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シンシア・マクスヴェル男爵令嬢(アイザック視点)
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私には今気になっている女性がいる。
シンシア・マクスヴェル男爵令嬢だ。
彼女は私の事を知らないと思うが、私は一度だけ彼女を見かけたことがある。
それは、年に一度の公開演習の日。
イアンと仲睦まじく話しているのを見かけた。
その笑顔は愛らしく、私は年甲斐もなく目を奪われた。
奪われたのは容姿だけではない。シンシア嬢の纏っている雰囲気も気になった。
どこか怪しげだが、その怪しさの中に悲哀感が垣間見えた。
──その時の私は何故そのような雰囲気を纏っているのか分からなかった……
それからシンシア嬢の事が気になって頭から離れなくなっていた。何故こんなに気になるのか理由は分からないが、こんな事は初めてだった。しかし、シンシア嬢とは歳が離れていて接点がない。このまま月日が過ぎるのを待つしかないのだろうか。
そう思っていた、ある日。シンシア嬢の成人を祝う夜会が開かれると聞き、兄のイアンが騎士達を招待していた。
そこにたまたま私が出くわした。
「あっ!!副団長も宜しければ参加していただけませんか?」
私はニヤつきそうになる顔を引き締め、何食わぬ顔をして参加を表明した。
◇◇◇
夜会の前日、私はイアンと共に男爵邸を訪れた。
本当は夜会当日に訪れる予定だったのだが、どうしても先にシンシア嬢に挨拶をしておきたいと私が申し出たからだ。
応接室で外を眺めながらお茶を飲んでいると枝の合間から人の足が見えた。
驚いた私は窓から飛び降り、足の見えた木へと急いだ。
すると何やら揉めている様な声が聞こえてきた。聞き耳を立て聞いてみると、侍女らしき者が木の上に向かって「お嬢様」と声をかけている。
(この屋敷のお嬢様と言えば……)
そう思っていたら、侍女の悲鳴が聞こえたので思わず体が動いた。
私の中に落ちてきたのは間違いなく、シンシア嬢だった。
初めて会った時と変わらぬ可愛らしい容姿に、私の腕の中にすっぽりと収まる小柄な体。
ずっと会いたいと思っていた女性が今腕の中にいる。そう思っただけで全身の血が沸騰したように熱くなった。
シンシア嬢は私の顔を見て驚いていたが、何故か私ではない者を見ているようにも思えた。
正気に戻ったシンシア嬢は慌てて私の腕から下りると、侍女を連れて一目散に逃げて行った。
私はその姿を追わなかった。追わずともすぐに会える事を分かっていたから。
(次に会った時に何を話そうか)
そんな事を考えていたのに、部屋で会ったシンシア嬢は私の顔を見るなり信じられない者を見るような顔をした。そして、必死に私を歓迎しているフリをしている。
シンシア嬢は私の事を嫌っている……
直感的にそう感じてしまった。
私は彼女に嫌われるようなことをしただろうか?いや、今日初めて言葉を交わした。では、何が……
「シンシア!!」
イアンの叫び声で我に返った私が見たものは、真っ青な顔をして気を失っているシンシア嬢だった。
◇◇◇
私はシンシア嬢の目が覚めるまで、この男爵邸に滞在させてもらうことにした。
イアンは「何日滞在してくださっても結構ですよ!!」と言ってくれたので、有難くそうさせてもらうつもりだ。
結局、シンシア嬢の目が覚めたのは次の日の夜会当日だった。
私は自分の屋敷の庭園から摘み取った薔薇の花束を手に夜会会場へとやって来た。
ゆっくり会場へ足を踏み入れると、会場の中心に一際光を放っている令嬢がいた。
息を飲むほど美しいとはこの事なのだろう。
私はその美しい令嬢……シンシア嬢に花束を贈った。
その時、一瞬手が触れてしまった。シンシア嬢は慌てて手を引っ込め、形ばかりのお礼を口にしていた。
私は何とか距離を縮めたいと思っていたが、シンシア嬢は違った。見知らぬ男に肩を抱かれ、安心し切ったような表情。
そんな表情も出来るのか……私の知らない表情を見せてくれるシンシア嬢の事が益々気になった。
(二人きりで話せないだろうか……)
辺りを見渡すと、既にシンシア嬢の姿はなかった。
きっと逃げたのだろう。
「ふふっ」と思わず笑みがこぼれた。
私は女性に追われる事はあっても追ったことは一度もない。
そんな私が女性を追う側になるとは思いもしなかった。
(追う側も案外嫌いじゃない)
そして見つけたのは昨日シンシア嬢が落ちてきた木の上。
どうやらこの木がお気に入りらしい。
私を見つけたシンシア嬢はそれはそれは怪訝な顔をしていたが、木の上は危ない。
私はすぐに下りるよう言ったが、そんな事を聞くような令嬢じゃない事は知っていた。
仕方なく、私がシンシア嬢の元へ行くことにした。
木の上から見渡した景色はとても素晴らしいものだったが、シンシア嬢の返事は相変わらず素っ気ない。
そこで私は確信を付いた。
「シンシア嬢は私を嫌ってますよね?」
すると、分かりやすく顔色が変わった。
その様子に思わず笑みがこぼれた。
そして、私が何をしたのか原因を聞き出そうと詰め寄った。
「私は貴方のことを知りたい」と……
すると、シンシア嬢から黒い靄のようなものが現れ、私の体を締め付けた。
(なんだこれは!?)
