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グロッサ国

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着いた先は、立派な門を構えたお屋敷でした。
どうやらここが、ウィルソン公爵邸のようです。

──流石は、公爵家と言う所でしょうか。

私達が馬車を降りると、チャールズさんが「こちらです」と、先導して屋敷の中に入って行きます。
外観もさることながら、中の造りも立派です。

ジェムさんなどキョロキョロと落ち着きがないので、ヤンさんに「落ち着け」の意味を込めた拳骨をもらっていました。

「こちらで少々お待ちください」

通された部屋へ入ると広々としていて、お高そうな調度品が沢山飾られています。
シモーネさんは、目を輝かせて見ておりましたが「……盗むなよ」とゴリさんに釘を刺され、出ていた手を急いで引っ込めていました。

そして、部屋の真ん中にあるソファーに座り、公爵様が来るのを待っておりますが、このソファーの座り心地の良い事。
ベッドとして使用したいぐらいです。

コンコン

「お待たせしてすみません。私がこの屋敷の当主、レナード・ウィルソンです」

現れたのは、想像していたより歳若い男性でした。

当主と聞いていたので、年配の方を想像しておりましたが、ゴリさんと差程変わらなそうですね。

「私はこの便利屋を仕切っているルッツと申します。──早速ですが、ご依頼の件をお聞きしても?」

ゴリさん、仕事モード突入です。
当然、私達も一緒に話を聞きます。

「えぇ、そうですね」

レナード様はそう言うとソファーに腰掛け、一通の文を差し出してきました。

「まずは、こちらに目を通して頂けますか?」

ゴリさんが代表して文を手に取り、読み始めました。
暫くすると、ゴリさんの顔が曇りました。

「……これは、何処で?」

「これは扉に挟まっていたのを侍女が発見し、リチャードが私の元に持ってきた物です」

「そうですか……」と、ゴリさんが返事をしながら、文をレナード様へと返しました。

私達には何が書かれていたのか分かりませんが、あまり喜ばしい事では無いことは確かですね。

「先に渡しておいた金額で足りないようであれば、仰ってください。すぐに用意致しますので、私の依頼を引き受けて頂けないでしょうか?」

レナード様は私達に向かって、深々と頭を下げなら仰りました。

この方、大変太っ腹ですね。
これは、借金を一気に返済出来るチャンスでは?

私は脳内で小躍りしながら、ゴリさんの回答を待っていました。

「……正直、あまり受けたくない依頼ですが、ウチの従業員ヤツらは既にやる気らしいんですわ」

「それでは!?」

「えぇ、引き受けましょう」

ゴリさんはレナード様と笑顔で手を握り合いました。

そもそも、元から断るつもりありませんでしたよね?
殺るつもりで乗り込んで来てますよね?

「では、部屋を用意致しますので、少々お待ちください」

そう言うと、レナード様は部屋を後にして行きました。

残された私達はすぐさまゴリさんに向き合い、尋問を開始します。

「さっきの手紙、何書かれてたの!?」

「……別に普通の脅迫文だ」

シモーネさんの質問に、あっさり答えが返ってきましたが、それはおかしいですね。
ただの脅迫文如きで、ゴリさんの顔色が変わるはずありません。

「…………」

「『ちゃんと説明しろ』と、仰っております」

ヤンさんに睨まれたゴリさんは、仕方ないとばかりに話してくれました。

その内容は……

「この屋敷の当主、レナードは命を狙われている。屋敷の者はすぐに逃げろ。巻き添えなるぞ。──それでも、生き残りたいのならば、エンバレク国のルッツを頼るがいい」

と、これが文の内容らしいです。

ふむ。この文の主はゴリさんの事をご存知の様です。
……と言う事は、ゴリさんを誘き出す為の罠でしたか。
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