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 コンコン、コンコン扉を叩く音で目覚めた。すぐ近くにはぐっすり眠るリチャード王子がいた。

「リチャード様、いらっしゃいますか?」

 この声は側近リルだ。執務開始の時間を過ぎても、王子が現れないから呼びに来たんだろう。いま何時だと時計を見ると4時を回っていた。

(私が王城に来たのは午後1時過ぎだったわ)

 王子と少し会話をしてその後に寝落ちしてーーゆうに3時間くらいはぐっすり寝ていたみたい。

 コンコン、コンコンと扉を叩く音に、王子の耳は動いているから音は聞こえているはず。しかし王子は起きたくないのか猫の私を抱きしめたまま、眉をひそめるだけで目を覚まさない。

 疲れているようだから、このまま王子を寝かしてあげたいけど、執務は大切なので起こす事にした。

「リチャード殿下、起きてください。側近リルさんが迎えに来ていますよ」

「リルか? リル、あと1時間くらい待てないのか?」

 この声は扉の向こうにいる側近リルにも聞こえたのだろう。「私だって、リチャード様を起こしたくないですよ」と、声が聞こえた。彼もまた忙しい王子を寝かせてあげたい。しかし、たまっている執務があり扉の向こうで困っているようだ。

「殿下、リチャード殿下、もう4時過ぎです。執務にお戻りください」

「4時過ぎ?……戻る時間を過ぎているな。じゃーミタリア、お前も執務室に来い」

「無理です」

「じゃー起きない」

 と、私のもふもふに顔を埋めて寝てしまう王子に、起きてくれるのならと冗談半分で返事を返した。

「分かりました、すぐに起きるのなら考えますよ」

「その言葉嘘じゃないよな」

(えっ?)

 ーーその言葉を待っていたかのように、王子は直ぐに目を覚ました。

「た、狸寝入りにゃ!(狼だけど)」

「いいや、起きたのはリルが来てからな」

 ニンマリ笑って、王子は脱いだジャケットに私をさっと包み、脇に抱えて部屋を出た。

「にゃ?」

「約束したもんな、ミタリアも執務室に来るんだろ?」

(この姿のままですかぁ~? 側近リルに見られちゃうけど、いいの?)

 と、王子に聞きたいのだけど。ガッチリ王子に抱えられてしまい、身動きが取れなかった。







 部屋の外で王子を待ってた側近リル。彼は王子が持つジャケットをチラチラ見ていた。

(まさかね。側近リルはジャケットの中に、私がいるって分かってる?)

「リル、あとは1人で今日の分をやるから、上がっていいぞ」

「リチャード様?」

「俺がいない間、ご苦労さま。また明日頼むな」

 側近リルの言葉を遮る王子に、リルは「はい」しか言えず下がっていった。
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