悪霊令嬢、渋々生まれ変わったら悪霊になるきっかけになった元婚約者の孫に溺愛されました

甘寧

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貴方が神様?肥満白スズメの間違いじゃないの?

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次の日、変わり果てた姿で見つかったダロンに屋敷中大騒ぎになった。

継母と義姉は私の仕業だと騒ぎ立てていたが、元より死んでいる人間に犯行は不可能とされ、屋敷中事情聴取が行われたが犯人は見つからずじまい。

──当たり前だ。私が殺ったんだから。

しかし、継母と義姉は私の仕業だと疑い、警戒していた。
各国から魔術師を呼び寄せ護符やら壺やら魔除に聞くと言われれば藁にもすがる思いで買い漁った。

「そんなもの私には効かないわよ。それよりも、そんなくだらないモノ買う為にお父様の働いたお金が消えている事の方が問題ね」

そう思い、その日の夜、継母の部屋と忍び込んだ。
ぐっすり眠っている継母の夢の中に入り込みをしてあげた。

「あんた達が思っている通りダロンを殺ったのは私よ。あの男、私を騙してたみたいだから死んで当然でしょ?……あぁ、そう言えばあんたも私を上手く騙してくれたわよね?すっかり騙されてたわ。でも、まあ、少しの間でも私の母を演じてくれたんだからお礼はしなきゃね」

笑顔を作り淡々と話す私に対し、継母は自分が思っていた通りダロンを手にかけたのが私だと知り、次は自分の番だと思った継母は真っ青になり震え始めた。

「ご、ごめんなさい!!本気で騙してた訳じゃないの!!自分の娘が可愛くてつい、出来心なの!!」

その場にしゃがみこみ、必死に言い訳をしてきた。
どうせ、その言い訳も嘘。今を乗り切れば安全だと思っているのが丸見え。

で人が殺せるんでもの。大したものだわ。じゃあ、私も殺しても文句はないわよね?」

「本当にごめんなさい!!いくらでも謝るわ!!だから命だけは!!」

涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、頭を地面に擦り付け私に懇願してきた。
当然、そんな願いを聞いてやる義理は無い。

私の足元からズルと黒い靄が這い出てきて継母の身体を締め付け始めた。

ゴキッボキッと骨の折れる音と共に、継母の断末魔の叫びが響き渡った……

次の朝、ベッドの上で全身の骨を砕かれ息を引き取った継母が見つかった。
その姿を見た義姉は「次は私の番だわ!!」と泣き叫びながら暴れ回った。

「安心して。子供には罪がないから、あんたを殺すのは子供が産まれるまで待っていてあげる……まあ、私の声は聞こえてないでしょうけどね」

震えている義姉の耳元で囁いてやった。

その後の義姉は、いつ私に殺られるか昼も夜も気が抜けず眠れない日々が続き、子供が生まれる頃には精神を病んだ。
お父様はこうなっては仕方ないと、病院に入院させ、子供だけは引き取り公爵家の跡取りとして育てることにした。

「……子どもが生まれたら殺そうかと思ってたけど、死ぬよりも現実こっちの方が苦しそうだから、生かしてあげる。いつ私に殺されるか死ぬまで不安に駆られていればいいわ」

ベッドの上で焦点の合わない目をし、生きる屍と化した義姉にそう伝え、私はその日以降義姉に会う事はなかった。

そうして、十数年経っても尚、悪霊としてこの地に君臨している私は今日みたいに人の幸せを壊しながら日々を楽しんでいる。

「さぁて、次はどいつにしようかなぁ」

鼻歌を歌いながら町を浮遊してると、目の前に丸々太った白い雀が私の前に立ちはだかった。

「なぁに?丸々肥えてて美味しそうね。でも、今は食べなくても死なないから見逃してあげる。まあ、元々死んでるからお腹すかないんだけどね」

ジッと私を見つめるスズメの瞳には何故か威圧感があった。

「──お前がカロリーナか?」

いきなりスズメが話しかけてきて驚いた。

「私は天界の者。地上の者は私の事を神と呼ぶ」

「神様!?」

えっ?神様って美丈夫で神々しい感じじゃないの?
目の前にいるのは、どう見ても丸々太った肥満体型の白いスズメ……

そう思いながらまじまじと目の前の小動物に目をやる。

「お前が何を考えているのかよく分かるが、私にも私の事情というものがあるのだ」

どんな事情か分からないが、どうやらこの姿には理由があるらしい。
まあ、ぶっちゃけスズメだろうが人間だろうが
私には関係ない。
それより何故私のことを知っているのか、そちらの方が重要だ。

「随分とこの世で暴れてくれているらしいな。お前のせいで結ばれる縁が結ばれず天界は混乱して真っ当な業務が行えずにいる」

「おかげで私は残業三昧。上司や同僚に怒鳴られる始末だ……」ウジウジと愚痴り始めた。

あぁ、なるほどね。
こう言っちゃなんだが、私はこの世では結構有名人。
『カロリーナの呪い』と言って外で男女が仲睦まじくしていると恋人、友達関係なく呪われる。呪われたものは一生恋人はおろか、結婚することすら出来ないと評判だ。この国ならず、他国にまで広がっているんだから私って凄くない?

「そこで、私はお前を転生させる為にここに来た」

「えぇー、やだ」

こんな楽しい時間をみすみす手放すなんて馬鹿のすることだ。

それに、私はもう生身の人間に戻るなんて懲り懲り。人間に戻ればまた婚約者だ結婚だと言われるのが関の山。

「そう言うと思った……しかし、こちらとて黙っては帰れない。──二日待つ。二日経った時に答えを聞こう……因みにその時、転生を断ればお前は輪廻転生から外れる。事実上の魂の消滅だ。もう二度と生物に戻れない」

「……それって、選択肢ないよね?」

転生はしたくない。でも、消滅するのはもっと嫌だ。

「また二日後に来る。その時までに答えを考えておけ」

その一言を言い終わると、ピカッと眩い光を放ち目の前のスズメが消えた。

「──……あぁ~あ、年貢の納め時かな……」
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