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幸せの帰り道 4

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 荷馬車の中で外に護衛として立っている、リンとエンを荷馬車の中に呼び寄せて、昼食を取ることにした。

「レオ、ここならフードと姿を戻しても平気じゃない?」

「そうだな、人気のないところに荷馬車を止めたし、近付いて来る者がいたら直ぐに反応もできるな」

 パサっとフードを外し、もふもふなライオンの姿に戻った。それを見ていた、王女様はリンとエンに同じようにフードを取らせた。

 フードを取った、二人の護衛の頭とお尻に耳と尻尾があった。

「王女様の護衛の方って、獣人の方だったのですね」

「そうよ、わたしが選んで護衛になって貰ったの。二人ともレオくらいに強いわよ」

 二人は私に胸に手を当て一礼した。

「初めましてティーさん。私ーーリンはヒョウ、エンはトラの獣人です。レオは王女殿下の言う通りかなりの強者です。1ヶ月に一度の手合わせてで、私と互角の戦いをします」

 リンのグリーン色の瞳が、ギラリとレオを見て光る。
 1ヶ月に一度の手合わせ? 
 レオは王女様の護衛二人と互角。

「この前、助けてもらったときも凄かった。レオってS級の冒険者なんだよね。私の住んでいた村に冒険者はいなかったから、余り馴染みが無くて、よく分かっていなかった……ごめんね」

 幼い頃、両親が毛織物を売りに出るとき、大きな街で護衛を雇っていくらい。ギルドも冒険者もエルバ国で初めて知ったことだ。

「ティーはそれでいいんだよ。僕はもう冒険には出ていない、森の守りと薬草採取で暮らしていけるからね」

 レオはそう言って目を細めた。
 よかった、私は怪我をするレオは見たくないもの。

「勿体無い! あなたほどの腕ならSS級にも慣れて……父上の近衛騎士にも慣れるのに」

 キッと唇を噛んだ王女様。
 その隣に座る護衛、二人もそうだと頷いている。

 だけど、レオは首を横に振る。

「悪いのですが、僕にはSS級冒険者、近衛騎士にも興味ありません。若い頃に仲間と冒険は十分に楽しみました。いまはティーと二人でのんびり暮らしたいし、森を守る仕事だって結構大変ですからね」

 と言って、ニャーロ街で買ってきた昼食を広げ始めた。
 買ってきたのはニャーロ街の名物料理ニャーロ巻き。

 薄く焼いたとうもろこしの粉の皮に野菜、お肉、チーズ、ハムを巻き、甘辛のタレをかけて食べると、お店の人が食べ方を教えてくれた。

 他にホットドッグ、サンドイッチと。
 飲み物はもう一つのニャーロ名産、梨の果実水を買ってきた。

「さあ、食べてください。食事が終わりしだい、僕たちはビーラン国を目指しますので」

 途中で話を区切られて、少しムッとした王女様。
 しかし、これ以上、話を聞かない体制を取ったレオを見て。

「……わかった、この話は国に戻ってからでも出来るわ。いただきます」

 食事を始めた王女様は、まだレオを諦めていないらしい。

 レオは「諦めの悪い人だ」と隣で、ため息をつき。
 私はレオが決めることには口は出さないと決めて、ニャーロ巻きを楽しんだ。





 

「レオ、ティー、聞いてよモコがね……」

 モコさんへの愛の大きさに驚き、ニャーロ巻きを何度かお皿に落とした私と。

 苦笑いを浮かべで、何も言わないレオ。
 慣れているのか普通な護衛リンとエン。

 昼食は王女様のモコさん愛の話しで終わった。

 話をしてスッキリしたのか「レオ、ティー気を付けて旅を続けてね」王女様は馬に跨り颯爽と、護衛二人を連れてニャーロ街から去っていった。

 王女様を見送ったあと、レオは肩の力を抜いた。

「ふうっ、ユズリーナ王女様は悪い人ではないんだけどね、推しが強いって言うのか、我が強いよね……」

「私とはまったく違う。素敵で、強い女性でした」

「ほんとあの人は強いよね。僕は可愛いティーの方がいい。モコも大変な人に惚れられたもんだ」

 レオは人事のように笑っていた。







 ニャーロ街を出てから休みなく荷馬車を走らせて。
 私たちは夕暮れ過ぎに、大国ビーランに着いた。

 手続きを終えて門をくぐって見えてきたのは。
 王都の中を赤く照らす提灯の多さ。そして王都の中を行き交う、人々は手に同じ様な提灯を手にぶら下げて、ランプの代わりに使っていた。

 王都の中心にアーチ橋がかかり川が流れていた。
 いままで寄った国とは違い建造物は煉瓦、石壁ではなく白壁と木造建築。提灯の明かりで赤く色づく、織物、木製品、陶器が名産、大国ビーラン。

 ここで宿屋を取り、昼食の残りで夕食を取ったあと。レオは紅茶を飲みながら私に。

「明日はティーを人間の国じゃない国に、連れて行ってあげる。楽しみにしていてね」

 と言った。
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