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墓荒らし
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「えぇ~、では、皆の頑張りとマリーの快気祝い、婚約を祝して……かんぱ~い!!!」
本日、フェルスさんの墓で死者の方々主催の労い会です。
そうは言っても死者の方々の姿は私達には見えないので、感謝の言葉をかけようにもかけれない状態です。
その事をシャーロット様に伝えたところ「構わぬ。奴らが好きでやってる事じゃ気にする事はない」と言われてしまいました。
「……で?何で王子様がいんの?」
不機嫌な様子で仰るのはニルスさんです。
そう。ここには便利屋の皆さんは当然の事、殿下を始めとしたオスカー様、ユリウス様、マルクス様、キャリー様。更にエルさんまでおります。
「おかしな事を言うわね?こんな狼が何頭もいるとこに妻一人だけで行かせると思う?」
「まだ妻じゃないし。この国の王子って空気読めないの?」
相変わらず仲の悪いお二人です。
殿下の口調もいつの間にか元に戻っています。
──正直、こちらの方が安心します。
「だから!!邪魔だって言っ──!!」
ニルスさんが立ち上がり、殿下に掴みかかりそうになったところでクルトさんが「まあまあまあ」と何処かへ連れて行ってしまいました。
ようやくゆっくり飲めると思っていたらユリウス様が背後から抱きついてきました。
口からはアルコール臭。明らかに酔っているのが分かります。
「すまん!!これ飲ませたら一発だった!!」
ゴリさんの持っている瓶を見ると、えげつないほど酔えると有名な酒が見事に空。
「──なぁ、マリー。私と一緒にグロッサ国に行かないか?私はお前の事が……」
そこまで仰った所で、青筋を立てた殿下に襟首を掴まれ森に放り投げられておりました。
「まったく!!油断も隙もないわ!!私の妻に手を出そうなんて一億年早いわよ!!」
ブツブツ文句を言いながら、私の横に座り酒を呷る殿下をオスカー様が宥める。いつもの光景です。
周りを見れば、ゴリさんとヤンさんの飲み比べが始まっていますし、キャリー様は相変わらずゴリさんの側を離れずくっ付いています。
ルイスさんとティムさんは、シモーネさんとレナさんに絡まれ、ジェムさんは相変わらず良いように使われているようで飲む暇なく動き回っています。
シャーロット様は優雅にフェルスさんとこの様子を高みの見物中です。
賑やかですが、それが心地いい。
──ああ、幸せとはこういう事なんですね……
因みにこの宴は丸2日続きました。
◇◇◇
パンッパンッパンッ!!!
「おめでとぉ!!!」
「いや~、めでたいなぁ~!!」
花火が上がり、お祝いの言葉が途切れる事がありません。
本日は私と殿下の結婚式です。
いや、本当にやってきてしまいました……
正直、いつ婚約が破棄されるのかと待ち焦がれていたのですが、その様な事はまったくありませんでした。
「……逃げたいです……」
「何言ってんの!?やめてよ!!護衛してる僕が怒られるんだから!!」
私の呟きにすぐさま声を上げたのはエルさんです。
エルさんは、私の専属護衛となりました。
なんでも、自ら立候補したと。
私としても、よく見知った方が護衛に付いてくれる方が有難いのですが、正直な事を言えば「私に護衛は必要ですか?」と言うことですね。
自分の身は自分で守れますし、何よりも、護衛だと仰って便利屋まで付いてこられるものですから、気が休まらないのです。
「さあ、殿下がお待ちだよ」
エルさんにエスコートされ殿下の元へ。
大きな扉まで行くと、既に殿下が待っておりました。
──偽婚約者を演じた時の夜会を思い出しますね。
あの時も思いましたが、きっちり正装している殿下は普段の数倍見目麗しいです。
「相変わらず憎たらしいほど綺麗ね」
「……それは、どうもありがとうございます」
出会ったばかりの頃よく言われていた言葉です。
あの頃は、まさか自分が殿下の妻になるなど思いもしませんでした。
チラッと殿下を見ると、その顔はとても嬉しそうに微笑んでおりました。
優しく「マリー」と差し出された殿下の手を取り、扉の前へ。
「マリーの顔がみんなに見せつけられなくて残だけど、仕方ないわね」
私が結婚するにあたって殿下に幾つか契りを交わしました。
1.妃の顔は決められた人以外には見せない。
2.妃は外交、夜会などは極力出ない(出席する際は仮面必須)
3.副業を認める。
4.殿下が立て替えた借金も返済する。
そして、最後に愛人は作らない。
以上です。
これだけ見ると、私を妃にしない方がよろしいんでは?と思いますが、殿下は即断即決でした。
特に、最後の「愛人を作らない」には殿下は喜んで承諾しました。
……何故かは分かりませんが、殿下が他の女性に微笑みかけている姿に苛立つのです。
そして、私は引き続き便利屋に通うことになるので、世間に顔が割れると都合が悪いのです。
その為、今回の結婚式も顔が見えないようにベールで隠しています。
当然、文句を仰る方もおりましたが、殿下が文句を言えない様に手を回してくれた様です。
──……何をしたのかは怖くて聞けませんが。
こうして、式までに色々ありましたが、無事にこの日を迎える事が出来ました。
「……緊張してる?」
「……しない方がおかしいのでは?」
この扉を開けたら逃げれないと思うと胃がキリキリします。
──今からでも手を振り切って逃げましょうか……?
