2 / 11
1話
しおりを挟む
──ええ~、この度魔王城に居候が決定した宮古咲です。
どうやら私、本当は聖女として人間界で召喚されるはずだったのですが、何かの手違いでここ魔王城に召喚されてしまいました。
けど、この間違いはこちらかすればまさに幸運な出来事でした。
なぜなら…………………ここの生活、マジ最高!!
まず、ここ魔界は夜型の方々も多数おり、起床はバラバラ。
皆、起きたい時に起き、寝たい時に寝るというスタイル。
とはいえ、みんな大体時間通り行動しているので、咲もそのスタイルで朝8時起床、夜10時就寝で落ち着いた。
そして食事だが、初めて出された食事の見た目の感想はスプラッター映画。
内蔵をそのまま出されたような感じの物だったが、意を決して食べてみたら見た目に反して激うま料理だった。
それからは目玉が入っていようが、体の一部分が溶けずに残っていようが躊躇なく口にできた。
それに、午後にはおやつが振舞われることが度々あり、それが楽しみでおやつが出る日は誰よりも先に食堂に行っている。
幸せそうに頬張る咲の姿が小動物の様だと、おやつを分け与える者も増えている。
使用人である魔族達との仲も良好。言うことなし。
むしろみんなが気を利かせてくれるから咲にとっては元の世界より全然住み心地が良き。
そして、最後に仕事。
いくら飼われている身でも、働かざる者食うべからずだ。
ただ、この仕事が一番の難問だった。
「サキ!!今から森に行くが一緒に行くか!?」
「お供します!!」
とまあ、意気込んで行ったが、人間の臭いに釣られた魔獣に襲われ、あわや大惨事と言う所で助けられた。
「おうっ、サキじゃねぇか。今から倉庫整理やるんだが手伝えよ」
「喜んで!!」
名誉挽回とばかりに着いて行ったら、そこは魔窟……
しかも高価な物やもう手に入らない貴重な物が無造作に置かれていた。
そんなモノを扱うなど「絶対落とすなよ!!フリじゃないからな!!」状態。
震える手で何とか移動してみるが案の定、山積みに積まれた本に躓き先代魔王の銅像を破壊。
それならばと、侍女の仕事はどうだと言われ「次こそは任せてください!!」と始めたものの……
「ん~……頑張りは認めるんだけど、正直、二度手間?」
優しい口調でド正論を吐いたのはこの魔王城の侍女頭であるシリー。
その言葉を聞いた咲は自分の不甲斐なさと申し訳なさに項垂れるしか無かった。
「サキを責めている訳じゃないのよ?けどね、けどよ……ねぇ?」
項垂れる咲を慰めてくれようとする気持ちは分かるが、今の咲には耳に入ってこなかった。
「まさか窓もろくに拭けないとはな……人間ってのはどうやって生きてんだ?」
「それにほら、人間って脆いじゃない?すぐに怪我するし治りも遅いって話よ?」
勘違いされる前に言っておくが、窓はちゃんと拭ける。
ただ、それが普通の窓の場合だ。
ここ魔王城の窓には結界が張られており、触ると電流が流れた様に全身が痺れる。
丈夫な魔族達にはなんの事ない窓拭きが、人間の咲にとっては罰ゲームと同等なのだ。
下手すれば死ねる。
そんな訳で窓拭きは他の方に任せ、咲は床掃除を任された。
しかし、ここは魔王城。廊下も普通な訳が無い。
案の定、廊下があちらこちらに現れ迷子になり、使用人全員で咲の捜索が行われ、無事にその日の夜遅くに保護された。
「……お前、一体何が出来るんだ?」
呆れたように口にするのは魔王軍の総司令官であるギロバス。
ギロバスは面倒見がよく、咲のことも目にかけてくれいた。
「うぅぅぅ~……こっちが知りたいですよ~」
約立たずだと思っていても一切口に出さず、出来る事を探してくれようとする魔族の方々に申し訳なさ過ぎて泣けてきた。
「魔王様の専属侍女。……と言うのはいかがです?」
部屋の入口から声がかかり、振り返るとそこには宰相のレザゼルがいた。
この人は魔王と違ったイケメン。言うならば、魔王は男らしく凛々しい。対してレザゼルは中性的で色気がある。
魔王の次に人気があるのも納得出来る。
で、そんなレザゼルが咲の為に持ってきた仕事と言うのが、魔王の専属侍女。
「おいおい、レザゼル。そりゃいくらなんでも無理じゃないか?」
「そうねぇ。魔族ですら、魔王様の機嫌を伺いながら仕事をしてるのよ?サキには厳しいんじゃない?」
「魔王様の逆鱗にでも触れたらどうなるか……」なんて恐ろしい言葉の数々が聞こえ、咲の顔色は徐々に悪くなっていった。
これまでのことを考えると、リスクがあり過ぎるのは重々承知しているが、このままタダ飯食らいと言う訳にもいかない。
「さあ、どうします?やります?やめます?」
「やります!!やらせてください!!」
止める二人を制止して、咲は魔王の専属侍女へ就任することになった。
どうやら私、本当は聖女として人間界で召喚されるはずだったのですが、何かの手違いでここ魔王城に召喚されてしまいました。
けど、この間違いはこちらかすればまさに幸運な出来事でした。
なぜなら…………………ここの生活、マジ最高!!
