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グロッサ国
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「あっ!!マリー!!」
部屋に戻ろうとしていた所で、ルイスさんと合流しました。
どうやら、無事任務を終えたようですね。
「……そちらは、どうでした?」
部屋に入り、テーブルに着くなり早速情報交換です。
「どうもこうもないよ。あの子、普通に侍女の仕事こなしてておかしなとこ微塵も感じさせなかった」
ルイスさんは覆面を取りながら、話を続けました。
「……あ、でも、他の侍女とは距離を取ってるっていうか、あまり仲がいいような感じではなかったね」
ふむ。それだけでは、情報が薄いです。
ただ単に、人付き合いが苦手な方だけという可能性もありますからね。
「──で、そっちは?」
ルイスさんに問われ、私の方もリチャードさんの事を報告いたしました。
まぁ、私もルイスさんの事を言えない情報ですが……
私達二人の情報だけでは、この屋敷の方が黒かどうか確信がもてません。
とりあえず、街へ出たシモーネさん達を待つことにしました。
「……こうしているのも何ですし、お茶でも飲みますか?」
「おっ!!マリーが淹れてくれるの!?」
「えぇ。ついでですから、飲むようでしたら淹れますが?」
お茶の準備をしながらルイスさんに伝えると、ルイスさんは「飲む飲む!!」と喧しく返事を返してきました。
「──……ゴリさんさぁ、絶対俺らに何か隠してるてるよなぁ」
ボソッとルイスさんが窓の外を見ながら呟きました。
それは皆さん思っている事です。敢えて何も言わないんですよ。
「ルイスさんは、ゴリさんの秘密を知ってどうするんです?」
「そりゃぁ、困ってる様なら力になってやりたいじゃない。俺らのボスなんだし」
私も同意見です。
……ですが、他人には知られたくない事だってあるでしょう。
それを追求してはいけません。ここは忍耐です。
「どうぞ、ついでに茶菓子もありましたので、ご一緒に」
そう差し出したのは、侍女の方が用意してくれたであろうクッキーと、私が入れた紅茶です。
ルイスさんは喜んでクッキーを一口で食し、私の入れた紅茶を一気に飲み干しておりました。
──もう少し味わって頂いたらどうでしょうか?
「……んっ?……マリー、この茶葉どこにあった?」
「茶葉ですか?クッキーと一緒に用意されていたものですが?」
ルイスさんは何か気になるようで、茶葉の入った缶を開け匂いを嗅いでいます。
「……何か気になることでも?」
「うん。これ、致死量では無いけど毒入りだね」
──何と!?
ルイスさんは平然と笑いながら私に伝えてきました。
いや、ルイスさん思いっきり飲み干したんですが、大丈夫なんですか!?
「あぁ、俺は大丈夫。慣れてるからね」
私が、サァ-と血の気が引いていたのを察したらしいルイスさんが、サラっと言ってのけました。
いや、毒に慣れるとはどのような状況でしょうか?
相変わらずヘラヘラと笑いながら、話しかけてくるルイスさんの様子を見て、大丈夫だと認識しました。
「──……俺の親がさ、薬物の密売人で小さい頃から麻薬、毒物、更には幻覚剤までやらされてたからね。身体が慣れちゃったんだよ」
ルイスさんの過去を聞いて言葉を失いました。
いつも軽口を言っているルイスさんに、その様な過去があったことに驚いた一方、小さい頃から薬漬けにされていたと言う事実に衝撃を受けました。
「俺は、身体が慣れてくれたから良かったけど、親の方はね……身体が負けて、薬に徐々に蝕まれちゃってさ。最期は俺の事すら分からくなって「おまえは誰だ!」って殴られて、罵られて、殺されると思って命からがら逃げたんだ。そこで、ゴリさんに出会った」
私は黙ってルイスさんの話に耳を傾けました。
「ゴリさんは、何も言わずに俺を受け入れてくれて、暖かい飯にフカフカのベッドを用意してくれてさっ」
ゴリさん、貴方は素晴らしいお方です。
──……ただのゴリラじゃ、ありませんでした。
「まっ、その恩返しもあって、便利屋にいるんだけどね」
話し終えたルイスさんは、いつものルイスさんに戻っていました。
「暗い話聞かせてごめんよ」って申し訳なさそうに謝罪してきましたが、謝る必要はありません。
「この話はお終い!!──それより、この毒茶葉だよねぇ」
ルイスさんはパンッと一度手を叩くと、再び茶葉の缶を手に取りました。