そんな思いが伝わったのか、殿下の握る手の力が強くなりました。
「……今更逃がさないぞ?」
ビクッと肩が震えました。
中々この口調に慣れてないです。
「マリー」
「……何ですか?」
ちょっと不機嫌な声で返すと、手の甲にキスを落とされました。
「──愛してる。ずっとお前が欲しかった……」
今までに無いほど真剣な顔で仰るので、顔が沸騰したかのように熱くなりました。
──ベールで隠れてて良かったです。
「さあ、行くぞ」
「えっ!?ちょっ!?待ってください!!」
──心の準備が出来てません!!
こうして、私達の結婚式は沢山の方々に祝福され……若干数名睨みつけてた方もおりますが、滞りなく終わりました。
そして──……
「マリー!!!ルイスと行ってくれ!!」
「ルイスさん、行きますよ。足でまといにならないでくださいね」
「相変わらず厳しいなぁ!!」
本日も変わらず副業に精を出しております。
借金返済総額……1千269万7900ピール
殿下立て替え額……5億6千730万2100ピール
まだまだ返済頑張ります。
──────────────────
あとがき
ここまで長々と読んでいただき本っ当にありがとうございました。
当初、こんなに長くなるとは思いもせず……
しかし、書ききったと満足感はあります。
今後も新作や番外編など、頑張って執筆を続けていく所存でありますので、これからも宜しくお願いします。
本日、フェルスさんの墓で死者の方々主催の労い会です。
そうは言っても死者の方々の姿は私達には見えないので、感謝の言葉をかけようにもかけれない状態です。
その事をシャーロット様に伝えたところ「構わぬ。奴らが好きでやってる事じゃ気にする事はない」と言われてしまいました。
「……で?何で王子様がいんの?」
不機嫌な様子で仰るのはニルスさんです。
そう。ここには便利屋の皆さんは当然の事、殿下を始めとしたオスカー様、ユリウス様、マルクス様、キャリー様。更にエルさんまでおります。
「おかしな事を言うわね?こんな狼が何頭もいるとこに妻一人だけで行かせると思う?」
「まだ妻じゃないし。この国の王子って空気読めないの?」
相変わらず仲の悪いお二人です。
殿下の口調もいつの間にか元に戻っています。
──正直、こちらの方が安心します。
「だから!!邪魔だって言っ──!!」
ニルスさんが立ち上がり、殿下に掴みかかりそうになったところでクルトさんが「まあまあまあ」と何処かへ連れて行ってしまいました。
ようやくゆっくり飲めると思っていたらユリウス様が背後から抱きついてきました。
口からはアルコール臭。明らかに酔っているのが分かります。
「すまん!!これ飲ませたら一発だった!!」
ゴリさんの持っている瓶を見ると、えげつないほど酔えると有名な酒が見事に空。
「──なぁ、マリー。私と一緒にグロッサ国に行かないか?私はお前の事が……」
そこまで仰った所で、青筋を立てた殿下に襟首を掴まれ森に放り投げられておりました。
「まったく!!油断も隙もないわ!!私の妻に手を出そうなんて一億年早いわよ!!」
ブツブツ文句を言いながら、私の横に座り酒を呷る殿下をオスカー様が宥める。いつもの光景です。
周りを見れば、ゴリさんとヤンさんの飲み比べが始まっていますし、キャリー様は相変わらずゴリさんの側を離れずくっ付いています。
ルイスさんとティムさんは、シモーネさんとレナさんに絡まれ、ジェムさんは相変わらず良いように使われているようで飲む暇なく動き回っています。
シャーロット様は優雅にフェルスさんとこの様子を高みの見物中です。
賑やかですが、それが心地いい。
──ああ、幸せとはこういう事なんですね……
因みにこの宴は丸2日続きました。
◇◇◇
パンッパンッパンッ!!!
