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四十五

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 肉球で王子の頬をモニモニ揉んだ。
 王子も初めは嫌がったけど、だんだん瞳が、トロンとして目を瞑った。

 モニモニ、モニモニ。王子は目を瞑ってから、黙っちゃったけど気持ちいいのかな?


 それから、30分くらいは部屋に篭ったかも。

「リチャード様、そろそろ落ち着きましたかにゃ?」

 隣で寝そべる王子に聞いた。

「あぁ、だいぶミタリアのおかげで、気持ちが落ち着いてきたよ」

「隣の部屋に戻りますか? きっと皆さんがリチャード様を心配していますにゃ」

「うーん、わかってる。もう少し、俺はミタリアに甘えたい」

 正直に嬉しい事を言う王子……。
 隣にいるはずの皆さんは、さっきから物音1つ立てず、物静かなもので気になるし。

 王子の怒りの炎で、焼けてしまった部屋も気になる。

「ふうっ、落ち着いた……癒してくれてありがとう、ミタリア」

 私の頬にキスをして。
 王子は服と、一緒に落ちていた腕輪を取って身に付けようとした。

 まさか、目の前で着替えるきなの。
 私は手を前に出して、王子の着替えを止めようとした。

「待って、待ってにゃ!」

「どうした? 俺はミタリアに見られても、平気だぞ?」

「私が平気じゃないにゃ! 先に着替えて部屋を出るのだったら、言ってくださいにゃ。向こう側を向くにゃん……」

「はははっ、ワザとだよ。慌てるミタリアが見たかっただけだ。先に着替える。俺が部屋から出たら、ミタリアも着替えて出ておいで」

「……わかった、にゃ」

 王子は制服に着替えが終わると「先に戻ってる」と部屋を出て行った。

 それを聞いて、振り向き。

「もう、ワザとって……リチャード様は意地悪にゃ」

 私も自分のブレスレットをはめて、獣化した姿から戻り、元着ていた学園の制服に着替えた。







 隣の部屋から出て驚いた。

 部屋の中は王子の炎で、焼け焦げた跡が一つもなく、訪れたときと同じだった。王子は真ん中に置かれた接待用のソファーに座り、リルと近衛騎士の2人から、何があったのかを聞いていた。

「着替え終わったんだね。ミタリア、俺の横に座って」

「はい、リチャード様」

 呼ばれて、私は王子の隣に座った。
 私はどこも焼け焦げていない部屋の中を、見渡しているのがわかったらしく、王子が説明してくれた。

「どこも焦げていないのが不思議かな? それはね、俺たちが隣の部屋に行った後。父上の魔法部隊が来て、修復魔法を部屋にかけて直してくれたらしいんだ。みんなに『レジスト』をかけてくれた他の隊が、伝えたのだろうな……城に戻ったら父上にお礼を言うよ」

 注意は受けるだろうけどな、と王子は笑った。

「リチャード様と、一緒に王城に行ってもいい?」

 原因となった、手紙は焼けてしまって読めないから。王子がどうして炎を纏ってしまったのか、国王陛下に説明しようと思った。

 王子は首を振り。

「もう遅い。父上には俺から、ちゃんと説明するから、ミタリアは心配しなくていいよ」

「……はい」

 まだ心配王で……王子に着いて行きたかったけど、やんわり断られてしまった。側近リル、近衛騎士の2人もいるから諦めよう。

「あの、皆さんは炎で、怪我をされませんでしたか?」

 側近リルは、平気だと頷き。騎士たちは胸に手を当て頭を下げた。兎のリリネは気絶してしまったらしく、前のソファーに寝かされていた。

「良かった、皆さんに怪我がなくて。……リチャード様、良かったね」

「あぁ、良かった……リル、シア、アラン……俺がふがないせいで危険な目にあわせた……すまない」

「リチャード様、私たちの心配はいりませんよ。誰しも愛している人の事を言われれば、あぁ、なります」

「そうだ、リチャード。それに特殊能力はいきなり使える様になるときもある。たまたま、リリネが持ってきた手紙が、リチャードの能力を呼び起こしてしまった、だけだ」

「自分も、リルさんとシアさんの意見に賛成です。自分はまだ誕生日を迎えていませんので、どの様な特殊能力が自分に身に付くのか分かりません。もしかすると、今日のように不意にくるかもしれません……」

 もしかして側近リルとシア様の、2人は特殊能力の話がやけに詳しいから、年上で特殊能力持ちの方なのかも。そして王族には獣化する特別種が家臣たちに着くんだ。

 皆さんは大丈夫として、王子のことをリリネ君は怖がるかもしれない。

 リチャード様は皆さんの言葉に、ホッとした様子を見せていた。側近リルは「そうだ」と、ポンと手を叩き。

「さてと、結構時間が経ちましたが……お茶の時間にいたしましょう。先程、隣で桃シャーベットを作ったんです。アラン、シアの分もありますよ」

 彼はエプロンを翻して、キッチンがある隣の部屋に入っていった。
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