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二話

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「こ、子供は? トラックは? そもそも、ここはどこだ? ビルも人も何も居ない……草のにおい? 何? 草原?」

 目の前に広がる大草原に生い茂る草をボンヤリと眺めながら記憶を辿る。
 
「たしか、トラックに跳ねられた衝撃と感触はあったような気がしたが……」

 全身を隈なく診てもとくに出血や痛む箇所はないし、怪我らしきものはひとつも見当たらない。
 
「どういう事? トラックに跳ねられた際、打ち所が悪かったのか……? 頭に異常が……」

 恐る恐る自分の記憶を確認する。
 
「俺は……大魔界人、二十一歳、父と母と妹の四人家族の長男、三浪目の夏の終わり……ホームセンターで置き配用ボックスを買った帰りだった……はずだ」

 取り敢えず、意識や記憶もしっかりしてるし、元々そう言う設定だった……というオチでない限り、今の自分がこっちに来る前の自分との差異は今のところ無い。

「あのトラック……まさか、既に配達員が恨みを買っていて、俺を轢き殺しに来たんじゃ……こっわ……」

 トラックの運転手がまともで無かったのは確かだが、そんな自分もまともといえるのか、それを検証するにもこの異世界へもう少しだけ踏み込む必要があった。

 俺は取り敢えず、自分の所持品などを確認する事にした。
 
「格好や持っている物は、トラックと衝突前の状態だな……。上着の内側ポケットにスマホ、ズボンのポケットには、財布とさっき買い物した時のお釣りとレシート、左腕にスマートウォッチ、親指・人差し指・中指にシルバーリング、ワイヤレスイヤホンと帽子、それと買ったばかりの大きな置き配用ボックスか……」

 もし、キャンプ中でこの場面に遭遇したのなら、今の所持品よりはまだ、安心して野外でもやり過ごせただろうな。
 
 まぁ、無いものは仕方がない……。
 
 ガジェット類は、バッテリーの充電ができるか分からないから、バッテリー温存を兼ね、スマートウォッチだけ電源を入れておくことにした。

 表示している時間が合っているのかはともかく、方位磁石(コンパス)の機能が使えているのは朗報だ。
 
「せめて身を守る物と食糧、問題は通貨と言語か……。ここが日本の田舎のどこかであって欲しいわ」と所持品を眺めながら俺はボソリと呟く。
 
「まずは、第一村人を発見しないとだな。聞きたい事が山ほどある」

 俺は丘から見下ろすと、目を凝らしてゆっくりと見渡す。

 森の中に小さいが集落の様なものが目に映った。

 コンパスを見ると北西を指していた。
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