振りほどこうにも振り解けない。
こんなモノ初めて見た。シンシア嬢は一体何者なんだ!?
そう思いシンシア嬢の方を見ると、思わずゾクッとした。
妖艶な雰囲気を漂わせ、こちらを見る女性が人とは違う何かに見えた。
そして、語られたのは私の祖父を恨んでいると……その面影が似ている私を嫌っていると言った。
正直、私も知らない祖父のことを何故、私よりも若いシンシア嬢が知っているのか不思議に思ったが、今私の身に起こっている現実がその不思議をかき消した。
誰にも言えない秘密を抱えている。そう思った。
全てを話終えると私は解放され、シンシア嬢は私に警告してその場を去っていった。
「──はぁ、参った」
ドカッとその場に腰を下ろし、今あったことを思い返した。
貴方は、祖父に似ている私を嫌っているのか……一体何があったんだ……?
私は貴方を知りたいと思う気持ちはより強くなった。
直せる部分は直そう。だから、私に本当の貴方を教えてくれ……貴方の事が知りたいんだ……そして、私の事を──……
シンシア・マクスヴェル男爵令嬢だ。
彼女は私の事を知らないと思うが、私は一度だけ彼女を見かけたことがある。
それは、年に一度の公開演習の日。
イアンと仲睦まじく話しているのを見かけた。
その笑顔は愛らしく、私は年甲斐もなく目を奪われた。
奪われたのは容姿だけではない。シンシア嬢の纏っている雰囲気も気になった。
どこか怪しげだが、その怪しさの中に悲哀感が垣間見えた。
──その時の私は何故そのような雰囲気を纏っているのか分からなかった……
それからシンシア嬢の事が気になって頭から離れなくなっていた。何故こんなに気になるのか理由は分からないが、こんな事は初めてだった。しかし、シンシア嬢とは歳が離れていて接点がない。このまま月日が過ぎるのを待つしかないのだろうか。
そう思っていた、ある日。シンシア嬢の成人を祝う夜会が開かれると聞き、兄のイアンが騎士達を招待していた。
そこにたまたま私が出くわした。
「あっ!!副団長も宜しければ参加していただけませんか?」
私はニヤつきそうになる顔を引き締め、何食わぬ顔をして参加を表明した。
◇◇◇
夜会の前日、私はイアンと共に男爵邸を訪れた。
本当は夜会当日に訪れる予定だったのだが、どうしても先にシンシア嬢に挨拶をしておきたいと私が申し出たからだ。
応接室で外を眺めながらお茶を飲んでいると枝の合間から人の足が見えた。
驚いた私は窓から飛び降り、足の見えた木へと急いだ。
すると何やら揉めている様な声が聞こえてきた。聞き耳を立て聞いてみると、侍女らしき者が木の上に向かって「お嬢様」と声をかけている。
(この屋敷のお嬢様と言えば……)
そう思っていたら、侍女の悲鳴が聞こえたので思わず体が動いた。
私の中に落ちてきたのは間違いなく、シンシア嬢だった。
初めて会った時と変わらぬ可愛らしい容姿に、私の腕の中にすっぽりと収まる小柄な体。
ずっと会いたいと思っていた女性が今腕の中にいる。そう思っただけで全身の血が沸騰したように熱くなった。
シンシア嬢は私の顔を見て驚いていたが、何故か私ではない者を見ているようにも思えた。
正気に戻ったシンシア嬢は慌てて私の腕から下りると、侍女を連れて一目散に逃げて行った。
私はその姿を追わなかった。追わずともすぐに会える事を分かっていたから。
(次に会った時に何を話そうか)
そんな事を考えていたのに、部屋で会ったシンシア嬢は私の顔を見るなり信じられない者を見るような顔をした。そして、必死に私を歓迎しているフリをしている。
シンシア嬢は私の事を嫌っている……
