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侍女兼便利屋
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「……何故、貴方がここに居るんです?」
本日私は侍女の仕事がお休みなので、便利屋の仕事を確認しに『マム』に来ているのですのが、何故か私の目の前には第二王子様。
しかも、ちゃんと周りに溶け込むよう平民の格好して……
「今日君休みだろ?丁度いいから君の事を知ろうと思ってね」
……勘弁してください。貴方がいたら便利屋の仕事が出来ないじゃないですか。王城で働いている者は、副業禁止なんですよ!?
そもそも何故私の休みを把握しているのか不思議なんですが?
「……ライナー様。わざわざここまで来て頂かなくても、城で十分だと思いますが?……しかも貴方、護衛はどうしました?」
ライナー様の周りを見渡しても、護衛の方らしき人はいません。
普通であれば、2,3人の護衛が付いているはずです。
もしかしてこの馬鹿王子、一人でここまで参ったとか申しませんよね?
「え?護衛?そんなもの要らないよね。邪魔だから置いてきた」
期待を裏切らない馬鹿でした。
この方はご自分の置かれた立場をご存知なのでしょうか?
いつ何処で命を狙われるか分かりませんよ!?
馬鹿でも一応肩書きは第二王子ですんですよ!?
呑気にこちらを笑顔で見てくるライナー様を見ていたら、頭が痛くなってきました。
「……おい。マリー、ちょっと……」
私を呼んだのは、ゴリさん。
柱の影から手招きしていますが、あれで隠れているつもりでしょうか?体が大きいので隠れきれていません。
私はライナー様を席に残し、ゴリさんの元へ。
「お呼びですか?」
「……お前、あれ第二王子だろ?なんでこんな所にいるんだよ」
それは私が聞きたいです。
とりあえず、ゴリさんに先程ライナー様との会話をお伝えました。
私の事を知りたいらしく、護衛もつけずにここまでやってきたと……
すると、ゴリさん。頭を抱え大きな溜息を吐きました。
「……マリー。お前、今日はライナー殿下の護衛兼付き人をやれ」
なんと!!馬鹿王子の子守りですか!?
せっかくの休みを子守りに費やすのですか!?
ゴリさんは「お前に会いに来たんだろ?責任持てや」と半ば投げやりです。
……殿下、話が違いますよ?これでは話し相手じゃありません。子守り役です。これは、早急に苦情を入れなければいけません。
「ねぇ、話は終わった?僕、待ちくたびれちゃったんだけど」
「うおっ!!!」
ひょこっと顔を出したライナー様に、ゴリさんが驚き飛び退きました。
「……あ、ああ、今、終わった所です」
そう言うなり、ゴリさんは私をライナー様の方へ押し出そうと背中を押してきました。
──ここで負ける訳にはいきません!!
一生懸命足を踏ん張り、その場から離れないようにしていましたが、ゴリさんに襟元を掴まれ抵抗虚しくライナー様の元へ……
「ふ~ん。君は僕が何者か分かってるんだ」
「ええ。ですから今日一日、マリーはライナー殿下の付き人に任命しました。ご自由にお使いください」
ゴリさん!?その言い方は色々と誤解を招きますよ!?
「ほら、マリー。町を案内してやれ。……多分、殿下は金を持っていないだろうから、これも持ってけ。小遣いだ」
そっと、ゴリさんから手渡されたのは、1000ピール……
「……あの、これ二人分ですか?」
「当たり前だ。マリーならこれで十分だろ?」
いくらなんでも少なすぎませんか?
子供じゃないんですよ?
……もしかしてゴリさん、飲みすぎて金欠ですね!?
だからあれ程、お給金の管理はしっかりしなさいと申してましたのに……。
「ほら、早くしろ。ライナー殿下がお待ちだ」
私は先に外へ出たライナー様の所まで、ゴリさんに引きずられて行きました。
……仕方ありません。大したモノは買えそうにありませんが、我慢しましょう。
「……くれぐれも、気をつけろよ。色んな意味で……」
ライナー様に引き渡される瞬間、ゴリさんがボソッと私に耳打ちしてきました。
ああ、私の貞操はライナー様を殴ってでも守りますから大丈夫です。
──と言うか、既に実行済みです。
「では、ライナー様。仕方ないので、本日一日お供させて頂きますが、くれぐれも迷子にならない様お願いします」
「今日の僕はお忍びなんだよ?敬称はなし!!僕の事はレナーって呼んでよ。僕もマリーって呼ぶから」
眩しい程の笑顔にウィンク付きで、ライナー様が申しておりますが、お忍びだろうと何だろうと王子は王子です。
「……それは無理──」
「はい!!決定!!じゃあ、行くよ!!」
有無を言わせぬ所はご兄弟ソックリですね……
こうして、ライナー様との町散策が始まりました。
本日私は侍女の仕事がお休みなので、便利屋の仕事を確認しに『マム』に来ているのですのが、何故か私の目の前には第二王子様。
しかも、ちゃんと周りに溶け込むよう平民の格好して……
「今日君休みだろ?丁度いいから君の事を知ろうと思ってね」
……勘弁してください。貴方がいたら便利屋の仕事が出来ないじゃないですか。王城で働いている者は、副業禁止なんですよ!?
