城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

文字の大きさ
上 下
39 / 177
侍女兼便利屋

39

しおりを挟む
「……何故、貴方がここに居るんです?」

本日私は侍女の仕事がお休みなので、便利屋の仕事を確認しに『マム』に来ているのですのが、何故か私の目の前には第二王子様。
しかも、ちゃんと周りに溶け込むよう平民の格好して……

「今日君休みだろ?丁度いいから君の事を知ろうと思ってね」

……勘弁してください。貴方がいたら便利屋の仕事が出来ないじゃないですか。王城で働いている者は、副業禁止なんですよ!?

そもそも何故私の休みを把握しているのか不思議なんですが?

「……ライナー様。わざわざここまで来て頂かなくても、城で十分だと思いますが?……しかも貴方、護衛はどうしました?」

ライナー様の周りを見渡しても、護衛の方らしき人はいません。
普通であれば、2,3人の護衛が付いているはずです。
もしかしてこの馬鹿王子、一人でここまで参ったとか申しませんよね?

「え?護衛?そんなもの要らないよね。邪魔だから置いてきた」

期待を裏切らない馬鹿でした。

この方はご自分の置かれた立場をご存知なのでしょうか?
いつ何処で命を狙われるか分かりませんよ!?
馬鹿でも一応肩書きは第二王子ですんですよ!?

呑気にこちらを笑顔で見てくるライナー様を見ていたら、頭が痛くなってきました。

「……おい。マリー、ちょっと……」

私を呼んだのは、ゴリさん。
柱の影から手招きしていますが、あれで隠れているつもりでしょうか?体が大きいので隠れきれていません。

私はライナー様を席に残し、ゴリさんの元へ。

「お呼びですか?」

「……お前、あれ第二王子だろ?なんでこんな所にいるんだよ」

それは私が聞きたいです。

とりあえず、ゴリさんに先程ライナー様との会話をお伝えました。
私の事を知りたいらしく、護衛もつけずにここまでやってきたと……
すると、ゴリさん。頭を抱え大きな溜息を吐きました。

「……マリー。お前、今日はライナー殿下の護衛兼付き人をやれ」

なんと!!馬鹿王子の子守りですか!?
せっかくの休みを子守りに費やすのですか!?

ゴリさんは「お前に会いに来たんだろ?責任持てや」と半ば投げやりです。

……殿下、話が違いますよ?これでは話し相手じゃありません。子守り役です。これは、早急に苦情を入れなければいけません。

「ねぇ、話は終わった?僕、待ちくたびれちゃったんだけど」

「うおっ!!!」

ひょこっと顔を出したライナー様に、ゴリさんが驚き飛び退きました。

「……あ、ああ、今、終わった所です」

そう言うなり、ゴリさんは私をライナー様の方へ押し出そうと背中を押してきました。

──ここで負ける訳にはいきません!!

一生懸命足を踏ん張り、その場から離れないようにしていましたが、ゴリさんに襟元を掴まれ抵抗虚しくライナー様の元へ……

「ふ~ん。君は僕が何者か分かってるんだ」

「ええ。ですから今日一日、マリーはライナー殿下の付き人に任命しました。ご自由にお使いください」

ゴリさん!?その言い方は色々と誤解を招きますよ!?

「ほら、マリー。町を案内してやれ。……多分、殿下は金を持っていないだろうから、これも持ってけ。小遣いだ」

そっと、ゴリさんから手渡されたのは、1000ピール……

「……あの、これ二人分ですか?」

「当たり前だ。マリーならこれで十分だろ?」

いくらなんでも少なすぎませんか?
子供じゃないんですよ?

……もしかしてゴリさん、飲みすぎて金欠ですね!?

だからあれ程、お給金の管理はしっかりしなさいと申してましたのに……。

「ほら、早くしろ。ライナー殿下がお待ちだ」

私は先に外へ出たライナー様の所まで、ゴリさんに引きずられて行きました。

……仕方ありません。大したモノは買えそうにありませんが、我慢しましょう。

「……くれぐれも、気をつけろよ。色んな意味で……」

ライナー様に引き渡される瞬間、ゴリさんがボソッと私に耳打ちしてきました。

ああ、私の貞操はライナー様を殴ってでも守りますから大丈夫です。

──と言うか、既に実行済みです。

「では、ライナー様。仕方ないので、本日一日お供させて頂きますが、くれぐれも迷子にならない様お願いします」

「今日の僕はお忍びなんだよ?敬称はなし!!僕の事はレナーって呼んでよ。僕もマリーって呼ぶから」

眩しい程の笑顔にウィンク付きで、ライナー様が申しておりますが、お忍びだろうと何だろうと王子は王子です。

「……それは無理──」

「はい!!決定!!じゃあ、行くよ!!」

有無を言わせぬ所はご兄弟ソックリですね……

こうして、ライナー様との町散策が始まりました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

処理中です...