16 / 30
十六
しおりを挟む
愛情大爆発したブランに抱きつかれた……頬をスリスリ、スリスリされている。あ、あの見ていないで誰か彼を止めて、ブランのスリスリが止まらないのだけど。
『ブランは嫁が好きだな』
「ニュ」
そこ和まないで、彼が真っ白狼だったらモフモフは気持ちいいのだけど、今のブランのもふもふがなく直はけっこう恥ずかしい、恥ずかしいしかない。
早くブランも気付いて、私の顔真っ赤じゃない? ううん、全身真っ赤だと思うよ。
「ブラン、落ち着いて」
「なんだよ……ヒーラギ、ダメなのか?」
(そ、そのシュンとした垂れた耳と、可愛い顔は反則じゃない……)
「もう、落ち着くまでやっていいよ」
「ヒーラギ!」
私の中で恥ずかしい、でも可愛い、が交互に現れたのだった。
しばらくして彼は満足して気持ちも落ち着いたらしく、今日のキャンプ地を探そうと、みんなで森の開けた場所を探している。
(この森の瘴気は少なそうだから、少しずつ浄化してっと)
私は森の瘴気を見つけてはみんなにわからないよう、コッソリ浄化していた。
前を歩くブランが止まり耳が音を探る。
スラも気付いたのか辺りを気にし始め、ロンに至ってはいち早く気付き木の上に辺りを確認していた。
もちろん私だって気付いている、瘴気をまとった魔物が付近にいる。
「ヒーラギ、魔物の気配だ……」
「うん、いるね……この大きさだと、大猪か熊くらいかな?」
騎士団との遠征で、感じたことがある大きさ。
木の上のロンが何かに気が付き声を上げる。
『いた、北西50メートルの方角に真っ黒な瘴気を纏う魔物だ!』
「ロン師匠、ここは戦うか?」
『そうだね、あのままにしては置けない』
どうやら魔物がいる近辺に兎族の村があるらしい。
私の魔力はまだ半分以上残っているから、この森のごと浄化できそうかな? 倒れてもブランとスラ、ロンもいるから安心。
まだ不慣れな時に魔力不足で倒れて、森の中に置いて行かれた騎士団のようにされないはず。
よしやるぞ!
「はい、私がこの森ごと浄化します!」
「森ごと? ヒーラギ、出来るのか?」
コクコク頷く。
『森を浄化か。いま浄化して仕舞えばしばらくはこの森に瘴気が発生しなくなる……悪いけど、ブラン嫁、頼めるかい』
「ニュ!」
「任されました。私は祈りの最中は動けないので、周りの警護をよろしくお願いします!」
「わかった」
「ニュ」
私は地面に膝をつき祈り始める。『助けたい』と『みんなの役に立ちたい』という思いが、徐々に私の体内に浄化の光を集める。まだ足りない、もっと、もっと集めて、地面に両手を当てて唱えた。
「【浄化】」
集まった光ーー浄化の光が森全体を駆け巡り、瘴気を後方もなく消していく。瘴気に満ちていた森は浄化されてキラキラと元の自然に戻っていた。
しかし、いまの浄化の光でもっても四、五日かな。
完全になくすには森全体に結界を張らなくてはならない、そうしないと直ぐに魔物と瘴気は戻ってくる。
でも、問題が一つある。
結界って、どうやって張るのかわからない。
魔導書、前聖女の書いた書物にも結界の張り方が記されていなかった。隣国なら記した魔導書があるかもと王子に頼んだのだけど、無理だの一言でその願いは叶わなかった。
八年間、私は元からある結界をひたすら強化していただけで、結界の張り方は知らない。知らないからすぐに学んで覚えたいのだけど。
「凄いな……ヒーラギの清める力で、森の空気が変わった」
『ほんとうだ、綺麗な森を見るのは久しぶりだ、森に住む生き物たちも喜んでいるよ』
「ニュ、ニュ」
お疲れさまと、スラの伸びた手が私の頭を撫で撫でしてくれた。
うわぁ、嬉しい。
「スラ、もっと撫で撫でして」
と言ったのだけど、スラだけではなくブラン、ロンまで撫でてくれた。嬉しい。まずは全ての瘴気を浄化して、最後に結界を張らなくちゃ。
「ブラン、あのね、私、浄化をした後に結界を張りたいのだけど……やり方を知らないの。誰か教えてくれる人はいる?」
「結界を張るか……ロン師匠、結界に詳しい人、誰か知っている?」
『知ってるよ、僕のキューロン村の長老エルフのビビ様なら知ってるんじゃないかな? いまから会いに行く?』
会いに行く! と言う前に"キュルルルルル"っとお腹が鳴った。いまの浄化で大量の魔力を使ったからだ。
「あ、ごめん」
「ヒーラギは謝るなって。ビビ様のところに行く前に、先ずは腹ごしらえをしよう!」
『そうだね』
「ニュ!」
みんなとご飯の時間が始まるのだった。
『ブランは嫁が好きだな』
「ニュ」
そこ和まないで、彼が真っ白狼だったらモフモフは気持ちいいのだけど、今のブランのもふもふがなく直はけっこう恥ずかしい、恥ずかしいしかない。
早くブランも気付いて、私の顔真っ赤じゃない? ううん、全身真っ赤だと思うよ。
「ブラン、落ち着いて」
「なんだよ……ヒーラギ、ダメなのか?」
(そ、そのシュンとした垂れた耳と、可愛い顔は反則じゃない……)
「もう、落ち着くまでやっていいよ」
「ヒーラギ!」
私の中で恥ずかしい、でも可愛い、が交互に現れたのだった。
しばらくして彼は満足して気持ちも落ち着いたらしく、今日のキャンプ地を探そうと、みんなで森の開けた場所を探している。
(この森の瘴気は少なそうだから、少しずつ浄化してっと)
私は森の瘴気を見つけてはみんなにわからないよう、コッソリ浄化していた。
前を歩くブランが止まり耳が音を探る。
スラも気付いたのか辺りを気にし始め、ロンに至ってはいち早く気付き木の上に辺りを確認していた。
もちろん私だって気付いている、瘴気をまとった魔物が付近にいる。
「ヒーラギ、魔物の気配だ……」
「うん、いるね……この大きさだと、大猪か熊くらいかな?」
騎士団との遠征で、感じたことがある大きさ。
木の上のロンが何かに気が付き声を上げる。
『いた、北西50メートルの方角に真っ黒な瘴気を纏う魔物だ!』
「ロン師匠、ここは戦うか?」
『そうだね、あのままにしては置けない』
どうやら魔物がいる近辺に兎族の村があるらしい。
私の魔力はまだ半分以上残っているから、この森のごと浄化できそうかな? 倒れてもブランとスラ、ロンもいるから安心。
まだ不慣れな時に魔力不足で倒れて、森の中に置いて行かれた騎士団のようにされないはず。
よしやるぞ!
「はい、私がこの森ごと浄化します!」
「森ごと? ヒーラギ、出来るのか?」
コクコク頷く。
