城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

文字の大きさ
上 下
169 / 177
墓荒らし

52

しおりを挟む
痛みが走った腹部に目をやると、ナイフが深く突き刺さっており、ズルッとファニーさんが引き抜くと止めどなく血が溢れてきました。
足を踏ん張り何とか倒れるのを防ぎましたが、やられましたね……

「ヴヴヴヴヴ~~~~」

フェンが唸りながらファニーさんを威嚇しています。

「マリー大丈夫。安心して逝って。私が美しいアンデッド人形に変えてあげる」

──この人は、私の知っているファニーさんではありません。

私はすぐに剣を抜き、ファニーさんに突きつけ戦闘態勢に入ります。
しかし、この体では持って数分ですかね……

グッと足に力を入れ、剣を抜きながらファニーさんへと斬りかかりました。
私に続いてフェンも攻撃を仕掛けています。
ファニーさんは私の剣もフェンの牙も軽々交わしています。

「……はぁ……はぁ……」

こうしている間にも私の血は流れ出て、気を抜くと意識を持っていかれそうです。
フェンが心配そうに私の元へ駆け寄ってきてくれました。

「ふふっ。きつそうじゃない?もう諦めなさいよ」

「そうはいきません。……友として必ず貴方を止めます」

そうは言ってもこのままでは、到底無理な話です。

カチャ……

無意識に腰に手が伸びるとティムさんから預かった銃に手を添えていました。
撃とうと思えば撃つタイミングはありました。

そう、例えば私の腹部にナイフを突き刺した時。
絶好のチャンスでした。
しかし、私は撃てなかった……
撃ってしまったらファニーさんは消滅してしまう。
しかし、このままでは勝ち目はない。それに、町に蔓延っている死人アンデッドもいつまで経っても元の場所に戻れません。

「ファニー!!!」

私が葛藤していると、神父様の声が響き渡りました。
後ろを振り返ると、ヨロヨロした足取りですがこちらに向かってくる姿が見えます。

「……お父さん……」

神父様の姿を見たファニーさんは一瞬、元のファニーさんの表情に戻りましたが、すぐに表情を変えました。

「……ファニー。もうやめよう。母さんの死は東の神父あいつのせいではない。お前も分かっているんだろ?」

神父様はそれは優しく、父親の顔で語りかけましたが当のファニーさんは顰め顔です。

「母さんだって、復習なんぞ望んじゃいない。あれはただの事故だったん──」

「うるさい!!!」

神父様の言葉を遮り、ファニーさんは叫びました。

「私だって……私だって分かってるわよ!!あの神父のせいじゃ無いことぐらい!!でも、誰かのせいにしてないと……どうしてもお母さんの死を受け入れられない!!」

ファニーさんの悲痛な叫びが森に響き渡りました。

「ファニー……」

「本当はこんな姿になんかになりたくなった……でも、もう私の中の黒いモノが溢れ出して止められなかった……」

ファニーさんは泣きながら父親の神父様に自分の気持ちを語りかけました。
頭では分かっていても、気持ちが追いついていかなかったのですね。

「……だからね。私ね、決めたの。大切な人は一生傍に置いておけばいいって」

そう言って、ファニーさんの後ろから現れたのは……

「お前は!!!」

「どう?お母さんと久々の再会は?」

ファニーさんのお母様でした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

処理中です...