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三
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今思えば、当時の私は真面目過ぎ。
朝の祈りの後、書庫で本を読み昼の祈り、そして書庫、夜の祈りの時間そんな毎日を王城の離れで過ごしていた。
力を誉めてくれたのは初めだけ、何年も続けば人は慣れてしまい、傷を癒すのでさえ当たり前になる。
『お疲れ様でした、次の祈りの時間までお寛ぎくださいませ』
最初はご機嫌取りなのか、庭園で開かれるお茶会などに呼ばれていたけど、時期にそれもなくなった。私が文句を言わず、言われた事を従順に従うからだろう。
寂しい、悲しい、家に帰りたい……誰かと話したい。
――私はお祈りをするだけの人形じゃない。
私は与えられた力で国に張られた結界を補強するだけの、毎日を過ごせばよかった。しかし魔物の動きが活発になり、瘴気が森に充満してきた。
『その聖女の力を騎士団にも使ってやれ』
瘴気を祓うため、ポンコツ王子の指令で騎士達の遠征に着いて行くことになり、魔物と戦い傷付いた騎士の傷も奇跡の力で癒した。
切り傷、引っ掻き傷、骨折、一番難しいのは手足の再生、書物で体の仕組みを理解して立体に想像しながら癒やさないと再生できない。私は書庫で本を読みポンコツに気持ち悪いと言われながらも、手帳に絵を描き体の仕組みをたたき込んだ。
魔法に至ってもヒール、広域回復魔法、聖魔法……覚え出したらキリがないし魔力も足りない。自分自身でも利用する回復薬にも関心を持ち、魔術師に錬金術を学びポーション作りにも参加した。森に生えている薬草で薬が作れるとも知った。
やれる事はやり、知ったことは全て手帳に書き留めた。
『いくらでも娘をお使いください』
伯爵家に跡取りの弟もいるからか、両親はお金さえ貰えれば何も言わない。そして十五になった時、私の知らないところで国王陛下と両親は制約が交わして、私はローデン王子の婚約者になっていた。
――ローデン王子に嫌われているのに。
こちらから歩み寄ろうと開いたお茶会でも、舞踏会のエスコートでさえ一言も話さず、目も合わない……口を開けば冷たい言葉、暴言ばかり、そんな人を私も好きになれなかった。
『また、騎士団の遠征について行けと言うのですか? ローデン殿下はどうなさるのですか?』
『僕は私用があってな。君は聖女だ一人でも多くの人を助けたいだろう? 気を付けて行って来るがいい』
十六歳になり私は知った――騎士達が命をかけて魔物と戦うなか。王子は他の令嬢を招待して茶会を開き、のほほんと王城で待っていたことを……
そして、私を毎回遠征に行かせる魂胆も……ローデンは遠征で私が魔物に襲われ、怪我をすればいいと思っていたとメイド達の世間話から知った。
遠征から騎士達と無事に王城に戻り、宴の舞踏会で私が陛下、王妃、貴族達に賛辞を述べられると嫉妬して睨みつけていたものね。
決まってローデンは"断じて、お前の力のおかげではない!"と言っていた。
私が活躍すればするほどローデンは私に意地悪をする。例えば舞踏会でダンス中に足を引っ掛ける、庭園で散歩途中に突き飛ばされる、遊びだと言って笑いながら、真剣を向けられたこともあった。
逃げたくても逃げられない、そんな時にアリカが異世界からこの国にやって来た、私とは違う可憐な乙女。王子は直ぐに綺麗な黒髪の可憐なアリカに夢中になった。
『聖女アリカにもヒーラギと同じく癒しの力があった、国に聖女は二人もいらぬ』
『ヒーラギさん、あとは本物の聖女のわたしがやるから。あなたは出ていってもいいし、ここに残ってもいいわ』
『では、後のことはホンモノの聖女様にお任せいたします』
役目は終わった……こんな場所から出ていける。少しずつ荷物をまとめて、書庫で必要な本を借りメモをとり、着々と出立の準備を始めた。
アリカ聖女のお披露目の日。
舞踏会でローデンに『お前とは婚約破棄だ!』と言われたとき、余りの嬉しさに小躍りしそうだった。
けどこれが表向きの発表で、その裏ではまだ利用価値があるとして、私をどうにか引き止めようとする力が動き始めている事を知っている。
――ヤツらに捕まりたくない。
