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 カーテンの隙間から入る朝日と、頬に感じた朝の冷たい空気で目が覚めた。

「ん、んっ……あれ、ここは?」

 見慣れない天井にふわふわで肌触りの良いベッド…目が覚めてくると頭の中に情報が一気に流れこんできた。
 そうか…私は二人を見たくなくて、村を出て来たんだ。

 村のみんなは心配したよね? …ごめんなさい。あの時の私は自分の事だけしか、考えれなかった。でも、後悔はしていないの、自分で考えて行動したのだから…
 そうだ、彼は? まだ隣で寝ているのかと思い手を伸ばしたけど、隣には誰もいず冷んやりしていた。
(どこに、行ったのかな?)

 ベッドから起き上がり彼を探した。うわぁっ、何この広い部屋⁉︎ 大人二人が寝ても余るベッドに、本棚が、一、二…どの本棚にも本がぎっしり、書斎の上の積まれた書類、クローゼットに皮張りの椅子。どの家具も高級感満載…

 もしかして彼は貴族で、ここは貴族の屋敷⁉︎
 
 部屋の入り口の扉が少し開いている。もしかして彼が「出ておいで」と、言っているの? 開いた扉からベーコンの焼ける、美味しい匂いにぐーっとお腹が鳴った。
 お腹空いた……そういや、昨日から何にも食べていないや。
 この、お腹の空く匂いは何処から? それに彼は何処に行ったの? 昨日のお礼を彼に言わなくちゃ、とベッドから出ようと掛け布団をどかした。

「(え、うそ、私)……いやっ」

 どかした布団をまた頭から被った。

(嘘よ、嘘…誰か嘘だよ言って!)

 でも、ちゃんと清潔だから……旅先でも毎日石鹸で洗ったから、別に見られても平気よ…だ、だけど、履き慣れて穴の開いた箇所に布を当てて縫った、使用感ありのヨレヨレ…下着を見ず知らずの彼に見せたなんて…

(恥ずかしすぎる…)

 部屋の中で悶えていると「コンコン、コンコン」と部屋の扉が鳴り「何かあった?」と心配した彼が真っ白なエプロンを付けた姿で扉を開けた。

「はぁ、ひゃっ⁉︎」

 聞こえたの? そそそ、そんなに大きな声を出したわけじゃないのに? それにエプロンすがたぁ⁉︎ 
 
「どうした? 何があった?」
「い、いいえ…なんにもないです」

「……そう?」

 しばらく続く沈黙。彼は布団を掴み縮こまる私を見て、ふうっ…と息をついた。

「…ごめん、この姿が怖かったんだね?」

 彼の沈んだ声がした…この姿? 一瞬彼が何を言ったのか分からなかった…姿って? ライオンの姿のこと?

「君の帰りの手配と、着替えをすぐに手配するよ…」

 彼が落ち込んだ? ……彼の耳と尻尾が少し下がった様に見えた。私のこの行動が彼を傷付けたの? ちょっと違うの、これは私の……

「待って! 違うの」

 扉を閉めて行こうとした、彼に向かって叫んだ、恥ずかしい、頬と耳が熱いけど…私を助けてくれ、涙した彼を傷付けたくない。

「いいや、無理しなくていい。こういうのに俺は慣れているから…」

 慣れているなんて、嘘だ…そんな風には見えない。

「そうだな、僕ではダメか…人を呼んでくるから、しばらくそこにいて」

「だから、違うんです! わたしは…私は! あなたが怖いんじゃないの……あ、あなたに見られた、このヨレヨレの下着が恥ずかしかっただけなのー!」

 言い切った後に、ぼふっと布団に顔を隠した。言っちゃった……もう、叫んで熱くなったのか、恥ずかしくて熱くなったのかわかんないけど…顔から火が出たように熱い……
(しーん)
 あれっ? あれれ、静かだわ…私が下着だなんて変なこと言ったから困らせた? 布団から顔を出して彼を見たけど、彼は扉を持ったまま、目を大きくして驚いた表情をしていた。
 そして、口元がわなわなと緩み出して、目が無くなるほど笑った。
「…ははっ、あの可愛いクマさんのアップリケが付いた、下着のことか…」
「違う、あれは……ネコ」

「ああ、あれはネコさんだったのか…って、ごめん、しっかり見ちゃってたな」 

 頭をポリポリかき、照れて笑う彼の笑顔に釘付けになった。

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