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墓荒らし

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『……疲れた』

アンデッドが消滅したのを確認すると、ヤンさんはその場にドサッと腰を落としました。
私は横へと行き「お疲れ様でした」と労いの言葉をかけるとヤンさんは「ふっ」と微笑んでくれました。
今回の件で大分ヤンさんの表情が豊かになったのは歓喜深いです。

そして、ヤンさんの視線はゴリさんの方へ……

「……ゴリさん……大丈夫ですよね?」

私がゴリさんを心配し、ヤンさんに声をかけると『あぁ。俺らのボスは思っている以上に強い』との回答が返ってきました。

──そうですね。ゴリさんは強いですから。

ヤンさんの言葉にホッとしつつ、私もゴリさんの方に視線を向けました。


◇◇◇

(ゴリさん視点)

「……隊長……いや、ルッツ……」

ハーヴェイは俺に鋭い目を向けてきた。

やはりハーヴェイは俺狙いだな。
まあ、狙われるのも仕方ないな。あんな別れ方したんだから。

だがあの時、こいつに俺が抜けることを言えば確実に俺に付いて来る為に隠密を辞めていた。
俺はそれだけは避けたかった。
ハーヴェイこいつは才能がある。俺に執着するだけじゃダメだ。他にも目を配らせるには必要な事だった。

──しかし、その選択は間違いだったか……

俺が何も言わずにいなくなった事で、こいつの心に傷を負わせてしまった。
そして、そのまま誤解を抱いたままこいつはこの世を去ったのだ。

──俺を恨んで当然だ。

「やあ、ハーヴェイ。久しぶりだな。しばらく見ない間に、顔色が大分悪くなったんじゃないのか?」

俺は昔のようにハーヴェイに語りかけた。
しかし、ハーヴェイはギリッと唇を噛み苛立った様子だ。

「なんでそんな普通にしていられる!?俺を裏切った事など忘れたのか!?それとも元から俺を切り捨てるつもりだったのか!?」

案の定、怒りをぶちまけてきた。

「そんな事はない。お前は今でも俺の可愛い部下だと思ってる」

「嘘だ!!!!」

そう言うなり、攻撃を仕掛けてきた。
ハーヴェイは昔から剣は上手くなかったが、銃を持たせればこの国一だと言える程の腕前の持ち主だった。
しかも、アンデッド化して動きのスピードが上がってる分タチが悪い。
だが、元部下に負ける訳にはいかん。

「いや~、こうなる事が分かってたらダイエットしといたんだけどなぁ」

現役より大分肉が付いて動きが鈍くなっているとは言え、鈍っていないはずだ。
ピュンピュン飛んでくる銃弾を剣で弾きながら、ハーヴェイを追い詰める。

ハーヴェイは俺がまだこれだけの動きが出来ることに驚いているようだった。
なんと失礼な奴だ。

「……訓練を思い出すな。なぁ、ハーヴェイ?」

一言。俺が言ったら、ハーヴェイの動きが止まった。

「……俺は……昔を思い出したくない。あんたとの思い出なんて思い出したくない!!」

見ると、ハーヴェイは泣いていた。
あぁ、俺は何て愚かだったのか……
俺がハーヴェイの為だと思ってやった事は、全てこいつを苦しめる事になっていた。

若いを俺は、奪ってしたんだ……

俺はギュッと剣を握り、ハーヴェイに向き合った。

「ハーヴェイ!!」

ワンオクトーブ落とした俺の声にビクッとハーヴェイの肩が震えた。
俺の声にビビるとは、隠密の時の癖がまだ抜ききれていないな。

そんなハーヴェイの姿に「ふっ」と笑みがこぼれた。
そして……

「すまなかったな」

俺はハーヴェイに謝罪した。
まあ、許されるとは到底思ってはいない。
すぐにハーヴェイは「ふざけるな!!!」と食ってかかってきた。

「俺が……俺がどんな気持ちだったか分かるか!?俺はあんたが目標だった!!俺はいつかあんたの隣で戦うことを夢見ていた!!それをあんたは……!!」

ハーヴェイはボロボロ泣きながら、俺に怒りをぶつけてきた。
俺は何も言わずに、素直にその言葉を受け止める。

「俺は、あんたを許さない……俺は、あんたに復讐する為に生まれ変わったんだ!!」

叫びながら再び攻撃を始めた。

──あぁ、知ってるよ。

ハーヴェイの罪は俺の罪。
終わらそう。ハーヴェイ……

ドンッ!!

「──かはっ……」

俺の剣はハーヴェイの胸を貫通させ、血が滴り落ちている。

「……ハーヴェイ。終わりにしよう……」

「……まだ……俺は……」

血を吐きながらも、俺に攻撃を仕掛けようとしてくるハーヴェイを俺は抱きしめた。

抱きしめると、体温は感じられない。やはり死人だと思い知らされた。

「……すまなかった。お前の気持ちも考えず、勝手にお前の為だと思ってしまった。その行動がどれだけお前を苦しめることになったのか、あの時の俺は気づけなかった」

俺の胸の中でハーヴェイは泣き続けている。
その頭を優しく撫でてやる。

「お前は強くなったよ。俺がいた頃よりもずっとな」

「……隊……ゴホッ!!」

苦しそうに血を吐くハーヴェイを見て、この世に存在できるのもあと少しなのだと悟った。
だから、俺はハーヴェイを抱きしめながら語り続けた。

ハーヴェイが隠密に入隊してからの事、俺にとってハーヴェイと言う人物がどれだけ誇りだったかと言う事、これから先もハーヴェイの事は忘れないと言う事を。

ハーヴェイは苦しそうにしながらも俺の顔を見上げ、そして微笑んだ。

「……ははっ……やっぱり、隊長には敵わないや……」

「ハーヴェイ……」

「……どんなに憎くても、やっぱり隊長は俺の──……」

最後まで聞き来れなかった。
言い終わる前に、ハーヴェイの体は砂になり風と共に宙に舞っていった。

──ハーヴェイ……来世で会おう。
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