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第4話

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作戦が失敗に終わり、更にあの後如何にヴェルナーが素晴らしく素敵な方かを口から砂を吐きそうな程聞きかされ私の精神はズダボロ。

……あの人達は絶対騙されている。決して敬うような奴では無い。

フラフラになりながら何とか屋敷に戻ってくると、何やら屋敷の前に人集りができており、何事?と覗いてみてギョッとした。

『ヴェルナー様を解放しろ』
『アリア嬢は男をはべらせている』
『ヴェルナー様の優しさにつけ込む悪女』

等などの張り紙が門に貼り付けてあった。
中には私と何処ぞの子息が抱き合ったのを見た。やら、キスしているのを見た。など有り得もしない事まで書かれてあった。

今までは口で攻撃されるばかりで実害が出たのはこれが初めてだった。
私は真っ青になりながら震える足を周りの人達に気付かれない様にするのが精一杯で、この場から去ることが出来ない。
幸か不幸か門を取り囲んでいる人達は私の変装に気がついていない。

『自分の身を心配なさい』

エリザの言葉が脳裏に浮かんだ。

──なるほど、こういう事か。

私はキュッと唇をかみ締めた。

なんで私ばっかりこんな目にあわなきゃいけないの!?たかが親同士の決めた婚約じゃない!!どこの誰か知らないけどこんな事するぐらいなら貰ってよ!!

俯き泣きそうになっていると

ガシャンッ!!!!!!!

門を殴りつける音が聞こえた。
顔を上げ潤んだ瞳で門を見ると、騎士の姿のヴェルナーが門に貼られた紙をむしり取っていた。

「……誰がこないな事したんかしらんけど、ええ度胸しとるなぁ?」

今までヒソヒソしていた人達がヴェルナーの殺気に顔を青くしながら一目散に散らばっていった。

誰もいなくなり、私とヴェルナーだけが残った。
ヴェルナーは呆けている私の元にやってくるなり抱きしめてきた。

「!?」

あまりの出来事に反応が遅れた。

「大丈夫……アリアは僕が守ったる」

目を見開いてしまうほど優しい声が耳に響いた。
それと同時にアンバーの香りがホワッと香った。
……何故だろう、この匂いを嗅ぐと自然と落ち着く。

その香りとヴェルナーの優しい声に、今まで張り詰めていたものが決壊し、あろう事かヴェルナーに抱かれたまま泣いてしまった……
ヴェルナーは嘲笑うでもなく、私が泣き止むのをギュッと抱きしめていてくれた。



❊❊❊❊❊❊



「なんて失態……」

私は自室にある机に肘を付いて頭を抱えたていた。

ヴェルナーに抱かれ泣き終えた私はその瞬間、我に返ったのだ。
慌てて離れようとする私に「なんや?まだええやん」などと離そうとしなかった。
私は照れくさいのと、こんな奴に泣きついた自分が悔しくて、ついつい八つ当たりでヴェルナーの足の間を思いっきり蹴り上げた。

「~~~っ!!!ちょ、はあかんって……」
「知らんわ!!ハゲ!!」
「ハゲちゃう!!──……ったく」

ヴェルナーの声も聞かず捨て台詞を吐いて屋敷に逃げ込んだ。

「……お礼ぐらい言っても良かったかな……」

一応助けてくれたんだもんね……
流石に蹴り上げたのは不味かったかなぁ……

今更ながら申し訳なかったなぁと思い始めた。

「──………ううん、元はと言えばアイツが悪いんだから当然の報いよ!!」

そうよ。元はと言えば、アイツが何処ぞの令嬢を誑かしたせいで……私はとばっちりなのよ!!

そう思うと元気……というより怒りが込み上げてきた。

「それはそうと、誰があんな事を……?」

エリザは私を嫌ってる令嬢は少なからずいるって言ってた。

……その少なからずってどの程度か教えて欲しかったよね。

この騒ぎは当主であるお父様の耳にも入ってはいるはずだから何らかの動きがあるとは思うが、実害が出た今は用心するに越したことはない。

今回は張り紙で済んだが、次は命を狙われるかもしれない。

「……ほんっと勘弁して欲しいわ……」

溜息を吐きながら再び頭を抱えた。

コンコン

「失礼します。お嬢様、旦那様がお呼びです」

執事長が私を呼びに来た。

──思っていたより早い呼び出しだなぁ。

私は執事長と一緒にお父様の執務室へ向かった。

執務室を開けると、そこにはお父様とヴェルナーのお父様である騎士団長も一緒にいた。

「来たか」
「アリア。久しぶり。今回はウチのバカ息子のせいで迷惑をかけてしまったようだね」

「申し訳なかった」とおじ様が深々と頭を下げてきた。
いくらヴェルナー子供のせいでもおじ様が頭を下げる必要は無い。

──ひぃ~~!!やめてぇ!!ウチの方が格下なのよ~~!!

私は慌てて顔を上げるようお願いした。

「アリアは相変わらず良い子だなぁ。それに比べウチのボンクラは……」

おじ様は眉間を押さえながら唸っていた。

んと~、ここにおじ様がいるということは犯人が見つかったのかな?

ヴェルナーのお父様は長年団長を務めているだけあって、ウチのお父様と同年代だとは思えないほど逞しい体をしている。
この人も若かれし頃、それはそれはモテたらしい。
そんなおじ様を射止めたのが、商人の知識を深める為この国に留学していたおば様だったとか。

おじ様は一目惚れだったらしく、すぐに口説き落とそうとしたらしいが、その当時……まあ、今もだけどおば様は結婚よりも仕事優先の人で、おじ様の誘いを断り続け一度も誘いに乗ることなくこの国を去ったが、そこはおじ様。しつこく追いかけ行く先々で口説き、根負けしたおば様が渋々承諾したという逸話が残ってる。

ヴェルナーの両親の過去を振り返っていると、突然ドアがバンッ!!と開いた。

「ウチのボンクラ小僧はどこや!!!」

驚いて振り返ると、仁王立ちのおば様とその後ろにニコニコ微笑んでいるお母様の姿があった。





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