「おめでとぉ!!!」
「いや~、めでたいなぁ~!!」
花火が上がり、お祝いの言葉が途切れる事がありません。
本日は私と殿下の結婚式です。
いや、本当にやってきてしまいました……
正直、いつ婚約が破棄されるのかと待ち焦がれていたのですが、その様な事はまったくありませんでした。
「……逃げたいです……」
「何言ってんの!?やめてよ!!護衛してる僕が怒られるんだから!!」
私の呟きにすぐさま声を上げたのはエルさんです。
エルさんは、私の専属護衛となりました。
なんでも、自ら立候補したと。
私としても、よく見知った方が護衛に付いてくれる方が有難いのですが、正直な事を言えば「私に護衛は必要ですか?」と言うことですね。
自分の身は自分で守れますし、何よりも、護衛だと仰って便利屋まで付いてこられるものですから、気が休まらないのです。
「さあ、殿下がお待ちだよ」
エルさんにエスコートされ殿下の元へ。
大きな扉まで行くと、既に殿下が待っておりました。
──偽婚約者を演じた時の夜会を思い出しますね。
あの時も思いましたが、きっちり正装している殿下は普段の数倍見目麗しいです。
「相変わらず憎たらしいほど綺麗ね」
「……それは、どうもありがとうございます」
出会ったばかりの頃よく言われていた言葉です。
あの頃は、まさか自分が殿下の妻になるなど思いもしませんでした。
チラッと殿下を見ると、その顔はとても嬉しそうに微笑んでおりました。
優しく「マリー」と差し出された殿下の手を取り、扉の前へ。
「マリーの顔がみんなに見せつけられなくて残だけど、仕方ないわね」
私が結婚するにあたって殿下に幾つか契りを交わしました。
1.妃の顔は決められた人以外には見せない。
2.妃は外交、夜会などは極力出ない(出席する際は仮面必須)
3.副業を認める。
4.殿下が立て替えた借金も返済する。
そして、最後に愛人は作らない。
以上です。
これだけ見ると、私を妃にしない方がよろしいんでは?と思いますが、殿下は即断即決でした。
特に、最後の「愛人を作らない」には殿下は喜んで承諾しました。
……何故かは分かりませんが、殿下が他の女性に微笑みかけている姿に苛立つのです。
そして、私は引き続き便利屋に通うことになるので、世間に顔が割れると都合が悪いのです。
その為、今回の結婚式も顔が見えないようにベールで隠しています。
当然、文句を仰る方もおりましたが、殿下が文句を言えない様に手を回してくれた様です。
──……何をしたのかは怖くて聞けませんが。
こうして、式までに色々ありましたが、無事にこの日を迎える事が出来ました。
「……緊張してる?」
「……しない方がおかしいのでは?」
この扉を開けたら逃げれないと思うと胃がキリキリします。
──今からでも手を振り切って逃げましょうか……?
そんな思いが伝わったのか、殿下の握る手の力が強くなりました。
「……今更逃がさないぞ?」
ビクッと肩が震えました。
中々この口調に慣れてないです。
「マリー」
「……何ですか?」
ちょっと不機嫌な声で返すと、手の甲にキスを落とされました。
「──愛してる。ずっとお前が欲しかった……」
今までに無いほど真剣な顔で仰るので、顔が沸騰したかのように熱くなりました。
──ベールで隠れてて良かったです。
「さあ、行くぞ」
「えっ!?ちょっ!?待ってください!!」
──心の準備が出来てません!!
こうして、私達の結婚式は沢山の方々に祝福され……若干数名睨みつけてた方もおりますが、滞りなく終わりました。
そして──……
「マリー!!!ルイスと行ってくれ!!」
「ルイスさん、行きますよ。足でまといにならないでくださいね」
「相変わらず厳しいなぁ!!」
本日も変わらず副業に精を出しております。
借金返済総額……1千269万7900ピール
殿下立て替え額……5億6千730万2100ピール
まだまだ返済頑張ります。
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あとがき
ここまで長々と読んでいただき本っ当にありがとうございました。
当初、こんなに長くなるとは思いもせず……
しかし、書ききったと満足感はあります。
今後も新作や番外編など、頑張って執筆を続けていく所存でありますので、これからも宜しくお願いします。
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