私は婚約破棄の後に黒のレースで顔を隠し、荷物を持って城から姿を消したのだった。
朝の祈りの後、書庫で本を読み昼の祈り、そして書庫、夜の祈りの時間そんな毎日を王城の離れで過ごしていた。
力を誉めてくれたのは初めだけ、何年も続けば人は慣れてしまい、傷を癒すのでさえ当たり前になる。
『お疲れ様でした、次の祈りの時間までお寛ぎくださいませ』
最初はご機嫌取りなのか、庭園で開かれるお茶会などに呼ばれていたけど、時期にそれもなくなった。私が文句を言わず、言われた事を従順に従うからだろう。
寂しい、悲しい、家に帰りたい……誰かと話したい。
――私はお祈りをするだけの人形じゃない。
私は与えられた力で国に張られた結界を補強するだけの、毎日を過ごせばよかった。しかし魔物の動きが活発になり、瘴気が森に充満してきた。
『その聖女の力を騎士団にも使ってやれ』
瘴気を祓うため、ポンコツ王子の指令で騎士達の遠征に着いて行くことになり、魔物と戦い傷付いた騎士の傷も奇跡の力で癒した。
切り傷、引っ掻き傷、骨折、一番難しいのは手足の再生、書物で体の仕組みを理解して立体に想像しながら癒やさないと再生できない。私は書庫で本を読みポンコツに気持ち悪いと言われながらも、手帳に絵を描き体の仕組みをたたき込んだ。
魔法に至ってもヒール、広域回復魔法、聖魔法……覚え出したらキリがないし魔力も足りない。自分自身でも利用する回復薬にも関心を持ち、魔術師に錬金術を学びポーション作りにも参加した。森に生えている薬草で薬が作れるとも知った。
やれる事はやり、知ったことは全て手帳に書き留めた。
『いくらでも娘をお使いください』
伯爵家に跡取りの弟もいるからか、両親はお金さえ貰えれば何も言わない。そして十五になった時、私の知らないところで国王陛下と両親は制約が交わして、私はローデン王子の婚約者になっていた。
――ローデン王子に嫌われているのに。
こちらから歩み寄ろうと開いたお茶会でも、舞踏会のエスコートでさえ一言も話さず、目も合わない……口を開けば冷たい言葉、暴言ばかり、そんな人を私も好きになれなかった。
『また、騎士団の遠征について行けと言うのですか? ローデン殿下はどうなさるのですか?』
『僕は私用があってな。君は聖女だ一人でも多くの人を助けたいだろう? 気を付けて行って来るがいい』
十六歳になり私は知った――騎士達が命をかけて魔物と戦うなか。王子は他の令嬢を招待して茶会を開き、のほほんと王城で待っていたことを……
そして、私を毎回遠征に行かせる魂胆も……ローデンは遠征で私が魔物に襲われ、怪我をすればいいと思っていたとメイド達の世間話から知った。
遠征から騎士達と無事に王城に戻り、宴の舞踏会で私が陛下、王妃、貴族達に賛辞を述べられると嫉妬して睨みつけていたものね。
決まってローデンは"断じて、お前の力のおかげではない!"と言っていた。
私が活躍すればするほどローデンは私に意地悪をする。例えば舞踏会でダンス中に足を引っ掛ける、庭園で散歩途中に突き飛ばされる、遊びだと言って笑いながら、真剣を向けられたこともあった。
逃げたくても逃げられない、そんな時にアリカが異世界からこの国にやって来た、私とは違う可憐な乙女。王子は直ぐに綺麗な黒髪の可憐なアリカに夢中になった。
『聖女アリカにもヒーラギと同じく癒しの力があった、国に聖女は二人もいらぬ』
『ヒーラギさん、あとは本物の聖女のわたしがやるから。あなたは出ていってもいいし、ここに残ってもいいわ』
『では、後のことはホンモノの聖女様にお任せいたします』
役目は終わった……こんな場所から出ていける。少しずつ荷物をまとめて、書庫で必要な本を借りメモをとり、着々と出立の準備を始めた。
アリカ聖女のお披露目の日。
舞踏会でローデンに『お前とは婚約破棄だ!』と言われたとき、余りの嬉しさに小躍りしそうだった。
けどこれが表向きの発表で、その裏ではまだ利用価値があるとして、私をどうにか引き止めようとする力が動き始めている事を知っている。
――ヤツらに捕まりたくない。
私は婚約破棄の後に黒のレースで顔を隠し、荷物を持って城から姿を消したのだった。
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