そもそも何故私の休みを把握しているのか不思議なんですが?
「……ライナー様。わざわざここまで来て頂かなくても、城で十分だと思いますが?……しかも貴方、護衛はどうしました?」
ライナー様の周りを見渡しても、護衛の方らしき人はいません。
普通であれば、2,3人の護衛が付いているはずです。
もしかしてこの馬鹿王子、一人でここまで参ったとか申しませんよね?
「え?護衛?そんなもの要らないよね。邪魔だから置いてきた」
期待を裏切らない馬鹿でした。
この方はご自分の置かれた立場をご存知なのでしょうか?
いつ何処で命を狙われるか分かりませんよ!?
馬鹿でも一応肩書きは第二王子ですんですよ!?
呑気にこちらを笑顔で見てくるライナー様を見ていたら、頭が痛くなってきました。
「……おい。マリー、ちょっと……」
私を呼んだのは、ゴリさん。
柱の影から手招きしていますが、あれで隠れているつもりでしょうか?体が大きいので隠れきれていません。
私はライナー様を席に残し、ゴリさんの元へ。
「お呼びですか?」
「……お前、あれ第二王子だろ?なんでこんな所にいるんだよ」
それは私が聞きたいです。
とりあえず、ゴリさんに先程ライナー様との会話をお伝えました。
私の事を知りたいらしく、護衛もつけずにここまでやってきたと……
すると、ゴリさん。頭を抱え大きな溜息を吐きました。
「……マリー。お前、今日はライナー殿下の護衛兼付き人をやれ」
なんと!!馬鹿王子の子守りですか!?
せっかくの休みを子守りに費やすのですか!?
ゴリさんは「お前に会いに来たんだろ?責任持てや」と半ば投げやりです。
……殿下、話が違いますよ?これでは話し相手じゃありません。子守り役です。これは、早急に苦情を入れなければいけません。
「ねぇ、話は終わった?僕、待ちくたびれちゃったんだけど」
「うおっ!!!」
ひょこっと顔を出したライナー様に、ゴリさんが驚き飛び退きました。
「……あ、ああ、今、終わった所です」
そう言うなり、ゴリさんは私をライナー様の方へ押し出そうと背中を押してきました。
──ここで負ける訳にはいきません!!
一生懸命足を踏ん張り、その場から離れないようにしていましたが、ゴリさんに襟元を掴まれ抵抗虚しくライナー様の元へ……
「ふ~ん。君は僕が何者か分かってるんだ」
「ええ。ですから今日一日、マリーはライナー殿下の付き人に任命しました。ご自由にお使いください」
ゴリさん!?その言い方は色々と誤解を招きますよ!?
「ほら、マリー。町を案内してやれ。……多分、殿下は金を持っていないだろうから、これも持ってけ。小遣いだ」
そっと、ゴリさんから手渡されたのは、1000ピール……
「……あの、これ二人分ですか?」
「当たり前だ。マリーならこれで十分だろ?」
いくらなんでも少なすぎませんか?
子供じゃないんですよ?
……もしかしてゴリさん、飲みすぎて金欠ですね!?
だからあれ程、お給金の管理はしっかりしなさいと申してましたのに……。
「ほら、早くしろ。ライナー殿下がお待ちだ」
私は先に外へ出たライナー様の所まで、ゴリさんに引きずられて行きました。
……仕方ありません。大したモノは買えそうにありませんが、我慢しましょう。
「……くれぐれも、気をつけろよ。色んな意味で……」
ライナー様に引き渡される瞬間、ゴリさんがボソッと私に耳打ちしてきました。
ああ、私の貞操はライナー様を殴ってでも守りますから大丈夫です。
──と言うか、既に実行済みです。
「では、ライナー様。仕方ないので、本日一日お供させて頂きますが、くれぐれも迷子にならない様お願いします」
「今日の僕はお忍びなんだよ?敬称はなし!!僕の事はレナーって呼んでよ。僕もマリーって呼ぶから」
眩しい程の笑顔にウィンク付きで、ライナー様が申しておりますが、お忍びだろうと何だろうと王子は王子です。
「……それは無理──」
「はい!!決定!!じゃあ、行くよ!!」
有無を言わせぬ所はご兄弟ソックリですね……
こうして、ライナー様との町散策が始まりました。
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