『森を浄化か。いま浄化して仕舞えばしばらくはこの森に瘴気が発生しなくなる……悪いけど、ブラン嫁、頼めるかい』
「ニュ!」
「任されました。私は祈りの最中は動けないので、周りの警護をよろしくお願いします!」
「わかった」
「ニュ」
私は地面に膝をつき祈り始める。『助けたい』と『みんなの役に立ちたい』という思いが、徐々に私の体内に浄化の光を集める。まだ足りない、もっと、もっと集めて、地面に両手を当てて唱えた。
「【浄化】」
集まった光ーー浄化の光が森全体を駆け巡り、瘴気を後方もなく消していく。瘴気に満ちていた森は浄化されてキラキラと元の自然に戻っていた。
しかし、いまの浄化の光でもっても四、五日かな。
完全になくすには森全体に結界を張らなくてはならない、そうしないと直ぐに魔物と瘴気は戻ってくる。
でも、問題が一つある。
結界って、どうやって張るのかわからない。
魔導書、前聖女の書いた書物にも結界の張り方が記されていなかった。隣国なら記した魔導書があるかもと王子に頼んだのだけど、無理だの一言でその願いは叶わなかった。
八年間、私は元からある結界をひたすら強化していただけで、結界の張り方は知らない。知らないからすぐに学んで覚えたいのだけど。
「凄いな……ヒーラギの清める力で、森の空気が変わった」
『ほんとうだ、綺麗な森を見るのは久しぶりだ、森に住む生き物たちも喜んでいるよ』
「ニュ、ニュ」
お疲れさまと、スラの伸びた手が私の頭を撫で撫でしてくれた。
うわぁ、嬉しい。
「スラ、もっと撫で撫でして」
と言ったのだけど、スラだけではなくブラン、ロンまで撫でてくれた。嬉しい。まずは全ての瘴気を浄化して、最後に結界を張らなくちゃ。
「ブラン、あのね、私、浄化をした後に結界を張りたいのだけど……やり方を知らないの。誰か教えてくれる人はいる?」
「結界を張るか……ロン師匠、結界に詳しい人、誰か知っている?」
『知ってるよ、僕のキューロン村の長老エルフのビビ様なら知ってるんじゃないかな? いまから会いに行く?』
会いに行く! と言う前に"キュルルルルル"っとお腹が鳴った。いまの浄化で大量の魔力を使ったからだ。
「あ、ごめん」
「ヒーラギは謝るなって。ビビ様のところに行く前に、先ずは腹ごしらえをしよう!」
『そうだね』
「ニュ!」
みんなとご飯の時間が始まるのだった。
56
お気に入りに追加
348
あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!
ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。
ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。
そこで私は重要な事に気が付いた。
私は聖女ではなく、錬金術師であった。
悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。
ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。
その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。
十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。
そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。
「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」
テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。
21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。
※「小説家になろう」さまにも掲載しております。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!
南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」
パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。
王太子は続けて言う。
システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。
突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。
馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。
目指すは西の隣国。
八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。
魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。
「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」
多勢に無勢。
窮地のシスティーナは叫ぶ。
「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」
■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です

召喚から外れたら、もふもふになりました?
みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。
今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。
すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。
気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!?
他視点による話もあります。
❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。
メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる