城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

文字の大きさ
上 下
26 / 177
侍女兼便利屋

26

しおりを挟む
数日後、無事にジェムさんが職場復帰しました。
皆さんに復帰祝いの酒を振る舞われ大変ご満悦のご様子ですが、皆さんと同じペースで飲んでいて、大丈夫でしょうか。

暫くすると案の定、ジェムさんは真っ青な顔で手洗い場へと駆け出しておりました。

「やだ、これぐらいでギブなの?」

「わはははは!!こりゃ酒の訓練もしないとな!!」

シモーネさんとゴリさんが、ジェムさんの後ろ姿に向かって申しておりますが、貴方がおかしいんですよ?

この便利屋の皆さんは全員ザルなんです。
勿論、私も酔った事がございません。
皆さんで飲むと一晩で酒樽が5樽空になります。

……ですので、酒場は出入り禁止となり『マム』以外では飲めないのです。
一度酔うほど飲んでみたいものですね。

「……ねぇ、クレメール伯爵はどうなったの?」

ティムさんの言葉に、ピタッとゴリさんの手が止まりました。

実は私もそこは知らないのです。

「……後味悪いぞ?」

そこまで言うなら全て吐いてくれます?

ゴリさんは意を決した様に、ポツリポツリと語りだしました。

「……あの後、騎士達にクレメール伯爵を引き渡したんだ。そこまでは良かった……」

それで?

「城に向かう馬車の中で、クレメール伯爵は……死んだ」

「はぁ!?」

思わずティムさんが声を上げました。

「一緒に騎士が乗っていたんでしょ!?その騎士は何してたの!?みすみす殺されるのを見てた訳!?」

そうですね。おかしな点があります。
罪人を連行する場合、左右に一人ずつの騎士が逃げれないように囲っているはずです。

そして、ゴリさんの言い方です。
ではなく、と仰りました。
これは、襲われたわけでなく、自ら命を絶ったのか、あるいは……

「……呪詛が仕込まれていた」

──やはりですか。

「……大方、内情を暴れかれたくない近隣国の奴らの仕業だろう……と、言うことでこの件は終わった」

なるほど、確かに後味悪い終わり方ですね。
ゴリさんの話しを聞いていた皆さんも眉間に皺を寄せて何か言いたそうですが、敢えて何も言いません。

まあ、あまり深入りして面倒事に巻き込まれるのは御免なので、この話はこれまでと言うことで……

「そう言えば、マリー。クレメール伯爵の屋敷から男を一人連れ帰ったみたいだけど、どうしたの?」

「あら!!やだ、本当!?遂にマリーも男を持ち帰ってきたの~!?いい男!?私にも味見させて頂戴」

ティムさん、余計な事を……

見なさい、シモーネさんが素晴らしい勘違いをしてるじゃないですか。

ティムさんが言っている方は、殺し屋に不向きだった彼の事です。
そもそも、持ち帰ってきたのはそういう事ではなく、ちゃんとした職を見つけさせる為です。

そして、見事『マム』の見習い料理人となりました。
因みに、『マム』の、料理の全てはミレーさんの旦那様ジャックさんが一人で作っています。

ダメ元で『マム』を受けさせたら、まさかの採用でした。
どうやら、ジャックさん一人では少々厳しくなってきた所へ就職希望がやって来たのでジャックさんからしたら、棚からぼたもちだったらしいのです。

「ゴラァ!!ロン!!卵まだ出来ねぇのか!?」

「は、ははひい!!すみません!!」

ジャックさんは少々口は悪いですが、とてもいい人です。
その証拠に……

「おっ!!こっちの仕込みは上出来だ。また頼むな」

飴と鞭の使い方が大変上手です。
ロンさんも褒められ、嬉しそうです。

この調子で頑張ってください。



本日のお給金……ゴリさんの奢りの酒4樽(便利屋の皆さん含)

借金返済まで残り5億8千100万2100ピール
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。

石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。 そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。 そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。 ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。 いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

夫婦戦争勃発5秒前! ~借金返済の代わりに女嫌いなオネエと政略結婚させられました!~

麻竹
恋愛
※タイトル変更しました。 夫「おブスは消えなさい。」 妻「ああそうですか、ならば戦争ですわね!!」 借金返済の肩代わりをする代わりに政略結婚の条件を出してきた侯爵家。いざ嫁いでみると夫になる人から「おブスは消えなさい!」と言われたので、夫婦戦争勃発させてみました。

処理中です...