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言ってしまった……
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「貴方を好いています」
私の頭の中で何度もリピート再生される言葉に驚きを隠せない。
(ジークが私の事を……好き?)
えっ?ニーナは?
私の結末は?
軽くパニックになっている頭を落ち着かせる為に、今の状況を整理する。
今は第二王子とヒロイン、ニーナの結婚式前夜祭。
明日には結婚式が執り行われる。
イレーナの断罪はなかったが、小説の話としてはハッピーエンドで完結する。
という事は、ジークと婚約しても支障はなくなる?
そもそも、原作ではこの時点で既に私の存在はない。
両親、弟も元気に健在だ。
「……前に、好きな人がいると言ってませんでしたか?」
ここははっきりしておきたい。
何だかんだ言って、ニーナの事が忘れられない様なら私は潔く身を引く。
いくら愛の言葉を囁かれても、嘘にしか聞こえなくなるから。
「言いましたよ?その時に察してくれると思っていたんですけどね……」
苦笑いをしながら「貴方の事ですよ」と言い切った。
「……え?ニーナは?」
思わず声が出た。
「しまった!!」とすぐに口を隠したが後の祭り。
「……何故、ニーナ妃が出てくるのです?」
笑顔の裏に真っ黒な何かを背負ったジークが私を追い詰める。
「……いや、あの、何となく?仲がよろしい感じ?がしたので……」
しどろもどろになりながらも下手な言い訳を並べた。
すると「はぁぁ~」と盛大な溜息と共に、私はジークの膝の上に座らさせられた。
「──ちょっ!!」
慌てて退こうとしたが「黙って聞きなさい」と言われ、仕方なく膝の上で大人しくしている事になった。
「良いですか?私と第二王子とニーナ妃は幼なじみなんです」
「へ?」
ジークが語ってくれたのは、小説には一切書かれていない事だった。
そもそも、この三人は幼なじみで城で遊ぶほどの仲だったらしい。
そんな幼なじみに変化が訪れた。
王子がニーナに恋をしたのだ。
ジークは王子に相談を持ちかけられ、ニーナとの仲を取り持った。
まあ、取り持つまでもなく、ニーナも王子の事を思っていたので、後押しをしたぐらいだと言っていた。
「……まったく、貴方は何を勘違いしているのか……」
「はぁぁ~」と呆れたように溜息を吐きながら言っていた。
いや、原作では貴方、ニーナに恋していたんですけど?なんて言えない。
「で、でも、私はあのクラウゼ家の者ですよ?」
この半年でイレーナの印象は良くなったとはいえ、今までやってきた事実は消えることは無い。
「そうですね……確かに貴方は、あの悪名だかいクラウゼ家の令嬢です」
ズキッ
ジークの口から悪名だかいと言われ、キュッと唇を噛み締めた。
「……ですが、貴方は変わった。弱い者を助け、間違った道へ進もうとする者を正した。……確かに貴方をよく思わない人間もいることも事実。それに……」
そこまで言うと、ジークは大きな腕で私を抱きしめた。
「この私に牙を向ける女性は貴方だけだ。そんな貴方の事が気になって仕方がなかった」
褒めているのか嫌味を言っているのかよく分からない事を言われた。
(ジークの匂いがする)
甘い香りが私の脳を刺激している。
その香りに酔いしれていると、グイッと顎を掴まれた。
ジークと目が合う。
「気付けば貴方に恋をしていた……」
月夜に照らされたジークはそれはそれは美しく妖艶だった。
もう、この人の美しさは犯罪レベルだろと思いながら見ていると、私の頬に手を当ててきた。
「私の気持ちを受けって貰えますか?」
今までに無い程、真剣な表情で伝えてきた。
ここまでされてようやく分かった。ジークは本気だ。本気で私の事を……
(~~~~っ!!!!)
何とも言えない気持ちになった。
思わずジークから顔を背けてしまった。
しかし、ジークはそれを許さず、私の顔をがっちり掴んで離さない。
「あの、えっ……と」
目が泳ぎ、しどろもどろになってしまう。
「ダメですよ。私の顔をしっかり見て」
(無理です!!)
なんという拷問。
今まで色々な嫌がらせを受けてきたが、これは違う意味でキツい。
と言うか、こんな所誰かに見られたら……
「姉様~~!?」
そう思っていたら、私を探すラルフの声が聞こえてきた。
(まずい!!!)
この状況は非常にまずい。
あらぬ噂が立ってしまうこと間違いなし。
それもあるが、実の弟に姉のラブシーンなんて見られたら羞恥心で死ねる!!
「どうしたんです?早く返事を聞かせてください」
私が焦っているのを知りながらも、私を離そうとはしない。
「……早くしなければ弟君にバレてしまいますよ?まあ、私は一向に構いませんが?」と耳元で囁かれた。
「返事はその内しますから、とりあえず離してください!!」
ジークの膝の上からどうにか降りようとするが、そこは騎士団長。力の差を見せつけてきた。
「姉様~~??」
ラルフの声が徐々に近づいてくるのが分かった。
「ほら、早くしなければ見つかりますよ?」
クスクスと微笑みながら私の手の平にキスを落としてきた。
明らかに私をからかっているのが分かっているが、いちいち対応している時間もない。
「~~~っ!!!分かりました!!求婚を受け入れます!!」
言ってしまった……
私の頭の中で何度もリピート再生される言葉に驚きを隠せない。
(ジークが私の事を……好き?)
