33 / 177
侍女兼便利屋
33
しおりを挟む
犯人探しをエルさんに託した私は、侍女の仕事を黙々とこなしておりました。
仕事の合間に侍女仲間の方々に盗人に心当たりはないか、何を取られたのか聞いて周りました。
ある人は、小さい頃から大切にしていたぬいぐるみ。ある人は、旦那様から貰った結婚指輪。
変わり種ですと、手枷ですとか、鎖、拳銃、呪術式が書かれた本などです。
……皆さん、割と物騒な物を仕込んでいましたね。
しかし、こんなものを盗んで目的はなんでしょうか……
まあ、エルさんが戻って来ない事にはどうしようもありません。
大人しく待つことにしましょう……
◇◇◇
エルさんを待ち続けて、気づけば日も落ち始めて薄暗くなってまいりました。
──遅いです!!あの方は何しているんですか!?サボってたらタダじゃおきません!!
卵が心配で、焦りの色が濃くなりますがどうする事も出来ません。
こんな時、私は本当に無力ですね……
思わず拳をギュッと握りました。
「マリー、ごめん!!遅くなっちゃった!!」
「エルさん!!」
ようやく待っていた人が戻ってまりました。
その腕の中には大きな卵が、割れないように布に包まれてありました。
「──その卵!!」
「ああ、マリーの大切な物ってこれでしょ?ついでに取り返しといたよ」
なんと言うことでしょう……。エルさんは犯人を特定するだけではなく、卵まで取り返してくれたなんて……
……一瞬でもエルさんを疑った私が恥ずかしいです。
「……これです。ありがとうございます。本当に助かりました」
エルさんから卵を受け取ると、私はその卵を抱きしめ、その存在を確かめました。
「へぇ、マリーでもそんな顔するんだね。ちゃんと人らしい部分もあるって分かって安心したよ」
何か、大変失礼な事を言ってますが、卵を取り返してくれたので、今回は目を瞑ります。
……しかし、次はありませんよ。
「──それで、卵があると言うことは犯人が特定出来たと思って宜しいんでしょうか?」
「うん。僕にかかれば楽勝な依頼だったね」
その楽勝な依頼にどれだけ時間かけているんです?
私がどれだけ待ったと思っているんですか。
「──犯人は、侍女のリンダだよ」
ああ、リンダさん……
何故か、納得出来ました。
その理由は、このリンダさん。少々妄想癖と言うか、虚言癖があります。一言で言うと頭のおかしい方です。
その為、皆さんとのいざこざが絶えないのです。
しかし、最近は揉め事も無く平和でしたが……
「……これは、テレザ様に報告した方がよさそうですね」
私は一介の侍女ですので、侍女頭であるテレザ様に報告して、今後の対応を決めてもらいましょう。
「一応、殿下にも話しとくよ」
「お願いします」
殿下の耳にも入っていることですし、黙っている訳には行きませんからね。
とりあえず、これで盗人騒ぎは終息するでしょう。
「──で、エルさんはもうお帰りいただいて結構ですよ」
「酷いなぁ~、今回僕功労者じゃない?卵まで取り返してきたんだし、もうちょっと労わってよ~」
未だにのんびり私のベッドでゴロゴロしているエルさんに、早く帰れと言っているんですが、中々帰りません。
折角綺麗にしたベッドを汚さないでください。
私は、一日の終わりは綺麗なベッドで眠りたいんです。
「ああ~、マリーの匂いのするベッドいいなぁ。眠くなってきちゃった」
「……今すぐそこから立ち退いて下さい。さもなくば……」
スッと太腿に付けていた小刀を出し威嚇すると、渋々エルさんが両手を上げながら、ベッドから降りてきました。
「──分かった分かった。だからその物騒なもの仕舞ってくれる?……今日は大人しく帰るけど、僕との約束忘れないでね」
エルさんは私に向けてウィンクをすると、そのまま何処かに行ってしまいました。
はぁ~、仕方ありませんね。次の休みはエルさんの為に使いましょうか。
仕事の合間に侍女仲間の方々に盗人に心当たりはないか、何を取られたのか聞いて周りました。
ある人は、小さい頃から大切にしていたぬいぐるみ。ある人は、旦那様から貰った結婚指輪。
変わり種ですと、手枷ですとか、鎖、拳銃、呪術式が書かれた本などです。
……皆さん、割と物騒な物を仕込んでいましたね。
しかし、こんなものを盗んで目的はなんでしょうか……
まあ、エルさんが戻って来ない事にはどうしようもありません。
大人しく待つことにしましょう……
◇◇◇
エルさんを待ち続けて、気づけば日も落ち始めて薄暗くなってまいりました。
──遅いです!!あの方は何しているんですか!?サボってたらタダじゃおきません!!
