルルは王の依頼を受けてある花を作る、いまは毒花と変わり、魔女の毒花と呼ばれているが、本当は王子の体の為に作られた病気を良くする黄色の花なんだ」

 セルト王子の為にルルさんが作った花。

「王子の見舞いの花として黄色い花は部屋に飾られた、良く気管支炎を患い、熱に侵される王子の病魔も徐々に治る、その花は本来3ヶ月しか持たない、ルルは花を咲かせるのに調合用の薬草集めをしていた、そこで出会ったのが儂の弟子、ラスターとアルボルの双子の兄弟だ」

 みんなの視線がアル様に集まる…

「兄に会った人もいるよね、黄色な花を魔女の毒花に変えたのは私の兄なんだ…」

 アル様は悲しそうに笑った。
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