城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

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グロッサ国

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本日はゴリさんから緊急召集があり、急遽侍女の仕事をお休みして『マム』にやって来ました。

──これでくだらない話だったら、ただではおきませんよ!!

私はそう思いながら、すぐに便利屋のある地下へ行き扉を開けると、ズーンと重たい空気が漂いました。

「──……どうしたんです?何方かのお葬式ですか?」

「……マリーか……」

おや?ゴリさん、心無しか少々やつれてますか?

ゴリさんの様子を見る限り、只事でないことは察しました。
私は大人しく席につき、黙ってゴリさんの話を聞くことにしました。

「……この間の、ネリの件覚えているか?」

「えぇ、それは勿論」

「そこで奴隷商人に雇われた奴らは?」

「……勿論、覚えておりますが?」

「そいつらの事を、僕が少し調べたんだよ」

ゴリさんからティムさんに話し手が移りました。

「そいつら、結構名の売れた暗殺一味だったんだよ。……ヴェノマススパイダーって知らない?」

ティムさんが私に問い掛けてきましたが、私は聞いたことありません。

「その一味の名前だよ。ヴェノマススパイダー。通称、毒蜘蛛さ」

ティムさんが丁寧に説明してくれました。
なるほど、あの方達は組織の人間でしたか。

──……と言うことは、十番目と言うのは強さを表していたのでしょうか?

「……その毒蜘蛛の奴らが、どう言う訳だか便利屋うちに目を付けたんだよ」

まあ、お二人の方はゴリさんとヤンさんに倒されましたからね。残りのお二人は自業自得でしたが……
それだけ、大きい組織なら少なからず目をつけるでしょう。

「まあ、そこまでは大体予想はしていたんだがな。──マリー。グロッサ国は知ってるか?」

ゴリさんに再び移りました。
ゴリさんは肘をつきながら、私に問い掛けてきす。

グロッサ国は海を渡った大国ですね。
それぐらい、私でも存じてます。

「──この間の馬車、グロッサ国の国章が入った剣があった。よく調べると、毒蜘蛛の奴らの武器には全て国章が掘られていた」

──という事は、あの方達はグロッサ国出身の方。毒蜘蛛のアジトはグロッサ国と言うことでしょうか?

「──……それでな、グロッサ国のとある貴族が、俺らに護衛を頼んできた……」

ゴリさんは思わず目を伏せてしまいました。

それは、なんと言うか、タイミングがいいと言うか、嵌める気満々と言うか……

「ねぇ~、100パー罠だと思うでしょ~?」

シモーネさんが、爪を磨きながら私に同調を求めて来ました。
確かに、100パーセントとは言いきれませんが、99パーセント罠ですね。

──なるほど、この重苦しい空気の原因はこれでしたか。

「しかも、前金として結構な額貰ったのよ」

シモーネさん、それは本当ですか!?

慌ててゴリさんの方を向くと、ゴリさんは黙って首を縦に振り「そこを見ろ」とばかりに指を指しました。
その場所を見ると、大きな木箱が置いてあり、ゆっくり中を覗くと、なんと!!木箱いっぱいのお金が!!

──こんな額、見たことありません!!

この木箱一つで借金の半分以上は返せそうな額です。
しかし、あまりの額の多さに不信感が更に募りますね。

「……罠だと知りながら敵陣に踏み込むのは、お前達の安全が保証出来ん。だが前金を貰っている以上、行かねばならん。そこで、俺だけで行く事にする……」

ゴリさんは、私達の身の安全を心配して一人で敵陣に乗り込むと仰りました。

ゴリさんは未だに肘を付きながら目を伏せています。
私はシモーネさん達を見ると、ティムさんが目配せして来ました。

──なるほど……

私が首を大きく縦に振ると、それを合図にヤンさんが動き、力一杯ゴリさんの背中を叩きました。

バチーーンッ!!といい音と共に「いってぇぇぇ!!!」と言うゴリさんの声が響き渡りました。

「てめぇ!!ヤン!!何しやがる!?」

ゴリさんは椅子から立ち上がり、ヤンさんの胸ぐらを掴みました。

「…………」

「『柄にもなく何、格好つけようとしている?俺達は仲間だろ?』と、申しておりますが」

「そうだねぇ~、ゴリさん一人だけ行かせたら夢見が悪そうだし」

「私、グロッサ国で流行ってる化粧品欲しいのよねぇ」

ティムさんとシモーネさんがヤンさんに続きます。
ゴリさんは、目が点になりその場には立ちすくしておりますね。

「俺は、兄貴とならどこまでも行きます」

「まあ、社員旅行としていいんじゃない?」

ジェムさんはヤンさんが一緒なら、地獄の果てだろうが付いてくるのは知っています。
更にルイスさんも立ち上がり、ゴリさんの肩に手を回しながら、にこやかにゴリさんに物申しております。
ゴリさんは「お前ら……」とボソッと言うと目頭を抑えておりました。

──鬼の目にも涙なんとやらですね。まあ、それよりも……

「ゴリさん、一人で行くと言うことは、この大金は全てゴリさんの物になると言うことです。それは許しませんよ!!!」

こんな大金、今後拝めるか分かりません。
この際、多少の命の危険は目を瞑ります。

「……マリー。今、ちょっといい雰囲気だったんだけど?」

ルイスさんが呆れたように私を見ておりますが、これは大事な事です。

「あははは!!そうだな!!俺にはこの金額は多すぎる!!」

すると、ゴリさんは笑いながら豪快に私の頭をワシャワシャと撫で回してきました。

私はゴリさんを睨みつけながら、ゴワゴワにされた髪を直しました。

──……まあ、元気が戻って何よりです。

「仕方ない。ちゃちゃと終わらせて、この金でパーッと飲むか!!!」

「「おーーーー!!!」」

皆さんゴリさんの言葉に、元気よく返事を返しました。

……この方達と飲んだら、こんな大金すぐ無くなりますよ……
せめて、半分は残してください!!
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