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「待ってろ、ヒーラギ。いまハンバーグを作ってやる」
「ハンバーグ?」

「ニシシ、できてからのお楽しみだ」

 テーブルに置いた、まな板の上でブランは牛肉二百グラムくらいを切り取り、ナイフで細かく、細かく刻み大きめの鍋に入れた。次にカバンを漁り拳くらいの赤っぽい岩と丸い小さな黒い粒を取りだす。

「美味い肉だし、味付けはこれだけで十分かな?」
「岩? 黒い粒?」

「違う、ロックソルトと言って獣人の国で採れる塩だ、こっちは粒黒胡椒」

 ブランはロックソルトを布に包みトンカチで砕き、欠けらをもっと砕いた。黒胡椒の粒は小さな鍋底で粒をすり潰して出来上がったのは、ピンクの細かい粒と黒い細かな粒。
 
「なんだヒーラギは味が気になる、少し舐めるか?」

 頷くと手のひらに少しずつ乗せてくれた、それをペロッと舐める。

「うっ、しょっぱい、こっちはピリリする」

「ハハハッ、そうだろう。塩と胡椒を肉にかけて、よく手でこねるんだ!」

「こね終わったら?」

「終わったら、丸めて真ん中を凹ましてスキレット(鋳鉄製のフライパン)で焼く」

 枝をスキレットが乗るように焚べて、ブランは火を魔法で起こして乗せた。スキレットが温まったら油を引かずにお肉を並べて蓋をした。中でジューっと音を出してハンバーグが焼かれていく。

 ブランは器用に魔法で火の調節をしながらハンバーグを焼き、中まで火が通ったら出来上がりだと教えてくれた。

 焼き上がるにつれて、いい匂いが辺りに漂う。

「な、何だ、この美味そうな匂いわ!」
「ほんと、いい匂い」

 "キュルルルルル"どちらの音かわからない、お腹の音、ダイレクトにお腹に響く匂いに、二人でゴクリと喉を鳴らした。

 ブランは焼けた端をナイフで切りつまみ食い、私の口にも入れてくれた……モグモグ咀嚼すると、お肉を入れた直ぐに感じる肉の旨味と肉汁がじゅわり、塩胡椒のアクセントがいい塩梅。

「美味しい、ブラン、もっと食べたい!」
「待てヒーラギ。俺はいま、ものすごーく我慢している」

 真剣なブランの表情と、光る口元……アレは彼のヨダレだ。

「ぷっ、ブラン、ヨダレ、涎が垂れてるよ」

「うるせ、こんな美味い肉を初めて食ったんだ。俺たちの国にいる牛型モンスターの肉とは何もかも違う。出来上がったハンバーグを思いっきり食べたい! わかるかヒーラギ?」

「(……コクコク)わかる、私も我慢する」

 でも匂いに釣られてちょこんと、料理するブランの横に座った。

「おっ、ヒーラギも見てるだけじゃなくて、料理してみるか?」

「え、いいの?」

「いいぞ! ハンバーグは俺が焼くから、ヒーラギは玉ねぎを薄く切ってくれ」

「玉ねぎを薄く?」

 ブランは玉ねぎとナイフを私に渡した。
 まな板の上に玉ねぎを置きナイフを構えて、プルプル震える手元を見て『待てヒーラギ、最初に尖った上と下を切り落とすと、やりやすくなる』とお手本を見せてくれた。

 見た通りに玉ねぎをねかせて、上と下を切り落とした。その後は半分に切って、平べったい方を下にして端から薄く切る。

 薄く? ……あ、アレだ。いつも城で飲んでいたスープに入っていた薄い玉ねぎを思いだして、トントンとナイフで玉ねぎを切った。

 玉ねぎが鼻の奥がツゥーンと染みたのか、涙が瞳に溜まる。

「……つうっ、ブラン、玉ねぎって目にしみるね」
「そうだな、玉ねぎは目にしみる……」

 二人して玉ねぎで、ポロポロ涙を流した。

「出来上がりはこんな感じでいい?」
「お、初めてにしては上手く切れてるよ。どう? 料理やってみて楽しいか」

「ええ楽しいわ。それでブラン、この玉ねぎで何を作るの?」

「ヒーラギが切った玉ねぎはな。ハンバーグを焼いた後に残った肉汁でしんなりするまで炒めて、ハンバーグにかけるソースを作るんだ」

 それを聞いて、もっとハンバーグが楽しみになった。
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