異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ

文字の大きさ
上 下
30 / 30

二十八(最終話)

しおりを挟む
私の力か……嬉しくって顔がにやけちゃう。
でも、この力は大切に使わないと。

「安心しろ、ヒーラギの"癒しの力"は変な奴には使わせない」

「ありがとう、頼りにしてるよブラン」

「やっぱり、ブランとヒーラギちゃんはいい夫婦になるわ。これからも、ウチの子をよろしくね!」

「母さん!」
「ジジ!」

「だって、二人とも私達みたいに仲良いじゃない。お母さん、早く孫を抱きたいの。もう、いいじゃない。夢ぐらい見させてよ!」

「わかった。俺が頑張るから、いまは黙ってくれ!」

真っ赤な顔のブランに止められる、お母様だった。

可愛いお母様だ。







話は終わったのかと、ロンとスラが玄関から顔を出した。どうやら癒しの力で怪我が治った、村の人達がこのまで感謝を言いに集まったらしい。

「そんな、感謝だなんて」

照れる。

「ヒーラギちゃん、みんなの感謝の気持ちを、受け取ってあげて欲しい。僕からもありがとうを言いたい」

「ニュ、ニュ!」
「スラ、わかったよ」

ロンとスラに急かされて外に出ると、村の人達は手に食べ物を持って集まっていた。なかには泣いてる人も見えた。

 最初に目を真っ赤にした、小さな羊の男の子が駆け寄ってきた。

「せ、聖女のお姉ちゃん、お父さん、お母さんと妹の怪我を治してくれてありがとう」

 それを皮切りに、次々と感謝の言葉を聞いた。

「聖女様、動けるようにしていただき感謝します」

「ありがとう聖女様。僕、自分の足で歩けるよ」
「聖女のおねちゃん、本当にありがとう!」

「聖女様、お父さんの傷を治してくれてありがとう」

村のみんなの感謝の言葉が心に響く。

「よかった、みんなに癒しの力が届いて本当によかった」

 私の瞳から、ポロポロと涙が流れ落ちた。

 ーーこの癒しの力に感謝します。

「よかったな、みんな……んー、それにしても結構な食べ物が集まったな、これを使ってみんなで鍋にするか?」

「鍋? どんな料理か分からないけど食べたい。お腹もちょうど空いてきたし、村のみんなで鍋を食べましょう!」

「「おー!」」

マジックバッグの中から鶏肉と豚肉、お野菜と、村のみんなからのお礼に貰った野菜、魔物肉を使って鍋パーティーが始まる。



「材料は集まった、後は具材を煮込む鍋が必要だな……ちょうど、家の中にどデカい鍋があったよな。ロン、父さん手伝って」

「いいよ」
「わかった」

と、ブランとお父様、ロンは家から大きな鍋を持ってきたのだけど……

「それ、ポーションを作るときに使う、大鍋じゃない?」
「そうだけど、洗ったし、別にいいだろ」

「いいっか!」

ブランの両親も参加して、残っていたお米を全部炊き、ブランの庭にカマドを作り鍋を作り始めた。
お肉と野菜たっぷり鍋の味付けはピリ辛味噌鍋で、いつの間にかたくさんのお酒も用意されていた。

「ご飯が炊けたぞ!」
「食べやすいようにおにぎりにするわ」

炊けたご飯はおむすびにしてみんなに配り、できたピリ辛鍋も配って宴が始まった。

「ヒーラギ、食べているか?」
「ええ、たくさん食べているわ。この黄色いと、赤い果物が美味しい」

「それは……この村で栽培されているバナナンとリンゴンだな。ロン師匠が言うには元々、エルフの国で作られていたんだって」

「へぇ、甘くて美味しい」

他にも私の周りに見たことがない果物、食べ物がたくさん用意されている。 

みんなでカマドを囲い鍋を突っつき、ある者は体が自由に動くと、足が動く、手が自由に動くと。
みんなで喜び手を取り合い踊り、笑い泣きした。


そして最後にみんなは、


「「ブラン嫁のお陰だ!」」


と私を呼び、この喜びの宴は朝方まで続いたのだった。







数日後。

魔王城にブラン、スラ、ロンと共に魔王様と王妃様に食事に誘われたり。二人とも絶世の美男美女で見惚れてしまった。
なんと、魔王城にいたアリカちゃんにも会った。
話してみると彼女はとても可愛い人で、向こうの世界の不思議な話をたくさん私にしてくれた……帰るまでの一年間は魔王様でのんびり暮らすらしい。

でもね、アリカちゃんは魔王の側近の人に恋をしたらしい。帰りるに日に告白するんだと彼女は言っていた。

魔王様に制圧された人の国は隣国に吸収される。魔王様は人の国は人に任せると"我々は攻めて来なければ何もしない"と言った。
隣国は発展途上国で、任せれば平民達の暮らしは今よりも遥かに良くなるだろう。

(魔王様の話だと……隣国には素敵な王子と聖女様がいると、言っていたかれ安心だわ)

ブランの国はヤンとリコ、ロンが中心となり、立て直すと言っていた。元の国王と息子達、騎士団はロンの魔法で力を制限されてヤン達の下で働くらしい。



そして、一ヶ月後。

私とブラン、スラ入りマジックバッグ、ブランに作って貰ったマジックバッグを持ち、ブランの家を後にする。

「違う国を見たり、美味しいものを食べてみたい」

と言った私の言葉に、ブランとスラが賛成してくれたのだ。

「ブランのお父様、お母様、ロンさん、みなさま、いってきます!」

「ロン、母さん父さん、みんな、いってくる」

「ニュ、ニュ!」

「ブラン、ブラン嫁、スラ、気を付けて行っておいで」

「ブラン、ヒーラギちゃんをしっかり守るのよ」
「聖女様、ブラン、スラ、気を付けて」

みんなに見送られて私達は旅立つ。


「行こう、ブラン、スラ!」
「ああ、行こう! 疲れたら言えよ、俺の背に乗せてやる」

「うん」

「ニュ、ニュ!」

「え、スラも抱えてくれるの」

「スラ、ヒーラギだダメだ」
「ニュ!」

「二人とも喧嘩しない、ほら行くよ!」

この旅はいつまでとか日にちも決まっていない。
自由でアテのない旅、お金がなくなったら冒険者になってギルドで稼ぐんだ。





◆最後までお読みいただき、ありがとうございました。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

ゆらぽって
2022.08.14 ゆらぽって
ネタバレ含む
解除
蓮華
2022.03.16 蓮華
ネタバレ含む
解除
おゆう
2021.11.19 おゆう
ネタバレ含む
2021.11.21 深月カナメ

コメント、お読みいただきありがとうございます。

解除

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!

ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。 ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。 そこで私は重要な事に気が付いた。 私は聖女ではなく、錬金術師であった。 悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。  ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。  その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。  十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。  そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。 「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」  テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。  21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。  ※「小説家になろう」さまにも掲載しております。  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。 社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。 対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。 それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。 けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。 …ある大事件が起きるまで。 姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。 両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。 姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。 しかしその少女は噂のような悪女ではなく… *** タイトルを変更しました。 指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~

今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。 こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。 「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。 が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。 「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」 一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。 ※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。