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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

第20話

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アル様とラーロさんは私達と精霊達を守る為に防護壁を素早く出した。何が起こったのか覗こうとしても、背に隠して見せようとはしなかった。

近くで見ていた精霊達が口を隠しながら声を上げる。

(うわわ)

(ひゃあ)

(動いているわ!)

「君達も見てはダメだ。ラーロ、ロワと精霊達を守って!」

「わかりました」

竜人王様の前に出て防護壁を張った。

「チビ竜はシャルちゃんを連れてここから離れて、こっちを見ない様にしてくれ!」

「はい、シャルロット嬢少し離れるぞ!」

手を掴まれ癒やしの木の下から離れた場所で、シーラン様の腕の中に隠された。

「シャルロット嬢は俺が守るから」

「はい、シーラン様お願いします」

シーラン様の背に手を回したら、もっと、力強く抱きしめてくれた。

「…あっ」

「シャルロット嬢どうした?」

「えっ、とね。この姿のままじゃあ…シーラン様の体温が感じれないんだね」

「そうだな、俺も思っていたよ」

私達の会話を聞き、じっと見ていたアル様。

「ふふ、君達は本当に仲が良いね…じゃ、そのままそこに居てね、ラーロ達もね」

「はい」

「はい、わかりました」

空に向けて弓矢を放つ仕草をしたアル様の姿が、シーラン様の肩越しに見えた「【捕獲球】」と唱えると光る矢が現れそれを何かに射り、しばらくの間、癒やしの木の下で沈黙が流れた。


「よし、捕らえた。これで大丈夫だろう」


大丈夫だとアル様が言ったと同時に、眠っていた竜人王様が意識を取り戻した。

「グッ…クワァ…はぁ、はぁ、こ、ここはどこだ」

「ロワ気付いたのか…よかった、魔法協会の癒やしの木の下だよ、体が辛いだろうからまだ寝ているといい」

気が付いたすぐに起き上がろうとした竜人王様を抑え寝かせた。


「…ア、アルボル、何をする!」


「はいはい、ロワはしっかりここで寝て体を回復してね」


竜人王様の目に手を当てて「【眠れ】」と眠らせて、癒やしの木の下に寝かせた。

「アルちゃん!」

「ルル」

そこに魔法協会の方から手に紙を持ったルルさんが現れた。

「アルちゃんに頼まれた物が出来たわ、でもごめんね、余り思い出せなかった」

とルルさんは言うけど、かなりの数の紙を持っていた。

「いいや。ルル、ありがとう助かるよ、君が研究をしていた花や薬草花達の資料はもう、どうしても手に入らないからね」

「そう、喜んでくれて嬉しいわ。それよりシャルロットさんを早く戻してあげてよ」

「そうだね」

アル様はそうだねと言いつつ、ルルさんが出した紙をつかまず手首を掴んで引き寄せた。

「…アルちゃん?」

「シャルちゃん、チビ竜…少しだけ」

と、アル様は愛おしそうにルルさんを抱きしめた。

「ルル…君に会えて嬉しかった」

「私だってアルちゃんに会えて嬉しかったわ。あの時ね。あなたにありがとうと伝えたかった」

しばらく2人は見つめあっていたけど、先にルルさんから目を離して紙を前に出すと、アル様はそれを受け取った。そして私を見て呼んだ。


「さあシャルちゃん、こっちに来て」

「はい」

向かい合わせになってルルさんと手を掴んで、アル様の指示で互いの手を握りおでこをくっ付けた。

自分の体に戻る時に…若いルルさんと子供の頃のアル様にあの男が仲良く笑い、草っ原で薬草をカゴに積んでいる姿が一瞬見えて消えていった。

「シャルちゃん」

「シャルロット嬢」

アル様とシーラン様の呼びかけに目を開けると、透けていない自分がいた。

「…元に戻れた」

元に戻れて嬉しいけど…私はルルさんみたいにみんなの役に立てるかな?
 
その事を思うと不安なる。

[大丈夫よ、貴方はあなたのままで頑張ればいいの。ありがとうシャルロットさん…私もしばらく寝ることにします]

眠る前にルルさんが私を励ましてくれた。そうだ私は私なんだ、私に出来ることをやるだけだ。


「アル様はこれをどうする、研究室に運ぶ?」


ラーロが指をさした所には丸い玉が浮かんでいた、その中には血の様に赤く、アメーバ状の物がうごめいていた。

「種を飲まされたと聞いたけど、吐き出されたこれが何物かは調べないと分からない。種を飲まされてこんな物が体の中に寄生するとなったら…まがい物の薬ではもしかすると効かないかもしれない」

「しかし…アル様。青桜の場所をいくら聞いても、お願いしても、教えてくれないよな」

「そうだよね…師匠は頑なにその場所を言わない、でも、いまはそんな事を言っている場合じゃない頼みに行ってくるよ。ラーロには私の研究室の事を任せる、フォルテ王子とヘル、エシャロットの弟の面倒もよろしくね」

「わかりました」

アル様はアメーバは帰ってから研究すると執務室にしまい、ラーロさんに研究室の人々を任せ、私達には竜人王様をお願いねと任せると「師匠に会い行く」とホウキにまたがり飛んで行った。

  
   ♢♢♢


しばらくして見回りを終えたリズ様とリオさんが戻って来た。
リズ様とリオさんは一度、城に戻りスノーさんに、しばらく竜人王様は戻れない事を伝えできたと言っていた。

「スノーさん…寂しがってるよね」

「そうだけど、竜人王様のこの状態も見せれないよね…あれ、竜人王様を包んでいた枝がない?え、シャルロットちゃん?」

「シャルロット様?」

リズ様とリオさんは自分達がいない間に、私が元に戻り、竜人王様の癒やしの枝にも気が付き驚いていた。

シーラン様と私とで先程あった事を、リズ様とリオさんに説明をした。

「そうか、その種気持ち悪いな。竜人王様も気味の悪い種を吐き、シャルロットちゃんも元に戻れてよかったよ」

「ほんとよかったです。心配をしておりました」

「リズ様、リオさん。心配をおかけしました」

「じゃあ、これいらなかったかな?」

私を励まそうと、リズ様とリオさんは図鑑を持って来てくれていた。
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