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十一

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 レオさんの胸に引っ付いて眠る日々。それを幸せだと感じはじめた。
 彼と出会ってから半年近くがたつ、レオさんは優しくて、笑うと可愛い。

 このまま、レオさんとの暮らしが続くといいなぁ。


「ねぇティーさん。今日から三日後に王都へ日用品を買い物に出かけよう」


 ある日の朝、朝食のときにレオさんが提案した。
 普段の買い物は近くの町まで、一緒に出かけているけど、王都に行くのは初めてのことだ。

「いいのですか?」

 朝食の、ハムとチーズ入りのホットサンドを食べながら、レオさん頷く。

「ティーさんに僕の仕事場と友を紹介するよ」

「はい!」

 とは言ったものの。
 レオさんは休みを取るために自室で書類整理をしたり、それを持って王都に行ったりと忙しそうだ。

 今日も遅くまで書類の整理をしていた。

「レオさん、余り無理をしないでください」

 頼まれた濃いめのコーヒーとサンドイッチを机に置く。

「全然、無理なんてしてないよ。ティーさんとのお出かけが楽しみで、元気が有り余ってるくらいだ」
「それならいいですけど、実は私も明後日のお出かけが楽しみです」

 それからレオさんは書類の整理に戻り。
 私はというとクローゼットから水色のワンピースを出して、ドレッサーに座り蓋を開けた。

(でも、ここで作業をするのは迷惑かな?)

 彼の仕事の邪魔をしたくなくて、裁縫道具を持って部屋を出ようとして止められる。
 レオさんは「僕のことは気にせずに、ここで作業すればいいよ」と言ってくれた。

 静かな部屋の中で、書類にペン先を走らせる音だけが聞こえる。
 その音を聞きながら私はお出かけに着る、水色のワンピースのしっぽ穴にアップリケを縫っていた。

 もちろんデザインは決まっている。

 あの後からも練習を重ねたけどあまり上達はしなかったから、気持ちを込めて一針、一針丁寧に縫っていた。

 分からないところは彼を見ればいいのと、書類に目を通すレオさんをチラ見した。
 
(ドキッ)

 いつもとは違う、レオさんの雰囲気に心を奪われた。料理や掃除をする姿も素敵だけど、仕事中のレオさんも素敵。 

 そんな彼から目が離せずに眺めていた。

 カサっと書類を置く音に、あっと我に帰ったけのだけど、彼と視線が合う。

(見てたのバレちゃった)

 と、焦る私に。彼は微笑んで優しい言葉をかけてくれた。

「ティーさんどうしたの? 疲れたのなら先に休んでいいからね」

「は、はい。もう少し進めたら寝ます」
「うん、わかった」

 レオさんの視線が書類に戻る。

 ふぅ、びっくりした。あまりにもレオさんを見過ぎちゃった……。

 もう一度彼を見て、私はキリの良いところまで進めましょうと、針を持った。

 ♢

 ティーが作業に戻ったころ、レオは机の上でドギマギしていた。

 な、な、なんだ? ティーさんのあの可愛い表情はなんだ⁉︎

 僕を見ながら、頬を赤めて微笑んでいたぁ⁉︎
 
 あぁーこれは気を抜くと、顔がふにゃりティーさんを見てしまう。

(ダメだ、集中できない)
 
 レオは書類に視線を戻したのではなく、赤くなった頬を書類で隠していたのだ。

 数分後。気分を落ち着かせて仕事を再開させた。

 あ、また聞こえた。時折部屋に聞こえる彼女の鼻歌に、楽しそうにアップリケを縫う彼女。

 ティーさんも僕とのお出かけを楽しみにしているんだなと嬉しくなり。

 今度は、喜びの尻尾が止まらなくて困った。
 
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