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グロッサ国
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私はリチャードさんから詳しい話を聞く為、小屋の中へと招かれました。
しかし、小屋の中は荒れ放題。正直いつ倒壊してもおかしくありません。
「……こんな場所で申し訳ありません。屋敷の人間にバレると厄介なので、レニと話す時はいつもこの小屋を使わせていただいてるんですよ」
なるほど。……という事は、お二人が親子だという事は話していないのですね。
黙っているのには何か理由があるのでしょう。
それに……レニさんはリチャードさんの事を父親としての愛というより、異性としての愛というのが正しそうです……
レニさんは先ほどからリチャードさんの腕に絡みつき、私を睨み続けています。
「……まずは、私の過去からお話いたしましょう」
リチャードさんは、ゆっくり話を始めました。
「――……実は……私は元毒蜘蛛の一味だったのです」
「は?」
あまりの衝撃的な一言に私の思考が止まりました。
しかし、それと同時にリチャードさんの隙のない振る舞いや威圧感の正体が分かりました。
「私は毒蜘蛛でNO.3に入る腕前で、沢山の人を殺めました。その当時の私は人を殺す事になんの迷いもありませんでした。――しかしある日、このレニを見つけたんです……」
リチャードさんは昔を思い出しながら、レニさんを見つめていました。
レニさんも同様に思い出しているのでしょう。顔が強張っています。
「この子……レニは、当時6歳で本当の両親に捨てられ、犬と暮らしていたんです。私が近づくとその犬がレニを守るように吠えましてね。思わず、首をはねてしまって……」
レニさんを見ると、目にいっぱいの涙を溜めていました。
──6歳の子の目の前で首を撥ねるとは……しかも、育ての親のような存在を……
レニさんはここに辿り着くまで、色々な葛藤があった事でしょう。
「その犬の亡骸に縋って泣いていたレニでしたが、私に向かって刃を向けてきたんです。まだ6歳の子がですよ?私は当然、刃を蹴り落としレニの首を絞めつけました。しかし、この子は首を絞められても尚、私を睨んできたんです」
親を殺された仇を討とうとするその行動力素晴らしい。
さらに自分も殺されかけいる状況でも、犯人に屈しないとは6歳の子とは思えぬ精神は完璧です。
うんうん。と私が頷きながら話を聞いていると、リチャードさんは更に話を進めます。
「その瞳に強く惹かれましてね。……思わず手を緩めたんです。そして、この子の将来を見て見たくなり引き取る事にしたんです。しかし、この子を育てる上で親の職業が殺し屋というのはどうかと思いましてね。ついに、ある日毒蜘蛛を抜ける決意をしたんです」
確かに、親が殺し屋というのは教育上もよろしくありません。
「……毒蜘蛛を抜けるというのは、死を意味するんです。私はレニを連れて必死に逃げました。それでも昼夜構わず毒蜘蛛の奴らの襲撃を受け、私もレニも精神を病み始めてたんです。このまま二人で死んでしまおうかと思ったら、無意識のうちにレニの首にナイフを当てている自分がいたんです。そんな時、声が聞こえたんです。――……それが、レナード様でした」
リチャードさんは当時を思い出したのか「ふっ」と、微笑みながら仰りました。
「レナード様は、私がレニの首にナイフを当てているの見て、すぐさまナイフを取り上げ私の胸倉を掴み『こんな幼い子に何をしている!?』と大変お怒りで、後から来た従者に羽交い絞めにされていましたよ」
クスクス笑いながら仰っておりますが、レナード様の対応は正解だと思います。
幼い子の首に刃物を突き付けている時点で、普通ではありません。
「落ち着きを取り戻したレナード様に、これまでの経緯を説明したのです。当然毒蜘蛛の事は伏せました。ある人間たちに追われていると……レナード様は深く追求してきませんでした。そして最後まで聞き終えたレナード様はとんでもない提案をしたんです。『屋敷で働かないか』と……私は目が点になりましたね。会って初日で身元が分からず、更に追われている人間を屋敷に招き入れる人間がいるでしょうか?」
──いません。
「当然断りましたが、レナード様は『今、人手不足だから』と一歩も引かなかったんです。更に『君は、この子の事を考えているのかい?ずっとこのままでいいと思っているのかい?』と言われてしまって、私は返す言葉がありませんでした。ふと、レニを見れば痩せ細り汚れで真っ黒。更にボロボロの髪でとても女の子には見えませんでした。その姿を見て、私はレナード様の元へ行くことに決めたのです。それと同時に、この方に一生尽くすという誓いも立てました。……まぁ、私の自己満足ですがね」
