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十五

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「お昼にしようか?」

 レオさんの案内で美味しいと評判の、サンドイッチ屋さんに、連れて行ってもらった。

「レオ、いらっしゃい」

 このお店はレオさんのお友達の、熊のティガさんが経営するサンドイッチ屋さん。
 店内のディスプレイには、綺麗な断面のサンドイッチが並ぶ。
 タマゴサンド、野菜たっぷりサンド、ハムとチーズのサンド。
 分厚いお肉のサンドイッチ、フルーツサンド。
 ホットドッグもあって、どれもボリュームたっぷりで美味しそう。
 これは迷ってしまう。

「ティーさん好きなのを選んで、店の前のテラス席で食べよう」
「たくさんあって迷っちゃう」

「食べきれなかったら、持って帰って今日の夕飯にしよう」

 そのレオさんの提案に乗り。
 私はタマゴサンドとお肉のサンドに、フルーツサンドと紅茶と。
 ついつい、たくさん欲張って選んでしまった。

 トレーを見ながら反省。

「ティーさん、頼み過ぎたって思った? 僕もたくさん選んだから、一緒だよ」

 レオさんのトレーの上には野菜サンドと、鶏肉のサンド、コロッケサンドにホットドッグ、それにコーヒー。

「ほんと同じ」
「ねえ、同じだろ。ここのサンドイッチは美味しくて、来るとついつい、たくさん買っちゃうんだ。さあ食べよう」

 向かい合って座り、テラス席で昼食を楽しんだ。

「もう、お腹いっぱい」
「僕もだ」

 その後は本屋に寄ったり、画廊を覗いたり、八百屋で果物を買ったり気が付けば、夕方に差し掛かっていた。

「じゃ、ソフトクリームを食べながら帰ろう」

 レオさんの友達、ウサギのニカさんのソフトクリーム屋に寄った。

 少し明るめなウサギさん。

「いらっしゃーい、なんにする?」
 
「私は苺のソフトクリーム」
「僕はバニラで、ニカよろしく」

「はいはーい、レオの可愛い彼女さんにはおまけね」

 彼女さんと言われて、苺の果肉も付けてもらった。

「美味しそう、ありがとうございます」

「どういたしまして! レオ、可愛い彼女さんじゃーん」
「お前は、相変わらずだな」

 明るく、楽しいレオさんのお友達。
 この獣人街はレオさんの知り合いがたくさんいて、みんな優しくてまた来たいな。 

「どうしたの? なんだか楽しそうだ」
「レオさんのお友達さんはみんな良い人ばかり、また来たいなって思っていたの」

「わかった、また来ようね」

 と、約束をしてくれた。


 ♢


「レオ、レオ待ちなさい!」

 それは私達が王都の門に差し掛かった時、レオさん呼ぶ女性の声と、一台の馬車が近くに止まった。

「アイリス様か……はぁ、ティーさんごめんね」

 レオさんのお知り合いの女性? アイリス様?

 馬車から従者に手を借りて、綺麗な貴族の女性が降りてきて、レオさんに抱きつこうとした。
 しかし、レオさんは迎える事をせず、一歩下がり私の手を掴み、頭を下げた。

「久しぶりなのに連れないわね。なに照れてるの? ところで、婚約者の私を差し置いて、レオはここで何してたのよ」

 婚約者と言い。
 レオさんの隣にいる私をギロリと睨んだ。

「前にも言いましたが、僕はアイリス様の婚約者ではありません。書類も旦那様にお返ししました」

「そうよ、なんで書かないの? 私と婚約すれば。誰もが狙う、公爵家の跡取りになれるのよ!」

「僕には興味ありません。第一あなた様は僕の獣人の姿が見にくい嫌だと、おっしゃった」

 レオさんの獣人の姿が醜い? 

「今のあなたは醜くないわ。その姿でいいじゃない。その姿の貴方を私は好きなのよ」

「この姿は、ここでの生活のためにしているだけで、僕は獣人の姿が本当の僕だ。僕達の家に帰ろうティーさん」

 私の手を引き王都の門に行こうとする。

「レオ、待ちなさいよ、そんな田舎娘より私の方が素敵よ。書類を書き婚約者になれば、私の他に、何でも好きな様に貴方の手に入るわ! その子を妾にしたっていい」

「馬鹿な事を言うな! ティーさんを妾だと。僕はあなた様から何もいらない。僕には彼女がいるだけで、幸せだなんだ」
「レオさん」

 私を見て微笑んでくれた。
 それに、お嬢様はギリッと歯軋りを立てた。

「そんなの嘘よ! レオは私のこと好きだったくせに。そんな子よりも、綺麗な私が選ばれないはずがないわ! 今も貴方は私のことが好きなはずよ」

「今の僕は好きではありません。いつの頃の話をしているのですか? あなた様は……あなた様と釣り合ったお方と婚約なり、結婚をした方がいい。僕では無理です」

 礼をしてお後の門をくぐる。後ろで名前を呼ばれても振り向かず、レオさんは私の手を引いた。

 幾分か歩き畑道に入ってから、ふうっと息を吐く。レオさんを見上げても下からじゃ、真っ直ぐ前をむき歩く、彼の表情が見えない。


『私のことが好きだったくせに!』


 レオさんはあの綺麗な人を好きだったんだ。少しの沈黙が過ぎて、レオさんがポツリと漏らす。

「ティーさんは、どっちの僕がいい?」
「えっ?」

 小さな声だけど私の耳に届いた。

 どっち? 

「レオさん! どっちってなんですか? どっちもレオさんなのに、選ぶ事なんて出来ないわ! 私はどっちのレオさんも………⁉︎」

 好き。

 心にはっきりと浮かんだ。
 優しく、私をあの場所から助けてくれた。いつも私を、大きな体で包んでくれる。


 私は、レオさんを好きなんだ。


「どっちの僕もなに? 教えて」
「えっ」

 私が言うこと、レオさんはわかってるくせに。
 さっきから、声が弾んで、笑って、レオさんの目尻下がってるわ。
 
「意地悪だったかな、ごめんね。僕は君の口から聞きたいんだ」

 
 身体中、真っ赤な私を見て、謝りながらも、期待するレオさんの瞳が覗く。


「わ、私はもふもふライオンのレオさんも、今のレオさんも、レオさんの全てが、だい……きゃっ」

 大好き、と言う前に我慢できなかった、レオさんに抱きしめられた。

「嬉しい! 僕もだ、ティ。君が好きだ」
 
 急いで、帰ろうとお姫様抱っこをされたのだった。
 
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