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四十一

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 彼は笑顔を崩さず、糸目のままで。

「リチャード王子は婚約者の黒猫ちゃんと、仲が良くて羨ましいな。私には、まだ婚約者すらいないのに……可愛い、婚約者は羨ましい」

 糸目を開き、彼はじっと私を見た。

「失礼ですが、カーエン王子。婚約者は獣人の国よりも。自国ーー人族の国で見つけた方がいいのでは? 俺たちとでは生活習慣、食事などが、かなり違いますよ」

「そうだけど……私は黒猫ちゃんのような、可愛い子が婚約者に欲しいな(獣化するし)」


「「……⁉︎」」


 獣化する、と私たちに聞こえない様、小声でカーエン王子は言ったのだろうけど。彼の従者以外、耳のいい私たちに聞こえていた。

 カーエン王子は獣化する特別な獣人を婚約者に迎えたいみたいだ。
 だったら兎君(ヒロイン)を気にいるとか? と、兎君を見た。彼はゲームの時とは違い白兎でもないし、男の人で、薄ピンク色の髪と赤い瞳だけど、ヒロインに顔が似ていた。

(髪型が違うだけで、体型とか顔がヒロインと瓜二つだわ)

 もしかしてヒロインは双子なの? 彼は、私がじっくり見ていたことに気付き、頭を下げた。

「皆様。大切な形見の指輪を見つけていただき感謝いたします。僕の名前はリリネといいます」


 ーーリリネ?


 彼は家名を言わず、リリネと名前しか言わなかった。
 あれっ? ヒロインは男爵家になっていないの?

「リリネか……リリネ、その指輪を2度と外すなよ」

「は、はい、わかりました。……あの、リチャード王子殿下とミタリア様に、折り入って話があるのですが、まだお時間はいいでしょうか?」

「なんだ、リリネ? 俺たちに話とは……?」

「すみません、リチャード様。ここで話せる内容ではありませんので、場所を移動してもよろしいでしょうか?」

 彼はカーエン王子を見て言った。となると、人族の王子に聞かれてはならない、話を彼はするつもりなのだろうか?

「分かった、学園内にある俺の休憩室に移動しよう。カーエン王子、指輪を見つけてくれてありがとう、失礼する。ミタリア、リリネ、リル移動するぞ……アランもお前も着いて来い」

「アラン様?」

「あ、そうか。ミタリアには紹介がまだ、だったな。今日から俺の専属、近衛騎士となった伯爵家アラン・イエガーだ。入学式の後にミタリアにも紹介しょうと思っていたが。この様なことがあり紹介が遅れた」

 王子に呼ばれて来た、アラン様。

(うわっ、ゲームで見たアラン様だ……彼も攻略対象で狼犬族。彼はヒロインに恋をして最後に王子に決闘を申し込む。ゲームではとても真面目な人だった)

 ちなみに、決闘の勝ち負けはヒロインとの好感度で決まった。アラン様は黒髪、琥珀色の瞳。王子の次にファンが多かった攻略対象だ。その次は側近ルトで、まだ出てこない1つ下、ネズミ族の後輩……カーエン王子って余り人気なかった、印象がある。

(私も余り好きではなかった、……なんでだろう?)

 怖いから?

「ミタリア様、本日付でリチャード王子殿下の、近衛騎士となりましたアランです。これからよろしくお願いいたします」

「私はリチャード様の婚約者ミタリアですわ。アラン様、よろしくお願いします」

 彼は騎士の挨拶をして、私はスカートを掴んでお辞儀した。
 その後、カーエン王子とは庭園で別れて、私たちは王子の休憩室に移動した。
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