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二十一
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「自分自身が助かる為に母さんを人間に渡した親父も、義母上、弟達もみんな無能すぎる……その行いの悪さで、人を傷付けて友のシアを怒らすんだ」
シア? 弟?
「ブランから聞いた話だと、兄弟はお兄様達ではないの?」
私を見るブランの瞳が悲しんでいた。
「ブラン、興奮すぎ。全部、嫁にしゃべるよ」
「ロン師匠、俺は嘘が嫌いだ、ずっと胸が痛い。……ヒーラギ俺は嘘をついていた、ごめんな、母さんの力を受け継ぎ、強力な聖女となったヒーラギが人間の国にいては、俺達の計画が台無しになる……」
ブランのお母さんの力?
私が強力な聖女?
計画が台無し?
「話がよくわからないわ、私の力が必要で城に連れて行くんじゃなかったの? それに私の力が強力なのも……」
「昨夜、まだ眠っていないヒーラギに城に連れて行くと、俺は嘘を言った。本当は人の国で聖女ヒーラギが守る結界は魔王ですら破壊できなかった。だから当初の計画の内容を変えたんだ、魔王に頼んでアリカを召喚してもらった……王子はヒーラギを嫌っているし、新しい聖女が現れれば、王子は必ずヒーラギを国から追い出すと思った」
苦しそうに語るブランの後に、ロンが話してくれた。
「アリカにどうして呼んだかを説明して、聖女役を頼んだんだ……彼女は楽しそうにやると言ってくれたんだ。それでね、自分が危ない目に遭いそうになったら、部屋から出るなと言ってある」
二人の話に私の頭は混乱した。
待って、魔王がアリカを召喚した? 彼女が来たのは異世界とか言っていた。魔王は次元を曲げて他所の国から自分達の計画のためにあの子を呼び寄せた……。
私が聞いたブランの話は嘘……信じていたものが覆って悲しい。
「何がなんだか訳がわからない、ブランは何をしようとしているの?」
「いいんだ、ヒーラギはわからなくていい……魔王、竜人、俺達の思惑は一致してる。お互いに願うことがあるから手を組んでいる」
思惑?
「ニュ」
「十年か……もっとかな、長い計画だったね」
スラとロンも。
「ちょっと待って、人の国に魔王軍が攻めてきているのでしょう? 私は王族はどうなってもいいけど、国に住む国民はどうなるの?」
「それについては大丈夫だ。魔王は国民には手を出さない、そういう約束だ。誰も争いなんて求めちゃいないんだ。だけど……人を傷付けると倍になって返ってくることを、アイツらに叩き込んでやりたい。母さんを物のように扱った人間は許せない……そして、俺が愛するヒーラギまで、物のように扱っていたなんて許せるかよ!」
ブランの瞳に怒りの炎が見えた。
+
私の力はあの日、急に芽生えたものではなかった。ブランのお母さんの力が私に移ったらしい。その力でブランの怪我を治して私が聖女となり、その力は魔王すら跳ね返す物だった。
ブランとロンの話からして。
魔王には魔王の野望がある、新しく話に出てきた竜人は黒狼族に恨みがある。ブランはお母さんの事で、人間と自分の家族を恨んでいる。
「ブラン、お母さんの力がどうして、私に移ったのか理由は知っているの?」
「それはわからないんだ、ヒーラギと出会う五年にロンとスラで母さんを王城から助け出した。ヒーラギの祖父母の屋敷に精神と体がボロボロな母さんは匿われていた……あの日、俺が魔物を連れて怪我をして、死にそうになった俺を助けたいと願った、お母さんとヒーラギ、二人の心が重なったんだとロンは言う……実際にはわからない。母さんの力はなくなりヒーラギに移ったんだ」
「じゃ、ブランのお母さんは?」
「元気にしてるよ……村で優しい伴侶ができて幸せに暮らしているよ……あの日、俺のせいでヒーラギは聖女となり八年もの間あんな場所で、一人でごめんな、辛かったろ」
ブランは真っ赤な目をして、自分の唇をギリッと噛んだ。
シア? 弟?
