城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

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グロッサ国

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「……その手紙は本物?ここの使用人奴らが仕組んだ物じゃないの?──もしくは、公爵の自作自演とか?」

ティムさんが推察し、それをゴリさんに伝えました。

「─……確かにその説も充分考えれるが、今はまだ確信がない」

ゴリさんが頭を抱えながら仰りました。
相手の狙いが自分ゴリさんだと判明した事で、私達を巻き込んでしまったと言う罪悪感があるのでしょう。

まぁ、悩んでいても後の祭りです。
こうやって足を突っ込んでしまったのですから、最後までお供します。

「…………」

「『何、らしくないつらしてんだ?お前らしくない』と、申しております」

「そうね。後悔先に立たずよ」

「……そもそも、罠だと分かってて乗り込んできたんじゃないの?標的がゴリさんだって分かった所で、僕らはなんの問題もないよ」

ヤンさんに続き、シモーネさん、ティムさんがゴリさんを慰めてました。

ゴリさんはようやく顔を上げ「お前ら……」と一言言うと、顔を思いっきりバチンッと両手で叩きました。

あまりの出来事にギョッとしていると「よし!!」と、両頬を赤くしたゴリさんが立ち上がりました。

──どうやら、吹っ切れた様です。スッキリとした顔になりました。

「お前らの言う通りだ。悩むのは俺らしくないな」

ゴリさんはヤンさんとティムさんの肩を組みながら、ニカッといい笑顔で仰りました。

これでこそ、便利屋です。

そう思った矢先「コンコン」とドアがノックされ、リチャードさんと数人の侍女の方がお見えになりました。

「お待たせ致した。お部屋のご用意が出来ました」

私達はリチャードさんの後に付いて、用意された部屋と向かいました。

用意された部屋は三部屋。
これは、誰と同室になるか揉めそうです……

当然、私とシモーネさんが同室なのは決定事項。
残された男性陣五名は、クジで部屋割りを決める事にしました。

その結果は……──

「なんで俺がゴリさんと同室なの!?」

「クジで決まったんだから、文句なしだよ」

ルイスさんと、ゴリさん。ヤンさんとジェムさん、ティムさんと言う組み合わせになりました。

「ゴリさんのイビキで俺、寝れないじゃん!!こう見えてデリケート体質なんだけど!?」

「ルイスがデリケートなら、世の中の人間全員デリケートだよ」

ルイスさんはクジのやり直しを要求しておりますが、ティムさんがそれを認めません。

「じゃあ、ティムが部屋を変わってくれよ!!」

「なんで?僕はヤン達と同室に不満はないよ?」

「俺があるんだよ!!」

ルイスさんはゴリさんとの同室が相当嫌な様ですね。

確かに、ゴリさんのイビキは少々堪えますが、クジで決まった以上諦めるしかありません。

──恨むなら、ご自身のクジ運の悪さを恨みなさい。

「おいおい、さっきから黙って聞いてりゃ、言いたい放題だな?」

おやおや、揉める原因となった張本人のゴリさんが見兼ねて声を掛けましたね。

「おい、ルイス。俺と同室になれば特典が付くぞ?」

ゴリさんはニヤッとしながら、一冊の本を取り出しました。

「──えっ!?……もしかして、それは……!?」

「あぁ。──……今夜は寝れなくなるかもなぁ~」

ルイスさんは、ゴリさんの出した本に釘ずけです。

それもそのはず、表紙の色を見ればその本がどのような本か一目瞭然。

文芸は緑、経済は青、歴史は黒、そして、卑猥な本は赤です。

そして、ゴリさんが手にしているのは当然、赤色の表紙。

「やぁね。これだから男は……」と、汚物を見るような目でシモーネさんがお二人を見ていますが、私は知っています。

あの本は、ルイスさんが期待している様な如何わしい本ではありません。
あの本は『猿でもゴリラになれる!?この一冊で貴方もゴリラに』と言う、ゴリさん愛読本です。

私はゴリさんが出発前に表紙だけ替えていたのを目撃していたのです。

そんな事をつゆ知らぬルイスさんは、意気揚々とゴリさんと同じ部屋に消えていきました。

その後「騙された----!!!!」と、ルイスさんの叫び声と共に、豪快なゴリさんの笑い声が夜中まで響き渡りました。
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