悪役令嬢は、貴方を絶対に愛さない。

深月カナメ

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 ……

 ……

 ……ん?

 パチリと目が覚めた。

 視界に入る垂れ下がる水色の天蓋……どうやら、私はベッドに寝ていた。
 ゆっくりと体を起こして、周囲を見回す、本棚、テーブル、カーテン。

 どれも見覚えのある、ここは私の部屋だわ。


 ほんの少し前に、王子の友人。ガレットの剣で胸を刺されて死んだはず。
 自分が引き起こした。惨劇もハッキリと覚えている。
 
 狂った私の姿も忘れていない。
 

 一体、どうしたというの?


「…くっ」

 
 突然の痛みで胸を押さえた。

 ここは剣を突き立てられた所。

 私はすぐさまベッドから飛び起き、鏡台の前でパジャマのボタンを外した。
  
「はっ、なにこれ」
 
 鏡台の鏡映る、幼い自分。背も低く、手も小さく……そして、小さな胸には。


「…赤いバラの痕」


 剣が突き刺さったところに、真っ赤な薔薇と、その薔薇の花びらが散った様な痕が残っていた。


〈あ、ああ。カトリーナ、カトリーナ。ワシの声が聞こえるかの?〉


 突如、頭の中に響く声と、目の前に光の玉が現れた。


「貴方は誰?」


〈ワシか? ワシは生と死の神とでも言っておこうかの?〉


 光の玉は神と言った。


「その生と死の神が、私を生きかえらしたの?」
 

〈うむ、そうじゃ。ワシのほんの退屈しのぎじゃて。お前の時間を巻き戻してみたのじゃ。結局はまたあのようになるのか? 違う道を歩むのか? お前さんはどう生きるかを見て見たくなったのじゃ。ワシからのチャンスじゃ〉


「あんな事をしでかした、私なのに?」


〈だからチャンスなのじゃ、この生で、お主が失敗すればその薔薇のトゲが胸に刺さり、二度と転生は出来ぬ。お主は漆黒の闇。地獄に落ちるのみじゃ、好きなように生きてみなされ……あ、そうじゃ。もう一人、お主と同じ運命の奴がおる。そやつのことも考えてやるのじゃ〉


「運命のひと、誰のことを言っているの?」


〈それは自分で探してみなされ、ワシはいつでもお主を見ておるぞ。さらばしゃ〉


 神様は語り終えると、声と光は消えていった。
 最後に神が言った、同じ運命の人が王子ではないことを祈らなくちゃ。

 
 ふうっ、時間が巻き戻ってしまった。それはいつまで、今私は何歳?


「……いたっ」


 今度は胸ではなく額に痛みを感じた。額のこの包帯。階段の手すり滑りから失敗して、落ちた時にできた怪我だ。

 たしか、この傷を作った時って十一歳。
 後一ヶ月で誕生日を迎えて十二歳になり、王子の婚約者候補に選ばれる。

 最終的に婚約者に選ばれるけど、結局はヒロインには勝てないのだし、婚約者に選ばれたくもない。


 せっかく神様にチャンスを貰ったのだもの。


「今度は誰も恨まない道を選ぶわ」


 でも、あと一ヶ月で婚約者候補。その前に屋敷を出てしまう? 

 常に周りには人が側にいて。移動は馬車。王妃になるためにと、王城と屋敷の往復しかしなかった私はどこに行ける?

『お嬢さんはどんな、毒薬が欲しいんだ?』
 
 あっ。

「……魔導具屋マーゴ」


 たしか、王都の裏路地の奥にあったはず。王城で魔道士達が話していたのを聞いて、十七歳のときに行った魔道具屋マーゴ。


 そこに行ってみよう。
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