なるほど。その様な経緯で、レナード様のお屋敷にいるのですね。
こうして、私は黙ってリチャードさんの話を聞き終えました。
しかし、小屋の中は荒れ放題。正直いつ倒壊してもおかしくありません。
「……こんな場所で申し訳ありません。屋敷の人間にバレると厄介なので、レニと話す時はいつもこの小屋を使わせていただいてるんですよ」
なるほど。……という事は、お二人が親子だという事は話していないのですね。
黙っているのには何か理由があるのでしょう。
それに……レニさんはリチャードさんの事を父親としての愛というより、異性としての愛というのが正しそうです……
レニさんは先ほどからリチャードさんの腕に絡みつき、私を睨み続けています。
「……まずは、私の過去からお話いたしましょう」
リチャードさんは、ゆっくり話を始めました。
「――……実は……私は元毒蜘蛛の一味だったのです」
「は?」
あまりの衝撃的な一言に私の思考が止まりました。
しかし、それと同時にリチャードさんの隙のない振る舞いや威圧感の正体が分かりました。
「私は毒蜘蛛でNO.3に入る腕前で、沢山の人を殺めました。その当時の私は人を殺す事になんの迷いもありませんでした。――しかしある日、このレニを見つけたんです……」
リチャードさんは昔を思い出しながら、レニさんを見つめていました。
レニさんも同様に思い出しているのでしょう。顔が強張っています。
「この子……レニは、当時6歳で本当の両親に捨てられ、犬と暮らしていたんです。私が近づくとその犬がレニを守るように吠えましてね。思わず、首をはねてしまって……」
レニさんを見ると、目にいっぱいの涙を溜めていました。
──6歳の子の目の前で首を撥ねるとは……しかも、育ての親のような存在を……
レニさんはここに辿り着くまで、色々な葛藤があった事でしょう。
「その犬の亡骸に縋って泣いていたレニでしたが、私に向かって刃を向けてきたんです。まだ6歳の子がですよ?私は当然、刃を蹴り落としレニの首を絞めつけました。しかし、この子は首を絞められても尚、私を睨んできたんです」
親を殺された仇を討とうとするその行動力素晴らしい。
さらに自分も殺されかけいる状況でも、犯人に屈しないとは6歳の子とは思えぬ精神は完璧です。
うんうん。と私が頷きながら話を聞いていると、リチャードさんは更に話を進めます。
「その瞳に強く惹かれましてね。……思わず手を緩めたんです。そして、この子の将来を見て見たくなり引き取る事にしたんです。しかし、この子を育てる上で親の職業が殺し屋というのはどうかと思いましてね。ついに、ある日毒蜘蛛を抜ける決意をしたんです」
確かに、親が殺し屋というのは教育上もよろしくありません。
「……毒蜘蛛を抜けるというのは、死を意味するんです。私はレニを連れて必死に逃げました。それでも昼夜構わず毒蜘蛛の奴らの襲撃を受け、私もレニも精神を病み始めてたんです。このまま二人で死んでしまおうかと思ったら、無意識のうちにレニの首にナイフを当てている自分がいたんです。そんな時、声が聞こえたんです。――……それが、レナード様でした」
リチャードさんは当時を思い出したのか「ふっ」と、微笑みながら仰りました。
「レナード様は、私がレニの首にナイフを当てているの見て、すぐさまナイフを取り上げ私の胸倉を掴み『こんな幼い子に何をしている!?』と大変お怒りで、後から来た従者に羽交い絞めにされていましたよ」
クスクス笑いながら仰っておりますが、レナード様の対応は正解だと思います。
幼い子の首に刃物を突き付けている時点で、普通ではありません。
「落ち着きを取り戻したレナード様に、これまでの経緯を説明したのです。当然毒蜘蛛の事は伏せました。ある人間たちに追われていると……レナード様は深く追求してきませんでした。そして最後まで聞き終えたレナード様はとんでもない提案をしたんです。『屋敷で働かないか』と……私は目が点になりましたね。会って初日で身元が分からず、更に追われている人間を屋敷に招き入れる人間がいるでしょうか?」
──いません。
「当然断りましたが、レナード様は『今、人手不足だから』と一歩も引かなかったんです。更に『君は、この子の事を考えているのかい?ずっとこのままでいいと思っているのかい?』と言われてしまって、私は返す言葉がありませんでした。ふと、レニを見れば痩せ細り汚れで真っ黒。更にボロボロの髪でとても女の子には見えませんでした。その姿を見て、私はレナード様の元へ行くことに決めたのです。それと同時に、この方に一生尽くすという誓いも立てました。……まぁ、私の自己満足ですがね」
なるほど。その様な経緯で、レナード様のお屋敷にいるのですね。
こうして、私は黙ってリチャードさんの話を聞き終えました。
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