上 下
26 / 37

二十三

しおりを挟む
 何事もなく、道中お天気にも恵まれ、私たちは旅続けてエルデ国を出てから3週間たった。毎朝、私は宿屋で大好きな人の腕の中で目覚める。

(幸せって、こういうのかな?)

 今朝も隣で気持ちよさそうに寝る、レオさんの寝顔を眺めていた。見つめ過ぎたのか彼の眉にシワがより、琥珀色の瞳が開いて私を見つめると、その瞳を優しげに細めた。

「ティー、おはよう。……今日も早起きだね」

「はい、早く目覚めればレオさんの寝顔を見られるから……って、お、おはようございます、レオさん」

「ふぅーん、ティーは僕の寝顔を見てたのか……ふふっ、僕は寝ついたあとの、ティーの寝顔を堪能してるけどね」

「えっ!」

(……し、知らなかった)

「ぽっと頬が赤くなった。ティーの寝顔は可愛いから、ずっと見ていたくなる。いまのティーも可愛いけどね」

 レオさんはコツンと、私のおでこと、自分のおでこをくっ付けた。

「寝顔を見たいって私と同じ……私もレオさんの寝顔は可愛いから、ずっと見ていたくなる」

「そっか、僕たちは同じだね」

 おでこ、コツンから鼻先をすりすりして、ちゅっとキスをした後。
 たっぷりの愛情をレオさんから受けて、私は幸せにひたった。





 


「ティー、マント領のルース村には、あと3日くらいで着くかな?」

 レオさんはベッドの上に地図を広げた。エルデ国を出てからずっと、地図に私たちが通った国と街の所に印を付けていた。

 横から地図を覗き込み、今いるオーバロ国から、ルース村の位置を確認した。

「そうですね。私たちは今このオーバロ国にいて、そこから、この道順に進んでここがマント領ですから。あと3日もあればルース村に着くと思います」

「3日後か……ふうっ、ちょっぴり緊張してきた」

「わ、私も緊張してる。1年以上前に……私は、村のみんなに黙ってルース村から出てきてしまったから……本当は少し帰るのが怖いです」

(そして、リオン君とセジールお嬢様には会いたくない……)

「大丈夫だよ、ティーの側には僕がいるからね。何かあればルース村から、すぐエルデ国に引き返して仕舞えばいい。僕たちには時間がある。結婚した後でも、子供が出来た後に来てもいいんだから」

(レオさんとの子供……)

「はい。ありがとう、レオさん」

「だから、ティーは気にしなくていいんだよ」と、レオさんは私を優しく抱きしめてくれた。







 それから雨も降らず、呑気に馬車に揺られて3日後。私たちは目的地ーーマント領のルース村に着いた。

 1年前とあまり変わらない、長閑なルース村に……。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

弁当 in the『マ゛ンバ』

青春 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:11

勘違い女は今日も夢を見る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:15

スレイブズ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:356pt お気に入り:14

チート鋼鉄令嬢は今日も手ガタく生き抜くつもりです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:135

あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

BL / 連載中 24h.ポイント:4,438pt お気に入り:151

処理中です...