城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

文字の大きさ
上 下
20 / 177
侍女兼便利屋

20

しおりを挟む
突然ですが、私は今ヤンさん、ジェムさんと共に森に来ております。

そして、私達の目の前には大量のワーム。
ワームとは、簡単に言えば大きな芋虫ですね。
一匹だけなら、まあ愛くるしいと言えますが、これだけの量が集まってウネウネしていると気持ち悪いです。

さて、何故私とヤンさんが森に来ているのかと言いますと、遡ること数時間前……

「おいっ!!マリー、ヤン!!ちょっと下見に行ってきてくれ!!」

「何処にです?」

剣の手入れをしている所に、ゴリさんからの指令が下りました。

「ああ、どうやらワームが大量増殖しているらしくてな」

「……ワームですか」

ワームは繭を作り、その繭は希少で高値が付きます。
不自然な大量増殖、これは何者かの仕業だと考えているのでしょう。

繭目的だけなら、まだいいんですがね。
ワームは見た目は芋虫ですが、攻撃力はこの間の大蜘蛛に匹敵します。
それが、何匹もとなると少々骨が折れます。

「俺も一緒に連れてってください!!」

名乗りを上げたのはジェムさんです。

ジェムさんはあの日以来、ヤンさんにベッタリで離れません。
ヤンさんもそれを受け入れているんですから、凄いです。

私なら鬱陶しくて一日持ちません。

「……………」

「『そうか、じゃあ一緒に行こう』と、仰っております」

「よし、じゃあヤン、ジェム、通訳のマリー行ってこい!!」

……サラッと通訳と言いましたよね。



──とまあ、こんな感じで今に至ります。

「うえ、気持ち悪いなぁ」

ジェムさんが大量のワームを見て、思わず本音を漏らしていました。

「…………」

「『あれで、食うと割と美味いぞ』と、仰っております」

「あれ、食えるの!?」

いや、私も初耳なんですが……
あれを食べる強者がいたんですね。

「…………」

「『冗談だ』らしいです」

そして、ヤンさんがフッと笑いました。

ヤンさんが、冗談を!?しかも、微笑みながら!?
これは、凄い事ですよ!!

ヤンさんとの付き合いはそれなりにありますですが、一度も冗談など聞いた事ありません。
ヤンさんが笑うとこなど数年に一度です!!
これはいい事ありそうですね。

しかし、ジェムさんが来てからヤンさんの雰囲気が変わったのも確かです。
なんと言うか、穏やかになった?と言うんでしょうか。
前は常に気を張っている感じでしたからね。
ジェムさんを見ているヤンさんは、飼い主の様ですからね。

「うわぁぁぁぁぁ!!!やめてくれ!!」

「いやぁぁぁぁ!!!」

森の中に悲鳴が響き渡りました。
悲鳴のした方を見ると、今まさに数人の男性、女性がワームに食べられようといている所でした。

「ヤンさん!!!」

「…………」

「通訳している暇はありません!!ジェムさんは勘で動いてください!!」

「勘!?」

すぐさま救出に向かいます。

「大丈夫ですか?私に捕まってください」

とりあえず二人の女性を抱え、ワームの群から助け出します。
離れた場所まで来たら女性を下ろし、再びワームの元へ。

「マリー!!こいつ頼む!!足食われた!!」

ジェムさんが呼ぶ方へ行くと、男性の方の片足がありません。
これは、早急に止血しなければ命が危ないです。

こうしてる間にも、ワームの攻撃は続きます。

「マリー!!後!!」

ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ワームが大きな口を開き、牙を剥けてきました。
芋虫の分際で人間に牙を剥けるとはいい度胸です。

ブシュッ!!!

「──ああ、汚れてしまいました。折角手入れしたばかりでしたのに」

先程手入れしたばかりの剣で、ワームの首を切り落しました。
その際、ワームの体液がべっとり剣に付着してしまいました。

……帰ったら磨き直しです。

「……この状況で、剣の汚れを気にするのはお前ぐらいだぞ?」

ジェムさんがそんな事を言っておりますが、余所見してる暇はありませんよ?

「ジェムさん、頭上にご注意下さい。私はこの方の手当を優先致します」

「頭上?……うわっ!!!分かった!!ここは俺と兄貴に任せろ!!!」

ジェムさんは素早くワームの攻撃を剣で受け、やり返しました。
ふむ。腕が上がってきましたね。これもヤンさんの指導のおかげでしょう。

さて、私はこの方を向こうへ……

先程、女性の方々を避難させた場所まで男性を担いで行きます。

「マシュー!?」

男性を見るなり、一人の女性が駆けつけてきました。

「ああ、マシュー、なんて事……」

男性は出血が多く、息も絶え絶え。意識は……ありません。
凄く、危ない状態です。

「離れて下さい!!止血します!!」

女性を退かせ、足の付け根を紐でキツく縛り止血します。

この方はすぐにでも病院に連れていかなければ、間に合いません。
しかし、ここを離れることも出来ません。

万事休すとはこの事ですか……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

処理中です...