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三十四 収穫祭(下)
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「いらっしゃいませ、リチャード王子殿下とミタリア嬢」
「ごきげんよう、カーエン王子殿下。多くの方で賑わっていますね」
「みんな楽しそに袋詰めしているな。なぁミタリア俺たちもやってみよう!」
そして、王子は2人分の袋の料金を先に払ってしまった。
「あ、リチャード様、ここは私が出そうと思っていたのに」
「ミタリアには払わせないよ。さぁ、詰めるぞ!」
王子に手を引かれて空いたスペースに2人並んで、じゃがいも、にんじん、さつまいもを麻袋に詰め込んでいた。他の人たちも仲間たちと和気藹々、笑顔で野菜を袋に詰めている。
「中々、野菜の袋詰めは面白いな、ミタリアには負けないぞ」
「勝負ですか? リチャード様に負けませんよ!」
「何々リチャード王子殿下とミタリア嬢は袋詰め勝負ですか? 楽しそうですね、どちらが勝ってるかな?」
私たちの話を聞いていたらしく、2人で袋を見せている間に割り込んで、袋を見比べ始めたカーエン王子。その彼からふわりと甘いチココの香りがした。それに王子も気付いたらしく眉をひそめている。
(休憩の時にでも食べたのかな?)
そんな私と王子のことを知ってから知らずか、彼は目を細めて笑って。
「うーん。僕から見ると、どっちも同じくらいかな?……ところで、ミタリア嬢。見てみて僕、可愛いでしょ?」
私の方を向き、いま身に付けている付け耳と付け尻尾を、見せてきた。
「えっ? 可愛いと思います」
「ほんと、ミタリア嬢に似せて国の職人に作ってもらったんだ。褒めてくれてありがとう」
いま、私ってカーエン王子のこと褒めた? 可愛い? と聞かれたからそのまま返したんだけど、まぁ可愛いは褒め言葉かな。(カーエンには塩対応だ!)
「でも、ミタリア嬢の本物の方がぴこぴこ動いて可愛い。参考にするから耳か尻尾を触らしてほしいな? いいでしょう?」
(えっ!)
彼はにこにこ笑い、手を伸ばして私に触れようとした所を、リチャード様が私の手を引き背に隠してくれた。
「カーエン王子、だめだ! 俺たちの耳と尻尾は大切なんだ、無闇に触らないでもらおうか。他の者たちのもだぞ!」
「そ、そうです、リチャード様の言う通り、私たちの耳と尻尾には神経が通っていて敏感だから触ってはダメです! それに私は婚約者にしか触らせません!」
王子の背に隠れながら伝えた。私が婚約者にしか触らせないと、言ったことに王子が反応を返す。
「えっ、俺なら触ってもいいの?」
「ま、まだ触られるのなら……リチャード様の方がいいと言っただけです」
「そうか、そうだよな。俺も耳と尻尾を触られるのは苦手だ」
少しがっかりした様子の王子に、ボソッとカーエン王子には聞こえない声で「本当に耳と尻尾は敏感なんです、触るなら優しく触ってくださいね」と、小さく王子に伝えた。
+
彼は伸ばした手を戻した。
「分かった触らないよ、でも、いつか仲良くなったら触らせてね」
「触らせるか!」
まったく懲りていない、カーエン王子は目を細めて、出店に戻って行った。
「やはり、あいつは油断ならないな。隙を見てミタリアに触れるつもりだ……」
「リチャード様、守ってくれてありがとうございます」
「当たり前だ、ミタリアは俺の婚約者だからな」
優しくなら触ってもいいと言ったからか、尻尾を揺らして嬉しそうな王子。そして、そろそろ視察の交代の時間だなと言った。
「リチャード様、誰と交代するのですか?」
「側近のリルだ」
「リルですか? お 彼は1人で視察をするのですか?」
「あぁ、あいつ、1人でいいと言っていたからな」
王子は胸ポケットから銀色の笛を出して吹く。少し待つと、側近のリルがこちらに走ってきた。
「リチャード様、交代させていただきます!」
「後は任せた、よろしく頼む」
王子は着けていた腕章を外して、側近のリルに渡した。
「よろしく頼まれました! リチャード様、ミタリア嬢、視察ご苦労様でした」
そう言って、彼は私たちに頭を下げた。
「ごきげんよう、カーエン王子殿下。多くの方で賑わっていますね」
「みんな楽しそに袋詰めしているな。なぁミタリア俺たちもやってみよう!」
そして、王子は2人分の袋の料金を先に払ってしまった。
「あ、リチャード様、ここは私が出そうと思っていたのに」
「ミタリアには払わせないよ。さぁ、詰めるぞ!」
王子に手を引かれて空いたスペースに2人並んで、じゃがいも、にんじん、さつまいもを麻袋に詰め込んでいた。他の人たちも仲間たちと和気藹々、笑顔で野菜を袋に詰めている。
「中々、野菜の袋詰めは面白いな、ミタリアには負けないぞ」
「勝負ですか? リチャード様に負けませんよ!」
「何々リチャード王子殿下とミタリア嬢は袋詰め勝負ですか? 楽しそうですね、どちらが勝ってるかな?」
私たちの話を聞いていたらしく、2人で袋を見せている間に割り込んで、袋を見比べ始めたカーエン王子。その彼からふわりと甘いチココの香りがした。それに王子も気付いたらしく眉をひそめている。
(休憩の時にでも食べたのかな?)
そんな私と王子のことを知ってから知らずか、彼は目を細めて笑って。
「うーん。僕から見ると、どっちも同じくらいかな?……ところで、ミタリア嬢。見てみて僕、可愛いでしょ?」
私の方を向き、いま身に付けている付け耳と付け尻尾を、見せてきた。
「えっ? 可愛いと思います」
「ほんと、ミタリア嬢に似せて国の職人に作ってもらったんだ。褒めてくれてありがとう」
いま、私ってカーエン王子のこと褒めた? 可愛い? と聞かれたからそのまま返したんだけど、まぁ可愛いは褒め言葉かな。(カーエンには塩対応だ!)
「でも、ミタリア嬢の本物の方がぴこぴこ動いて可愛い。参考にするから耳か尻尾を触らしてほしいな? いいでしょう?」
(えっ!)
彼はにこにこ笑い、手を伸ばして私に触れようとした所を、リチャード様が私の手を引き背に隠してくれた。
「カーエン王子、だめだ! 俺たちの耳と尻尾は大切なんだ、無闇に触らないでもらおうか。他の者たちのもだぞ!」
「そ、そうです、リチャード様の言う通り、私たちの耳と尻尾には神経が通っていて敏感だから触ってはダメです! それに私は婚約者にしか触らせません!」
王子の背に隠れながら伝えた。私が婚約者にしか触らせないと、言ったことに王子が反応を返す。
「えっ、俺なら触ってもいいの?」
「ま、まだ触られるのなら……リチャード様の方がいいと言っただけです」
「そうか、そうだよな。俺も耳と尻尾を触られるのは苦手だ」
少しがっかりした様子の王子に、ボソッとカーエン王子には聞こえない声で「本当に耳と尻尾は敏感なんです、触るなら優しく触ってくださいね」と、小さく王子に伝えた。
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彼は伸ばした手を戻した。
「分かった触らないよ、でも、いつか仲良くなったら触らせてね」
「触らせるか!」
まったく懲りていない、カーエン王子は目を細めて、出店に戻って行った。
「やはり、あいつは油断ならないな。隙を見てミタリアに触れるつもりだ……」
「リチャード様、守ってくれてありがとうございます」
「当たり前だ、ミタリアは俺の婚約者だからな」
優しくなら触ってもいいと言ったからか、尻尾を揺らして嬉しそうな王子。そして、そろそろ視察の交代の時間だなと言った。
「リチャード様、誰と交代するのですか?」
「側近のリルだ」
「リルですか? お 彼は1人で視察をするのですか?」
「あぁ、あいつ、1人でいいと言っていたからな」
王子は胸ポケットから銀色の笛を出して吹く。少し待つと、側近のリルがこちらに走ってきた。
「リチャード様、交代させていただきます!」
「後は任せた、よろしく頼む」
王子は着けていた腕章を外して、側近のリルに渡した。
「よろしく頼まれました! リチャード様、ミタリア嬢、視察ご苦労様でした」
そう言って、彼は私たちに頭を下げた。
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