直感的にそう感じてしまった。
私は彼女に嫌われるようなことをしただろうか?いや、今日初めて言葉を交わした。では、何が……
「シンシア!!」
イアンの叫び声で我に返った私が見たものは、真っ青な顔をして気を失っているシンシア嬢だった。
◇◇◇
私はシンシア嬢の目が覚めるまで、この男爵邸に滞在させてもらうことにした。
イアンは「何日滞在してくださっても結構ですよ!!」と言ってくれたので、有難くそうさせてもらうつもりだ。
結局、シンシア嬢の目が覚めたのは次の日の夜会当日だった。
私は自分の屋敷の庭園から摘み取った薔薇の花束を手に夜会会場へとやって来た。
ゆっくり会場へ足を踏み入れると、会場の中心に一際光を放っている令嬢がいた。
息を飲むほど美しいとはこの事なのだろう。
私はその美しい令嬢……シンシア嬢に花束を贈った。
その時、一瞬手が触れてしまった。シンシア嬢は慌てて手を引っ込め、形ばかりのお礼を口にしていた。
私は何とか距離を縮めたいと思っていたが、シンシア嬢は違った。見知らぬ男に肩を抱かれ、安心し切ったような表情。
そんな表情も出来るのか……私の知らない表情を見せてくれるシンシア嬢の事が益々気になった。
(二人きりで話せないだろうか……)
辺りを見渡すと、既にシンシア嬢の姿はなかった。
きっと逃げたのだろう。
「ふふっ」と思わず笑みがこぼれた。
私は女性に追われる事はあっても追ったことは一度もない。
そんな私が女性を追う側になるとは思いもしなかった。
(追う側も案外嫌いじゃない)
そして見つけたのは昨日シンシア嬢が落ちてきた木の上。
どうやらこの木がお気に入りらしい。
私を見つけたシンシア嬢はそれはそれは怪訝な顔をしていたが、木の上は危ない。
私はすぐに下りるよう言ったが、そんな事を聞くような令嬢じゃない事は知っていた。
仕方なく、私がシンシア嬢の元へ行くことにした。
木の上から見渡した景色はとても素晴らしいものだったが、シンシア嬢の返事は相変わらず素っ気ない。
そこで私は確信を付いた。
「シンシア嬢は私を嫌ってますよね?」
すると、分かりやすく顔色が変わった。
その様子に思わず笑みがこぼれた。
そして、私が何をしたのか原因を聞き出そうと詰め寄った。
「私は貴方のことを知りたい」と……
すると、シンシア嬢から黒い靄のようなものが現れ、私の体を締め付けた。
(なんだこれは!?)
振りほどこうにも振り解けない。
こんなモノ初めて見た。シンシア嬢は一体何者なんだ!?
そう思いシンシア嬢の方を見ると、思わずゾクッとした。
妖艶な雰囲気を漂わせ、こちらを見る女性が人とは違う何かに見えた。
そして、語られたのは私の祖父を恨んでいると……その面影が似ている私を嫌っていると言った。
正直、私も知らない祖父のことを何故、私よりも若いシンシア嬢が知っているのか不思議に思ったが、今私の身に起こっている現実がその不思議をかき消した。
誰にも言えない秘密を抱えている。そう思った。
全てを話終えると私は解放され、シンシア嬢は私に警告してその場を去っていった。
「──はぁ、参った」
ドカッとその場に腰を下ろし、今あったことを思い返した。
貴方は、祖父に似ている私を嫌っているのか……一体何があったんだ……?
私は貴方を知りたいと思う気持ちはより強くなった。
直せる部分は直そう。だから、私に本当の貴方を教えてくれ……貴方の事が知りたいんだ……そして、私の事を──……
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