えっ?ニーナは?
私の結末は?
軽くパニックになっている頭を落ち着かせる為に、今の状況を整理する。
今は第二王子とヒロイン、ニーナの結婚式前夜祭。
明日には結婚式が執り行われる。
イレーナの断罪はなかったが、小説の話としてはハッピーエンドで完結する。
という事は、ジークと婚約しても支障はなくなる?
そもそも、原作ではこの時点で既に私の存在はない。
両親、弟も元気に健在だ。
「……前に、好きな人がいると言ってませんでしたか?」
ここははっきりしておきたい。
何だかんだ言って、ニーナの事が忘れられない様なら私は潔く身を引く。
いくら愛の言葉を囁かれても、嘘にしか聞こえなくなるから。
「言いましたよ?その時に察してくれると思っていたんですけどね……」
苦笑いをしながら「貴方の事ですよ」と言い切った。
「……え?ニーナは?」
思わず声が出た。
「しまった!!」とすぐに口を隠したが後の祭り。
「……何故、ニーナ妃が出てくるのです?」
笑顔の裏に真っ黒な何かを背負ったジークが私を追い詰める。
「……いや、あの、何となく?仲がよろしい感じ?がしたので……」
しどろもどろになりながらも下手な言い訳を並べた。
すると「はぁぁ~」と盛大な溜息と共に、私はジークの膝の上に座らさせられた。
「──ちょっ!!」
慌てて退こうとしたが「黙って聞きなさい」と言われ、仕方なく膝の上で大人しくしている事になった。
「良いですか?私と第二王子とニーナ妃は幼なじみなんです」
「へ?」
ジークが語ってくれたのは、小説には一切書かれていない事だった。
そもそも、この三人は幼なじみで城で遊ぶほどの仲だったらしい。
そんな幼なじみに変化が訪れた。
王子がニーナに恋をしたのだ。
ジークは王子に相談を持ちかけられ、ニーナとの仲を取り持った。
まあ、取り持つまでもなく、ニーナも王子の事を思っていたので、後押しをしたぐらいだと言っていた。
「……まったく、貴方は何を勘違いしているのか……」
「はぁぁ~」と呆れたように溜息を吐きながら言っていた。
いや、原作では貴方、ニーナに恋していたんですけど?なんて言えない。
「で、でも、私はあのクラウゼ家の者ですよ?」
この半年でイレーナの印象は良くなったとはいえ、今までやってきた事実は消えることは無い。
「そうですね……確かに貴方は、あの悪名だかいクラウゼ家の令嬢です」
ズキッ
ジークの口から悪名だかいと言われ、キュッと唇を噛み締めた。
「……ですが、貴方は変わった。弱い者を助け、間違った道へ進もうとする者を正した。……確かに貴方をよく思わない人間もいることも事実。それに……」
そこまで言うと、ジークは大きな腕で私を抱きしめた。
「この私に牙を向ける女性は貴方だけだ。そんな貴方の事が気になって仕方がなかった」
褒めているのか嫌味を言っているのかよく分からない事を言われた。
(ジークの匂いがする)
甘い香りが私の脳を刺激している。
その香りに酔いしれていると、グイッと顎を掴まれた。
ジークと目が合う。
「気付けば貴方に恋をしていた……」
月夜に照らされたジークはそれはそれは美しく妖艶だった。
もう、この人の美しさは犯罪レベルだろと思いながら見ていると、私の頬に手を当ててきた。
「私の気持ちを受けって貰えますか?」
今までに無い程、真剣な表情で伝えてきた。
ここまでされてようやく分かった。ジークは本気だ。本気で私の事を……
(~~~~っ!!!!)
何とも言えない気持ちになった。
思わずジークから顔を背けてしまった。
しかし、ジークはそれを許さず、私の顔をがっちり掴んで離さない。
「あの、えっ……と」
目が泳ぎ、しどろもどろになってしまう。
「ダメですよ。私の顔をしっかり見て」
(無理です!!)
なんという拷問。
今まで色々な嫌がらせを受けてきたが、これは違う意味でキツい。
と言うか、こんな所誰かに見られたら……
「姉様~~!?」
そう思っていたら、私を探すラルフの声が聞こえてきた。
(まずい!!!)
この状況は非常にまずい。
あらぬ噂が立ってしまうこと間違いなし。
それもあるが、実の弟に姉のラブシーンなんて見られたら羞恥心で死ねる!!
「どうしたんです?早く返事を聞かせてください」
私が焦っているのを知りながらも、私を離そうとはしない。
「……早くしなければ弟君にバレてしまいますよ?まあ、私は一向に構いませんが?」と耳元で囁かれた。
「返事はその内しますから、とりあえず離してください!!」
ジークの膝の上からどうにか降りようとするが、そこは騎士団長。力の差を見せつけてきた。
「姉様~~??」
ラルフの声が徐々に近づいてくるのが分かった。
「ほら、早くしなければ見つかりますよ?」
クスクスと微笑みながら私の手の平にキスを落としてきた。
明らかに私をからかっているのが分かっているが、いちいち対応している時間もない。
「~~~っ!!!分かりました!!求婚を受け入れます!!」
言ってしまった……
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