卵が心配で、焦りの色が濃くなりますがどうする事も出来ません。
こんな時、私は本当に無力ですね……
思わず拳をギュッと握りました。
「マリー、ごめん!!遅くなっちゃった!!」
「エルさん!!」
ようやく待っていた人が戻ってまりました。
その腕の中には大きな卵が、割れないように布に包まれてありました。
「──その卵!!」
「ああ、マリーの大切な物ってこれでしょ?ついでに取り返しといたよ」
なんと言うことでしょう……。エルさんは犯人を特定するだけではなく、卵まで取り返してくれたなんて……
……一瞬でもエルさんを疑った私が恥ずかしいです。
「……これです。ありがとうございます。本当に助かりました」
エルさんから卵を受け取ると、私はその卵を抱きしめ、その存在を確かめました。
「へぇ、マリーでもそんな顔するんだね。ちゃんと人らしい部分もあるって分かって安心したよ」
何か、大変失礼な事を言ってますが、卵を取り返してくれたので、今回は目を瞑ります。
……しかし、次はありませんよ。
「──それで、卵があると言うことは犯人が特定出来たと思って宜しいんでしょうか?」
「うん。僕にかかれば楽勝な依頼だったね」
その楽勝な依頼にどれだけ時間かけているんです?
私がどれだけ待ったと思っているんですか。
「──犯人は、侍女のリンダだよ」
ああ、リンダさん……
何故か、納得出来ました。
その理由は、このリンダさん。少々妄想癖と言うか、虚言癖があります。一言で言うと頭のおかしい方です。
その為、皆さんとのいざこざが絶えないのです。
しかし、最近は揉め事も無く平和でしたが……
「……これは、テレザ様に報告した方がよさそうですね」
私は一介の侍女ですので、侍女頭であるテレザ様に報告して、今後の対応を決めてもらいましょう。
「一応、殿下にも話しとくよ」
「お願いします」
殿下の耳にも入っていることですし、黙っている訳には行きませんからね。
とりあえず、これで盗人騒ぎは終息するでしょう。
「──で、エルさんはもうお帰りいただいて結構ですよ」
「酷いなぁ~、今回僕功労者じゃない?卵まで取り返してきたんだし、もうちょっと労わってよ~」
未だにのんびり私のベッドでゴロゴロしているエルさんに、早く帰れと言っているんですが、中々帰りません。
折角綺麗にしたベッドを汚さないでください。
私は、一日の終わりは綺麗なベッドで眠りたいんです。
「ああ~、マリーの匂いのするベッドいいなぁ。眠くなってきちゃった」
「……今すぐそこから立ち退いて下さい。さもなくば……」
スッと太腿に付けていた小刀を出し威嚇すると、渋々エルさんが両手を上げながら、ベッドから降りてきました。
「──分かった分かった。だからその物騒なもの仕舞ってくれる?……今日は大人しく帰るけど、僕との約束忘れないでね」
エルさんは私に向けてウィンクをすると、そのまま何処かに行ってしまいました。
はぁ~、仕方ありませんね。次の休みはエルさんの為に使いましょうか。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
婚約破棄されました。すでに〇〇は最終段階に入っていたようです。
国湖奈津
恋愛
王妃アンヌが強い権力を握るフェルール王国。
サラは毎週婚約者である皇太子エリックに会うため王宮に通っている。
今日もエリックに会いにいくと、エリックが美しい女性を連れていた。
女性の名はソフィア。
エリックはサラとの婚約を破棄し、ソフィアと結婚すると言い出した。
サラはいままで王妃に従順だったエリックが王妃に反旗を翻したことに驚くが…?
次第に明らかになる複数の事件、30年前の事件。
サラは幼なじみのリチャードと共に真相に迫る。
※注※ 人が死にます。ご注意ください。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。
私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ
もぐすけ
ファンタジー
シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。
あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。
テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる