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十六

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 ふかふかオフトゥン……秒殺で夢の世界。すーすー寝ているけど音は聞こえたいた。

 本を捲る音、独り言まで聞こえる。

 王子がボソッとーーあのバスケットの中身はお昼かとか。今日のミタリアの格好、可愛いなとか……ピクンと声に反応して耳が動いてしまう。

 何か察知して、王子の布が擦れた音が聞こえた。

「……ちっ、聞こえたか。ふうっ、本当のことだからいいっか。猫じゃない、ミタリアの可愛い寝顔も見えるしな」

(可愛い格好? 猫ではない私の寝顔⁉︎)

「格好、可愛いけどスカートの丈が短くないか? 寝そべると捲れて膝が見える、触れたくなるな……」

(足に触れる⁉︎)
 
「ん? ミタリアの頬がなにやら赤くなっていないか? 変な夢でも見ているのか?」

 ーーううっ。いつもなら、このタイミングで獣化して逃れるのに……今日はできないから恥じらうと、頬が赤くなってバレてしまう。

「ククッ、可愛いミタリア……俺を信頼しているのか? 俺、男で狼なんだけど……、いや、男は皆狼か? そんなに呑気に寝て、その隙に触れるとか、ふっくらな唇を奪われるとか思わないのかな?」

 ーーく、唇⁉︎

「リ、リチャード様!」

 我慢できず、口元を押さえて目を開いた。反対側で私を見つめる意地悪な瞳があった。

 ーーあぁ、王子、楽しそうだわ。

「やはり、俺の声は聞こえていたか……全部、俺の本心だ気にするな。昼になったが街で何を食べる? 結構大きな街だから、なんでもあるだろう」

(街? お昼?)

 カーテンを開けて外を見ると、馬車は街の近くに止まっていた。近衛騎士は馬車にとどまり、従者と側近リルは街に昼食に出ていると王子は言った。

「お腹すいたろ? 俺たちも何か食べに行こう」

 と誘う王子に、私はバスケットを手に取り。

「サ、サンドイッチを作ってきたけど……リチャード様、た、食べますか?」

 持ってきたバスケットを見せた。寝そべっていた王子が素早く体を起こして、素早く私の隣に座った。

「ミタリアが俺の為に作ってきたのか? 早く中を見せろ、見たい!」

 食いついた王子に急かされて、バスケットを開けた。中に入っているサンドイッチを見た途端。王子の瞳は大きく開いき、ゴクっと喉を鳴らした。

「こんなに具をたくさん挟んだ、このような綺麗なサンドイッチは初めて見た」

「そう? うちじゃ、いつもこうだよ。これがハムとチーズ、卵を挟んだサンドイッチ。こっちが鳥ささみと野菜をふんだんに使ったサンドイッチ。後レモネードと蒸しパンも作ってきた」

「美味そう! 俺、鳥ささみ食べたい」

 包み紙に鳥ささみサンドを包んで渡した。王子はじっくりサンドイッチを見て、また喉を鳴らして勢いよくかぶりついた。その途端に耳と尻尾がぴーんと伸びた。

 ーー王子の体がプルプルしてる。

 ゆっくり味を噛み締め、ごくりと飲み込んだ。

「う、うまい。こんなに具が入っているのに味が喧嘩してない、鳥はぷりぷりで野菜がシャキシャキ、パンも甘めで美味しい」

 手製サラダチキンを気にいってくれたんだ、野菜はコールスローなの。パンはナターシャの手作り。ケーキを食べるときでさえも優雅な王子、いまは無我夢中でサンドイッチに齧り付いている。

 ーーその食べっぷりに、嬉しくって顔が緩む。

(私の頬、にやけないで!)

「ミタリア、なに可愛い顔してんだよ。いつもは恥じらうと猫になって逃れるくせに……今日はならないんだな」

「いまから王妃殿下にお会いするから、セットした髪型とか、服にシワがついちゃうからなれないの」

「そう言う割には、ふかふかオフトゥンに大胆に寝そべったよな」
 
「あっ、本当だ……」

 王妃殿下ごめんなさい。ふかふかオフトゥンの魅力に負けました。
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