そうですね。ルイスさんの過去の話は置いといて、この茶葉を置いた犯人を探しましょうか。
部屋に戻ろうとしていた所で、ルイスさんと合流しました。
どうやら、無事任務を終えたようですね。
「……そちらは、どうでした?」
部屋に入り、テーブルに着くなり早速情報交換です。
「どうもこうもないよ。あの子、普通に侍女の仕事こなしてておかしなとこ微塵も感じさせなかった」
ルイスさんは覆面を取りながら、話を続けました。
「……あ、でも、他の侍女とは距離を取ってるっていうか、あまり仲がいいような感じではなかったね」
ふむ。それだけでは、情報が薄いです。
ただ単に、人付き合いが苦手な方だけという可能性もありますからね。
「──で、そっちは?」
ルイスさんに問われ、私の方もリチャードさんの事を報告いたしました。
まぁ、私もルイスさんの事を言えない情報ですが……
私達二人の情報だけでは、この屋敷の方が黒かどうか確信がもてません。
とりあえず、街へ出たシモーネさん達を待つことにしました。
「……こうしているのも何ですし、お茶でも飲みますか?」
「おっ!!マリーが淹れてくれるの!?」
「えぇ。ついでですから、飲むようでしたら淹れますが?」
お茶の準備をしながらルイスさんに伝えると、ルイスさんは「飲む飲む!!」と喧しく返事を返してきました。
「──……ゴリさんさぁ、絶対俺らに何か隠してるてるよなぁ」
ボソッとルイスさんが窓の外を見ながら呟きました。
それは皆さん思っている事です。敢えて何も言わないんですよ。
「ルイスさんは、ゴリさんの秘密を知ってどうするんです?」
「そりゃぁ、困ってる様なら力になってやりたいじゃない。俺らのボスなんだし」
私も同意見です。
……ですが、他人には知られたくない事だってあるでしょう。
それを追求してはいけません。ここは忍耐です。
「どうぞ、ついでに茶菓子もありましたので、ご一緒に」
そう差し出したのは、侍女の方が用意してくれたであろうクッキーと、私が入れた紅茶です。
ルイスさんは喜んでクッキーを一口で食し、私の入れた紅茶を一気に飲み干しておりました。
──もう少し味わって頂いたらどうでしょうか?
「……んっ?……マリー、この茶葉どこにあった?」
「茶葉ですか?クッキーと一緒に用意されていたものですが?」
ルイスさんは何か気になるようで、茶葉の入った缶を開け匂いを嗅いでいます。
「……何か気になることでも?」
「うん。これ、致死量では無いけど毒入りだね」
──何と!?
ルイスさんは平然と笑いながら私に伝えてきました。
いや、ルイスさん思いっきり飲み干したんですが、大丈夫なんですか!?
「あぁ、俺は大丈夫。慣れてるからね」
私が、サァ-と血の気が引いていたのを察したらしいルイスさんが、サラっと言ってのけました。
いや、毒に慣れるとはどのような状況でしょうか?
相変わらずヘラヘラと笑いながら、話しかけてくるルイスさんの様子を見て、大丈夫だと認識しました。
「──……俺の親がさ、薬物の密売人で小さい頃から麻薬、毒物、更には幻覚剤までやらされてたからね。身体が慣れちゃったんだよ」
ルイスさんの過去を聞いて言葉を失いました。
いつも軽口を言っているルイスさんに、その様な過去があったことに驚いた一方、小さい頃から薬漬けにされていたと言う事実に衝撃を受けました。
「俺は、身体が慣れてくれたから良かったけど、親の方はね……身体が負けて、薬に徐々に蝕まれちゃってさ。最期は俺の事すら分からくなって「おまえは誰だ!」って殴られて、罵られて、殺されると思って命からがら逃げたんだ。そこで、ゴリさんに出会った」
私は黙ってルイスさんの話に耳を傾けました。
「ゴリさんは、何も言わずに俺を受け入れてくれて、暖かい飯にフカフカのベッドを用意してくれてさっ」
ゴリさん、貴方は素晴らしいお方です。
──……ただのゴリラじゃ、ありませんでした。
「まっ、その恩返しもあって、便利屋にいるんだけどね」
話し終えたルイスさんは、いつものルイスさんに戻っていました。
「暗い話聞かせてごめんよ」って申し訳なさそうに謝罪してきましたが、謝る必要はありません。
「この話はお終い!!──それより、この毒茶葉だよねぇ」
ルイスさんはパンッと一度手を叩くと、再び茶葉の缶を手に取りました。
そうですね。ルイスさんの過去の話は置いといて、この茶葉を置いた犯人を探しましょうか。
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