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グロッサ国
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ゴリさんが真剣な面持ちで今後について話をしました。
手短に纏めると、私達の最終的な敵はゴリさんのお兄様。
毒蜘蛛の方々のアジトは把握している様ですが、お兄様の存在が掴めていないらしいです。
そして、ゴリさんから興味深い話も聞けました。
もしかしたら、毒蜘蛛の方々はお兄様に操られているんではないか……と。
正直その判断が難しいですし、操られている場合どうしたら洗脳が解けるのかも分かりません。
「私にも出来る事はないだろうか?」
レナード様もリチャードさんが殺られて黙ってはいられないご様子。
しかし、公爵様を暗殺者のあじとに連れていく訳には行きません。
ゴリさんは「いえ、貴方には危険だ。私達の寝床を用意してくれるだけで十分だ」と、伝えました。
これは大事なことです。
寝る場所がなければ野宿になります。野宿は常に気を張らねければいけないので、体が休みません。
疲れた体では本領発揮出来ませんから。
まあ、レナード様は不満の様ですが、足手まといになるだけだと理解したのか「分かった」と、納得してくれました。
「決戦は明日。今日はゆっくり休んでくれ」
「「はい!!」」
◇◇◇
次の日、身支度を整えているとレナード様の怒鳴り声が屋敷中響き渡りました。
レナード様が大声を出すなど珍しいと、使用人達も何事かと互いの顔を見合わせています。
私達も怒鳴り声の聞こえる、レナード様の執務室へ駆けつけました。
すると、レニさんを怒鳴りつけるレナード様の姿がありました。
「おいおい、何してんだ!?」
慌ててゴリさんが止めに入りますが「止めないでください!!」と、レナード様がゴリさんを振り切りました。
「いや、せめて、怒鳴っている理由だけでも教えてくれないか?」
「──レニが、リチャードの仇をとると言って聞かないんです!!」
──あぁ、なるほど……理解出来ました。
レナード様に怒鳴られたレニさんは目に涙を溜めて、レナード様を見ています。
その目は仇を打とうと闘志がみなぎっておりました。
しかし、ただの侍女でしかない彼女が仇討ちに行ったところで、返り討ちにされるのは目に見えて分かっています。
──そんな事は、当のレニさんも分かっているでしょうね。
それでも、黙ってはいられないんですよね。
育ての親が殺されたんですから。
ゴリさんも、レニさんの気持ちは分かっているので困惑しておりますね。
しかし、どうしようもありません。
正直、来られても邪魔なだけです。
「お願いします!!私も連れていってください!!」
レナード様が折れないと分かったレニさんは、標的をゴリさんに変えました。
「……すまんな。こればっかりは無理だ」
レニさんはゴリさんの言葉を聞いて、絶望の表情を浮かべました。
「いいか、リチャードの仇は俺らに任せろ。リチャードに助けて貰った、その命を粗末にするな。そもそも、リチャードはお前に仇を取って欲しいと願っていると思うか?」
ゴリさんは優しく語りかけると、レニさんは悔しそうにしながらギュッと唇を噛み締め、頬を涙が伝いました。
すると、レナード様がレニさんの肩を抱き「リチャードの分まで幸せになりなさい。お前が出来る親孝行だ」と、仰りました。
──レナード様もまた、レニさんのお兄様の様な存在ですからね。
レナード様の言葉が効いたのか、レニさんは泣きながらも屋敷に残ることを承諾してくれました。
こうして一悶着ありながらも、敵陣目指して出発することになりました。
手短に纏めると、私達の最終的な敵はゴリさんのお兄様。
毒蜘蛛の方々のアジトは把握している様ですが、お兄様の存在が掴めていないらしいです。
そして、ゴリさんから興味深い話も聞けました。
もしかしたら、毒蜘蛛の方々はお兄様に操られているんではないか……と。
正直その判断が難しいですし、操られている場合どうしたら洗脳が解けるのかも分かりません。
「私にも出来る事はないだろうか?」
レナード様もリチャードさんが殺られて黙ってはいられないご様子。
しかし、公爵様を暗殺者のあじとに連れていく訳には行きません。
ゴリさんは「いえ、貴方には危険だ。私達の寝床を用意してくれるだけで十分だ」と、伝えました。
これは大事なことです。
寝る場所がなければ野宿になります。野宿は常に気を張らねければいけないので、体が休みません。
疲れた体では本領発揮出来ませんから。
まあ、レナード様は不満の様ですが、足手まといになるだけだと理解したのか「分かった」と、納得してくれました。
「決戦は明日。今日はゆっくり休んでくれ」
「「はい!!」」
◇◇◇
次の日、身支度を整えているとレナード様の怒鳴り声が屋敷中響き渡りました。
レナード様が大声を出すなど珍しいと、使用人達も何事かと互いの顔を見合わせています。
私達も怒鳴り声の聞こえる、レナード様の執務室へ駆けつけました。
すると、レニさんを怒鳴りつけるレナード様の姿がありました。
「おいおい、何してんだ!?」
慌ててゴリさんが止めに入りますが「止めないでください!!」と、レナード様がゴリさんを振り切りました。
「いや、せめて、怒鳴っている理由だけでも教えてくれないか?」
「──レニが、リチャードの仇をとると言って聞かないんです!!」
──あぁ、なるほど……理解出来ました。
レナード様に怒鳴られたレニさんは目に涙を溜めて、レナード様を見ています。
その目は仇を打とうと闘志がみなぎっておりました。
しかし、ただの侍女でしかない彼女が仇討ちに行ったところで、返り討ちにされるのは目に見えて分かっています。
──そんな事は、当のレニさんも分かっているでしょうね。
それでも、黙ってはいられないんですよね。
育ての親が殺されたんですから。
ゴリさんも、レニさんの気持ちは分かっているので困惑しておりますね。
しかし、どうしようもありません。
正直、来られても邪魔なだけです。
「お願いします!!私も連れていってください!!」
レナード様が折れないと分かったレニさんは、標的をゴリさんに変えました。
「……すまんな。こればっかりは無理だ」
レニさんはゴリさんの言葉を聞いて、絶望の表情を浮かべました。
「いいか、リチャードの仇は俺らに任せろ。リチャードに助けて貰った、その命を粗末にするな。そもそも、リチャードはお前に仇を取って欲しいと願っていると思うか?」
ゴリさんは優しく語りかけると、レニさんは悔しそうにしながらギュッと唇を噛み締め、頬を涙が伝いました。
すると、レナード様がレニさんの肩を抱き「リチャードの分まで幸せになりなさい。お前が出来る親孝行だ」と、仰りました。
──レナード様もまた、レニさんのお兄様の様な存在ですからね。
レナード様の言葉が効いたのか、レニさんは泣きながらも屋敷に残ることを承諾してくれました。
こうして一悶着ありながらも、敵陣目指して出発することになりました。
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