城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

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侍女兼便利屋

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次の日、殿下からお呼び出しが掛かりました。
呼び出された理由は何となく分かっております。昨日のライナー様との事でしょう。

流石の私でも、少々言いすぎた感がありました。お説教は甘んじて受け入れます。

「──マリアンネ。ウチの愚弟が申し訳なかったわ……」

おや?思っていたのと違いますね。
私はてっきりお説教を聞きに参ったと思っていたのですが。

殿下は本当に申し訳ないと思っている様で、ずっと頭を下げたままです。
こんな所他の人間に見られたら、たまったものじゃありませんよ。

私はすぐに頭を上げるよう伝えました。

「殿下が謝ることじゃありません。それに、私も少々失礼な事をしたので、おあいこです」

「──あの子にはいい薬になったみたいよ。昨日私の所に駆け込んできて何言うかと思えば、『僕に靡かないなんておかしい!!』やら『兄様はあんな凶暴な女が好みなんですか!?』って言われたわよ。……マリアンネ、何したのよ?」

何かと言われれば頭突きはしましたね。罵詈雑言とまではいきませんが、それなりの暴言を吐きました。

まあ、あまり言えたことでは無いので、言葉を濁してお伝えしときます。
慰謝料請求なんて言われたらたまりませんからね。

「……まったく、あの子は昔から私のモノを欲しがるの。でも、上手くいかないからいつも癇癪起こしてねぇ」

──あの性格は生まれつきですか。
いい加減諦めたらよろしいのに……。
そもそも努力もしないで勝とうなど、言語道断。

「……マリアンネ。私のお願い聞いてくれる?」

「お断りします」

殿下のお願い事など、ろくなものじゃありません。

「そんな事言わないでよ。お給金は弾むわよ?」

いえ、これは、お給金の問題ではありません。

いいですか?この間の殿下の婚約者役やったのだって後悔しているんです!!
何故かと問われれば、使用人の間では未だに婚約者探しが密かに行われているんです!!
私は毎回気が気じゃないんです。
それでも、お金の誘惑に負けた自分が悪いと言い聞かせ、頑張っているんです。

「ライナーと友達になってくれない?」

いや、今私断りましたよね?

殿下は私の言葉を空聞かず、ご自分の願いを意気揚々と仰りました。

──殿下。お友達はお金で買うものではなく、作るものですよ?

「友達とは言わないから、話し相手位になってくれない?毎日とは言わないわ。たまにでいいのよ。……あの子の周りって、政治の駒にしか考えてない奴か、玉の輿狙いの女狐しか居ないでしょ?」

それはまた、返事に困る質問をくれましたね。

確かに、ライナー様の周りはそんな方ばかりですね。
しかし、それはライナー様にも問題があると思いますよ?

少し前まではライナー様を気にかけてくれた方もおりました。
このままではいけないと、厳しい言葉で助言していましたが、全てはライナー様の為を思っての事。
それを、ライナー様は口煩い奴はいらないと手放したのです。

その癖、周りに乗せられて次期国王になりたいなどとは……。へそで茶が沸きます。

「……あの子ね、マリアンネにきつい事言われたみたいだけど、嫌がるどころか、見返してやるって言ってたのよ。その言葉が聞けただけで、お兄ちゃん嬉しくって」

……お姉ちゃんの間違いでは?

でも私の言葉を聞いて悔しく思ったと言うのは、いい傾向ですね。
是非、見返してもらいたい所です。

「だから、マリアンネならあの子を変えてくれると思うの。お願いよ~」

いや、ですから……

「私にとっては可愛い弟なのよ。──はい、これ前金ね。期待しているわ」

殿下は私の答えを聞く前に、机の上にドンッと袋を置き、それを私に渡してきました。

──これを受け取ったらダメです。

自分に言い聞かせ、受け取らないように手をギュッと握りしめていましたが、殿下に無理やり持たされ、そのまま部屋の外へ追い出されました。

「じゃ、頼むのわねぇ」

「ちょっ!!殿下!!?」

殿下はにこやかに手を振り、ドアをバタンッと閉めました。
残されたのは、お給金の入った袋とそれを抱えた私。

仕方ありません。受け取ってしまったからには、話し相手になりましょう。

──たまにで良いと仰ってましたし、仕事に影響なければいいでしょう。

……その時の私は話し相手なのだからと、安易に考えておりました。


本日のお給金……ライナー様の話し相手役12万ピール

借金返済まで残り5億8千88万2100ピール
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