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二十四

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ブランに優しく、なんども震える唇でくちびるを奪われた。

「ヒーラギ、可愛い」
「ブラン……」

涙目で、幸せそうに笑っちゃって……ブラン、私のこと好き過ぎたよ――私よりもずっと大人の人だけど、可愛い人だな。

スリッと鼻と鼻を擦り合わせた後、時計を見たブラン。

「ヒーラギ、もうすぐ昼だな――お昼は大根とヒヨヒヨ鳥の卵スープにしようかな? あとはマジックバックに、鶏肉があったから香草焼きにでもするかな」

チキンの香草焼き?

「それでお願いします」

「わかった、ヒーラギが持ってきたパンも焼くか」
「私、チーズパンが食べたい」

「チーズパンか、いいな」







ブランのウチでキッチンに並んで、お昼の準備をしていた。料理を作るのはブランで私はもっぱら味見役だ。

「ヒーラギ、あーん」
「あーん」

焼き上がった香草焼きのチキンが口に入ったとき、玄関が開き、ブランと呼びロンがスラと入ってきた。

モグモグ……ゴクン。

「ロンとスラ……」

帰ってきたロンとスラは、私とブランを見て『おじゃまだったな』と、オデコをポリポリかいた。

「別にいいよ、何があったんだ?」

「速報だ、魔王が人の国を制圧して魔王嫁を救出した、アリカも無事だ……そして、ヤン率いる竜人軍は黒狼王国を陥落させた」

その報告にブランがヒュッと息吸い喉を鳴らした。

「……そうか、父さんが陥落したか、これで全部終わったんだな」

「ニュ」

「終わったね……ヤンは殺しはしないと言っていた"ただ、一生怪我が治らない、俺の嫁に頭を下げて欲しい"と言ったらしい」

「プライドが高い狼一族、弟達に頭を下げさせたのか、ヤンらしいな……嫁の怪我は魔王でも治せなかったか」
 
「瞳を再生させるのは、相当な技術と魔力がいると言っていたよ」

「そうか難しいか……」

ロンとブランの話で、人の国と黒狼との戦いが終わったと言った。そして、ヤン? という人の奥さんが怪我が治らないと話している。

「ブラン、ロンさん、私の癒しの力が使えない?」

ブラン、ロン、スラが同時に私を見た。

「そうだ、ヤンの嫁の両目は……ヒーラギの癒しの力で、もしかしたら治るんじゃないか?」

「ブラン嫁の力――聖女の力で治るかも知れないね、僕、ヤンを呼んでくるよ」

「ロン、お昼は?」
「戻ってから食べる」

と、スラを連れて出て行ってしまった。







ロンがヤン達を連れて戻るのを待つ間に、お昼を食べようと、食卓を片付けて料理を並べて座った。

「ヒーラギ、どうぞ」
「いただきます」

先ずはチーズがとろーり、チーズパンから一口かじった。カリカリのパンと濃厚なチーズが美味しい。このチーズに焼いたソーセージ、ジャガイモに乗せても美味しいだろう。

ブランもチーズパンをかじり。

「チーズうまっ、ヒーラギ、残ってたソーセージを焼こう。このチーズをソーセージにかけて食べたら絶対に美味い!」

「私も今そう思っていたわ」

ブランは立ち上がり、マジックバックから朝のホットドックに使った、太いソーセージを出してフライパンで焼き始めた。

「ううん、ソーセージの焼ける匂いって、また食欲をそそる」

「焼けたぞ、火傷に注意な」
「はーい!」

フォークにソーセージをさして、パンからこぼれ落ちたとろーりチーズを乗せて、カリッと食べた。ぷりぷりなソーセージにチーズがよく合う。

「「美味しい!」」

二人の声がハモった。


「香草焼きのチキンはハーブの香りがいいわ。大根のスープは優しい味付けね。ブランにお行儀悪いって言われるかもしれないけど、ご飯にかけて食べたい」

アクセントに黒胡椒を振ると良さそう。

「それ、残ったスープで俺もよくやるよ。アクセントにカリカリに焼いたベーコンと、黒胡椒を振るとまた美味い」

「うわぁ、美味しそう」
「ヒーラギ、夕食はそれにするか」

「ええ、ブラン」

私たちの賑やかな昼食は続いた。
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