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五十二

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 本日は学園の休み、私は王子に会いに王城へ来ていた。
 最近、舞踏会の準備などで忙しい王子と、学園、王城で会えずにいた。

(忙しいのだもの、仕方がないにゃ)

 まったりと、オフトゥン馬車に揺られて城に到着した。
 王城に着いても、しばらくはオフトゥンの上で欠伸して、ゴロンゴロン、ウネウネ、気分を変える背伸びした。

 そろそろ迎えが来るかなにゃ? 
 ナターシャが準備してくれた1人でも着れるワンピース、それを手に取りモソモソ着替え始めた。

 私を出迎えに来てくれる王子の側近リルは、気を利かせて十分ほど遅れて迎えに来てくれるから、私ものんびりしていた。

(王子と今日は何する? ベッドでまったり? 書庫で読者もいいなぁ)

 王子と過ごす時間を考えながら、ワンピースの着替え途中に、バーンと、乱暴に馬車の扉が開いた。

「ミタリア、会いたかった!」

 そこに嬉しそうな王子と、猫から戻りワンピースに着替え途中、恥ずかしながら下着丸出しの私。

「ひぇっ、リチャード様ぁ!」

「下着姿……ミタリアは相変わらず、俺に見せるのが好きだな」

「す、好きじゃないです。いま着替えておりますので、リチャード様は馬車から降りてください!」

 王子の胸を押したけど、ビクともしない。
 反対に、その手を取られた。

「嫌だね、あと二週間で開催される舞踏会の話し合いなどで会えずにいた、愛しのミタリアに会えたのに我慢などできるか!」

「にゃっ!」

 ほんとうに素直な王子は馬車の中で、私を後ろから捕まえてベンチシートに座ると、首筋に鼻を擦り寄せた。
 そして「ミタリアの香りだ、癒される」とスリスリした。

 きゃあぁー! 

 王子は癒されるとか言うけど、捕まった私はたまったもんじゃない。

「ん、んんっ、……リチャード様、首筋の香りを嗅がないで、大人しく待っていて……く、ださい」

「またない、ミタリアをもっと堪能させろ!」

 こうなったら、やめてと尻尾で顔をペチペチしても王子は効かない。かえって気持ちいいと尻尾に擦り寄られた。

「ふわぁっ!」

「ミタリア、俺の頭を撫でてくれ」

「はぁ、い?」
 
 珍しく甘えモードの王子に困惑しつつ、馬車の中で王子の髪をしばらく、撫でてまったり過ごした。







 それから王城に来ると王子の側近ではなく、王子が自ら出迎える様になった。今日はブラッシングの櫛を二本も持って。

「リチャード様。リチャード様の部屋でブラッシングをなされば……いいのではないでしょうか?」

「それはそうだが……近ごろますます忙しくてな。この前、昼寝中にリルに呼ばれたろ?」

「えぇ、呼ばれましたけど……」

 五日前「陛下がお呼びです」と、ぐっすり眠っていたところを起こされた。
 王子は寝起きで、不機嫌な顔で向かって行った。
 二時間後、王妃殿下と妹の王女様に会えたらしく、戻ってき王子は機嫌が良くなっていた。


 馬車の中。

「ふうっ、可愛い妹のミリアに会えるのはいいが、ミタリアとの二人の時間が減る、スキンシップが足りない、コレでは頑張れない」

「リチャード様、舞踏会が無事に終われば、学園でも、王城でも会えます」

「それは、そうだが。いま、ミタリアに甘えたい! 甘えさせろ、ブラッシングしてくれ!」

 ブラッシングの櫛を側に置き、馬車の中でブレスレットを取り、狼の姿になってしまった王子。本日はなんと私専用の櫛まで王子は持ってきていた。
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