11 / 65
九
しおりを挟む
コンコン、コンコン扉を叩く音で目覚めた。すぐ近くにはぐっすり眠るリチャード王子がいた。
「リチャード様、いらっしゃいますか?」
この声は側近リルだ。執務開始の時間を過ぎても、王子が現れないから呼びに来たんだろう。いま何時だと時計を見ると4時を回っていた。
(私が王城に来たのは午後1時過ぎだったわ)
王子と少し会話をしてその後に寝落ちしてーーゆうに3時間くらいはぐっすり寝ていたみたい。
コンコン、コンコンと扉を叩く音に、王子の耳は動いているから音は聞こえているはず。しかし王子は起きたくないのか猫の私を抱きしめたまま、眉をひそめるだけで目を覚まさない。
疲れているようだから、このまま王子を寝かしてあげたいけど、執務は大切なので起こす事にした。
「リチャード殿下、起きてください。側近リルさんが迎えに来ていますよ」
「リルか? リル、あと1時間くらい待てないのか?」
この声は扉の向こうにいる側近リルにも聞こえたのだろう。「私だって、リチャード様を起こしたくないですよ」と、声が聞こえた。彼もまた忙しい王子を寝かせてあげたい。しかし、たまっている執務があり扉の向こうで困っているようだ。
「殿下、リチャード殿下、もう4時過ぎです。執務にお戻りください」
「4時過ぎ?……戻る時間を過ぎているな。じゃーミタリア、お前も執務室に来い」
「無理です」
「じゃー起きない」
と、私のもふもふに顔を埋めて寝てしまう王子に、起きてくれるのならと冗談半分で返事を返した。
「分かりました、すぐに起きるのなら考えますよ」
「その言葉嘘じゃないよな」
(えっ?)
ーーその言葉を待っていたかのように、王子は直ぐに目を覚ました。
「た、狸寝入りにゃ!(狼だけど)」
「いいや、起きたのはリルが来てからな」
ニンマリ笑って、王子は脱いだジャケットに私をさっと包み、脇に抱えて部屋を出た。
「にゃ?」
「約束したもんな、ミタリアも執務室に来るんだろ?」
(この姿のままですかぁ~? 側近リルに見られちゃうけど、いいの?)
と、王子に聞きたいのだけど。ガッチリ王子に抱えられてしまい、身動きが取れなかった。
+
部屋の外で王子を待ってた側近リル。彼は王子が持つジャケットをチラチラ見ていた。
(まさかね。側近リルはジャケットの中に、私がいるって分かってる?)
「リル、あとは1人で今日の分をやるから、上がっていいぞ」
「リチャード様?」
「俺がいない間、ご苦労さま。また明日頼むな」
側近リルの言葉を遮る王子に、リルは「はい」しか言えず下がっていった。
「リチャード様、いらっしゃいますか?」
この声は側近リルだ。執務開始の時間を過ぎても、王子が現れないから呼びに来たんだろう。いま何時だと時計を見ると4時を回っていた。
(私が王城に来たのは午後1時過ぎだったわ)
王子と少し会話をしてその後に寝落ちしてーーゆうに3時間くらいはぐっすり寝ていたみたい。
コンコン、コンコンと扉を叩く音に、王子の耳は動いているから音は聞こえているはず。しかし王子は起きたくないのか猫の私を抱きしめたまま、眉をひそめるだけで目を覚まさない。
疲れているようだから、このまま王子を寝かしてあげたいけど、執務は大切なので起こす事にした。
「リチャード殿下、起きてください。側近リルさんが迎えに来ていますよ」
「リルか? リル、あと1時間くらい待てないのか?」
この声は扉の向こうにいる側近リルにも聞こえたのだろう。「私だって、リチャード様を起こしたくないですよ」と、声が聞こえた。彼もまた忙しい王子を寝かせてあげたい。しかし、たまっている執務があり扉の向こうで困っているようだ。
「殿下、リチャード殿下、もう4時過ぎです。執務にお戻りください」
「4時過ぎ?……戻る時間を過ぎているな。じゃーミタリア、お前も執務室に来い」
「無理です」
「じゃー起きない」
と、私のもふもふに顔を埋めて寝てしまう王子に、起きてくれるのならと冗談半分で返事を返した。
「分かりました、すぐに起きるのなら考えますよ」
「その言葉嘘じゃないよな」
(えっ?)
ーーその言葉を待っていたかのように、王子は直ぐに目を覚ました。
「た、狸寝入りにゃ!(狼だけど)」
「いいや、起きたのはリルが来てからな」
ニンマリ笑って、王子は脱いだジャケットに私をさっと包み、脇に抱えて部屋を出た。
「にゃ?」
「約束したもんな、ミタリアも執務室に来るんだろ?」
(この姿のままですかぁ~? 側近リルに見られちゃうけど、いいの?)
と、王子に聞きたいのだけど。ガッチリ王子に抱えられてしまい、身動きが取れなかった。
+
部屋の外で王子を待ってた側近リル。彼は王子が持つジャケットをチラチラ見ていた。
(まさかね。側近リルはジャケットの中に、私がいるって分かってる?)
「リル、あとは1人で今日の分をやるから、上がっていいぞ」
「リチャード様?」
「俺がいない間、ご苦労さま。また明日頼むな」
側近リルの言葉を遮る王子に、リルは「はい」しか言えず下がっていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
350
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる