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十四

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 ナターシャが支度したお茶請けはどれも、王子の部屋で、私が選り好みした食べたものばかりだった。

(好きな、お菓子を買ってくれたんだ)

「んんっ、この苺のショートは大好き、こっちも好きです」

「そうか……俺も、本をたくさん借りて悪いな。ミタリアが選ぶ本はどれも俺好みだ。まだ、読みたい本がたくさん本棚にあるよ」

(自分が個人で選んだ本を好きだと、言ってもらえるの正直嬉しい)

 今も昔も人に喜ばれることが好き。気分が上がって、つるっと口から言葉が出てしまう。

「いつでも来てください……(あっ!)」

「いいのか? ミタリア、その言葉を俺は本気にするよ?」 


(ううっ……)

 
 私を惑わす? 勝手に私が惑わされている? とにかく、なんでも、王子の素敵なイケメンスマイルは卑怯なんだ。

「えぇ、来てください。両親もリチャード様に会えると喜びますわ」

「じゃ、ミタリアは?」

(私?)

 王子の青い瞳に見つめられて、ぼっ、と顔が熱い。やばい真っ赤になる前に……カチッと腕輪の留め金を外した。

 外した途端に、私の体はぽふっと獣化ーー黒猫に変わる。ぴょんとテーブルから跳ねて、オフトゥンの上に移動して王子から距離をとった。

 それを見て、ガタッとテーブルから立つ王子。

「ずるいぞ、ミタリア! 逃げるな、言えよ」

「い、言わないにゃん」

 ぷいっと王子に背を向けた。猫の姿だと感情が読み取られない。と、私は思っている。

「いま、少し頬が赤くなっていたろ、ミタリアの照れた顔を俺にだけ見せろよ!」  

「嫌にゃ!」

 チッと舌打ちして、王子はカチッと腕輪を外した。姿を狼に変えてベッドに飛び乗ってくる王子。不機嫌がわかるほどグルルルッと低く喉が鳴っていた。

 逃げれず、むぎゅっと王子に捕らわれた。
 私を捕まえた王子は、すりすり顔を擦り寄せる。

「にゃっ!」

「ふん、自分の気持ちを言わない、ずるい。ミタリアにはお仕置きだ!」

「そんにゃ!」

(うわぁ、顔が近い、近い!)

 やだ! 両手を前に出して顔をムニッとさせても、王子は離れない。

「そんな、可愛い手じゃ、気かねぇ」

 また、すりすりされて、ペロンと大きな舌で顔を舐められた。

「にゃっ! 待つにゃ、そこは口にゃ」

「別にいいじゃん。ん? 甘いな苺の味がする」

 ペロン、ペロン。

「にゃやぁああ! いま食べた苺のケーキの味にゃ」

「知ってる」

 ーーか、確信犯だぁ!

(エッチだ、王子のえっち!)

 その後も動けない私の顔を王子は帰りの時間まで、毛繕い? ーーペロンされた。


 帰り間際。

「ミタリア、明日の早朝に迎えに来るから」

 ご機嫌な王子と。

「……はい、お気を付けてお帰りください」

 くたくたな私。

 夕飯の後に出た苺のショートケーキを見るだけで、さっきの光景を思いだして顔が赤くなる。

 ーーしばらく、苺のケーキ食べられないや。
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