異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ

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十五

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 ロンという、エルフは私の記憶を消したと言った。

「私の記憶を消したのですか?」

『ちょっと違うんだけど。あの日に消した記憶はブラン嫁だけじゃないんだ、その場にいた人間全員の記憶を消したんだ』

 この話を始めてから、ブランが落ち込んで見えるのは気のせい? 
 スラも心配している。

「ブラン?」
「ニュ?」

「ん? あぁ」

 やっぱり変だ。

『ブラン、嫁に話しあげなさい』

「え、は、はい……ヒーラギにも弟にも、おじさんおばさんにも怪我をさせた、すみません」

 ブランが私に深深く頭を下げた、彼は私達に怪我をさせたと言い、話だした。

 ーー彼の話の内容はこうだ。

 ブランは黒狼王族のなかで、なぜか白く盛大な魔力量を持って生まれてた。
 母親はそのためか、何が原因かわからないが体を壊し病死してしまい、周り、家族に自分のせいだと言われ続けられた。
  
 そのため、不安、緊張により魔力量を上手く扱えず暴発させてしまう。
 困った家族は魔力にたけるエルフのロンにブランは預けられる。
 エルフのロンは国境近く、人間の国の夫婦と仲が良く茶飲み仲間だった。そこにブランを連れて行き、始めて与えられた優しさにブランはこの夫婦が大好きになる。

 数年後――ある夏の日。
 その夫婦の所に女の子と男の子が遊びに来ていた。二人の孫――ロンはブランにしばらく会わないほうがいいと言った。その訳は大昔、人間は亜人大量殺戮した。それを幼な頃に経験したロンは自分達の存在がバレると、人間に殺されてしまう考えたからだ、しかしブランは我慢できなかった。

 師匠の見様見真似で空間を開けて、それを閉めず二人に会いに行ってしまった。
 その空間から魔族が入ってきてしまい、ブランは守るために体を張るも大怪我してしまう。

(……俺のせいで)
 
 もうダメだと思った時にロンが来てくれた、彼もまた倒すことは出来なかったが、魔物を追い返すことには成功した。

 大怪我を負い、ヒューヒューと苦しげに息のブラン。

『ブラン、僕では君の怪我は治せない』
『俺はいい、みんなの怪我を見て……師匠』

 自分達を守ってくれたブランを治そうと『お願い、彼を治して!』声を上げたヒーラギの体は光に包まれ癒しの力が現れ、ブランの怪我は治る。

 治した後に倒れてしまったヒーラギと、傷が治り眠ったブラン。

『彼女には偉大な癒しの力芽生えました……この力は素晴らしいことですが、バレない方がいい』

 ロンとお爺様とお婆様との話し合いで記憶を消し、ヒーラギは怪我をした弟を治した事にした。弟は両親に聞かれて話してしまい、両親は有頂天。
 しばらくしてお爺さんお婆さんの所に行くと、ヒーラギは癒しの聖女になり王都にいると聞く。

 ――ブランは彼女に会いたくて、お礼を言いたくて必死に訓練をした。


 数年前から瘴気を含む魔物が現れ始めた。
 亜人たちでも歯が立たない、そんな時に旅の商人から人間の国に元からいつ聖女の他に、異世界からも聖女が現れて昔からいる聖女を蔑ろにしていると聞く。

(二人の聖女、一人はヒーラギだ)

 ブランはヒーラギに会いに行くと決める。
 人間の国に行く前に森の魔物が強く怪我を負ったブランだったが。そでもヒーラギに会いたくて、会いに行った日の舞踏会。新しい聖女を持ち上げて、何年もの間、聖女としてやってきたヒーラギは婚約破棄され、さらに聖女の名も奪われた。

 彼女はそっと会場から出て、祈りを捧げた後に馬車に乗り込み去ってしまった。

『ヒーラギ?』

 彼女がどこに行ったかわからない、おじさんとおばあさんの家に行けば会えるんじゃないかと、向かう途中で傷がひらき倒れた所にヒーラギが来たんだと話してくれた。

「あの日、俺のせいでみんなを危険に巻き込んだ……すまない。そんな俺を助けてくれたありがとう。この国の為に来てくれてありがとう、ヒーラギ」
「僕からもありがとう、弟子を助けてくれて」
「ニュ、ニュ」

 ブランは両親に愛されなくて寂しかったんだ。それは私も同じだったからわかる……父方のお爺様とお婆様は暖かく優しかった、彼もその優しさに癒されたんだね。

「あの日に私に癒しの力が芽生えてよかった、ブランを助けれてよかった……」

 ……ブランは私を必要としてくれる。

「ヒーラギ!」

 ブランが抱きついた。
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