「ブランから聞いた話だと、兄弟はお兄様達ではないの?」
私を見るブランの瞳が悲しんでいた。
「ブラン、興奮すぎ。全部、嫁にしゃべるよ」
「ロン師匠、俺は嘘が嫌いだ、ずっと胸が痛い。……ヒーラギ俺は嘘をついていた、ごめんな、母さんの力を受け継ぎ、強力な聖女となったヒーラギが人間の国にいては、俺達の計画が台無しになる……」
ブランのお母さんの力?
私が強力な聖女?
計画が台無し?
「話がよくわからないわ、私の力が必要で城に連れて行くんじゃなかったの? それに私の力が強力なのも……」
「昨夜、まだ眠っていないヒーラギに城に連れて行くと、俺は嘘を言った。本当は人の国で聖女ヒーラギが守る結界は魔王ですら破壊できなかった。だから当初の計画の内容を変えたんだ、魔王に頼んでアリカを召喚してもらった……王子はヒーラギを嫌っているし、新しい聖女が現れれば、王子は必ずヒーラギを国から追い出すと思った」
苦しそうに語るブランの後に、ロンが話してくれた。
「アリカにどうして呼んだかを説明して、聖女役を頼んだんだ……彼女は楽しそうにやると言ってくれたんだ。それでね、自分が危ない目に遭いそうになったら、部屋から出るなと言ってある」
二人の話に私の頭は混乱した。
待って、魔王がアリカを召喚した? 彼女が来たのは異世界とか言っていた。魔王は次元を曲げて他所の国から自分達の計画のためにあの子を呼び寄せた……。
私が聞いたブランの話は嘘……信じていたものが覆って悲しい。
「何がなんだか訳がわからない、ブランは何をしようとしているの?」
「いいんだ、ヒーラギはわからなくていい……魔王、竜人、俺達の思惑は一致してる。お互いに願うことがあるから手を組んでいる」
思惑?
「ニュ」
「十年か……もっとかな、長い計画だったね」
スラとロンも。
「ちょっと待って、人の国に魔王軍が攻めてきているのでしょう? 私は王族はどうなってもいいけど、国に住む国民はどうなるの?」
「それについては大丈夫だ。魔王は国民には手を出さない、そういう約束だ。誰も争いなんて求めちゃいないんだ。だけど……人を傷付けると倍になって返ってくることを、アイツらに叩き込んでやりたい。母さんを物のように扱った人間は許せない……そして、俺が愛するヒーラギまで、物のように扱っていたなんて許せるかよ!」
ブランの瞳に怒りの炎が見えた。
+
私の力はあの日、急に芽生えたものではなかった。ブランのお母さんの力が私に移ったらしい。その力でブランの怪我を治して私が聖女となり、その力は魔王すら跳ね返す物だった。
ブランとロンの話からして。
魔王には魔王の野望がある、新しく話に出てきた竜人は黒狼族に恨みがある。ブランはお母さんの事で、人間と自分の家族を恨んでいる。
「ブラン、お母さんの力がどうして、私に移ったのか理由は知っているの?」
「それはわからないんだ、ヒーラギと出会う五年にロンとスラで母さんを王城から助け出した。ヒーラギの祖父母の屋敷に精神と体がボロボロな母さんは匿われていた……あの日、俺が魔物を連れて怪我をして、死にそうになった俺を助けたいと願った、お母さんとヒーラギ、二人の心が重なったんだとロンは言う……実際にはわからない。母さんの力はなくなりヒーラギに移ったんだ」
「じゃ、ブランのお母さんは?」
「元気にしてるよ……村で優しい伴侶ができて幸せに暮らしているよ……あの日、俺のせいでヒーラギは聖女となり八年もの間あんな場所で、一人でごめんな、辛かったろ」
ブランは真っ赤な目をして、自分の唇をギリッと噛んだ。
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