まず、ここ魔界は夜型の方々も多数おり、起床はバラバラ。
皆、起きたい時に起き、寝たい時に寝るというスタイル。
とはいえ、みんな大体時間通り行動しているので、咲もそのスタイルで朝8時起床、夜10時就寝で落ち着いた。
そして食事だが、初めて出された食事の見た目の感想はスプラッター映画。
内蔵をそのまま出されたような感じの物だったが、意を決して食べてみたら見た目に反して激うま料理だった。
それからは目玉が入っていようが、体の一部分が溶けずに残っていようが躊躇なく口にできた。
それに、午後にはおやつが振舞われることが度々あり、それが楽しみでおやつが出る日は誰よりも先に食堂に行っている。
幸せそうに頬張る咲の姿が小動物の様だと、おやつを分け与える者も増えている。
使用人である魔族達との仲も良好。言うことなし。
むしろみんなが気を利かせてくれるから咲にとっては元の世界より全然住み心地が良き。
そして、最後に仕事。
いくら飼われている身でも、働かざる者食うべからずだ。
ただ、この仕事が一番の難問だった。
「サキ!!今から森に行くが一緒に行くか!?」
「お供します!!」
とまあ、意気込んで行ったが、人間の臭いに釣られた魔獣に襲われ、あわや大惨事と言う所で助けられた。
「おうっ、サキじゃねぇか。今から倉庫整理やるんだが手伝えよ」
「喜んで!!」
名誉挽回とばかりに着いて行ったら、そこは魔窟……
しかも高価な物やもう手に入らない貴重な物が無造作に置かれていた。
そんなモノを扱うなど「絶対落とすなよ!!フリじゃないからな!!」状態。
震える手で何とか移動してみるが案の定、山積みに積まれた本に躓き先代魔王の銅像を破壊。
それならばと、侍女の仕事はどうだと言われ「次こそは任せてください!!」と始めたものの……
「ん~……頑張りは認めるんだけど、正直、二度手間?」
優しい口調でド正論を吐いたのはこの魔王城の侍女頭であるシリー。
その言葉を聞いた咲は自分の不甲斐なさと申し訳なさに項垂れるしか無かった。
「サキを責めている訳じゃないのよ?けどね、けどよ……ねぇ?」
項垂れる咲を慰めてくれようとする気持ちは分かるが、今の咲には耳に入ってこなかった。
「まさか窓もろくに拭けないとはな……人間ってのはどうやって生きてんだ?」
「それにほら、人間って脆いじゃない?すぐに怪我するし治りも遅いって話よ?」
勘違いされる前に言っておくが、窓はちゃんと拭ける。
ただ、それが普通の窓の場合だ。
ここ魔王城の窓には結界が張られており、触ると電流が流れた様に全身が痺れる。
丈夫な魔族達にはなんの事ない窓拭きが、人間の咲にとっては罰ゲームと同等なのだ。
下手すれば死ねる。
そんな訳で窓拭きは他の方に任せ、咲は床掃除を任された。
しかし、ここは魔王城。廊下も普通な訳が無い。
案の定、廊下があちらこちらに現れ迷子になり、使用人全員で咲の捜索が行われ、無事にその日の夜遅くに保護された。
「……お前、一体何が出来るんだ?」
呆れたように口にするのは魔王軍の総司令官であるギロバス。
ギロバスは面倒見がよく、咲のことも目にかけてくれいた。
「うぅぅぅ~……こっちが知りたいですよ~」
約立たずだと思っていても一切口に出さず、出来る事を探してくれようとする魔族の方々に申し訳なさ過ぎて泣けてきた。
「魔王様の専属侍女。……と言うのはいかがです?」
部屋の入口から声がかかり、振り返るとそこには宰相のレザゼルがいた。
この人は魔王と違ったイケメン。言うならば、魔王は男らしく凛々しい。対してレザゼルは中性的で色気がある。
魔王の次に人気があるのも納得出来る。
で、そんなレザゼルが咲の為に持ってきた仕事と言うのが、魔王の専属侍女。
「おいおい、レザゼル。そりゃいくらなんでも無理じゃないか?」
「そうねぇ。魔族ですら、魔王様の機嫌を伺いながら仕事をしてるのよ?サキには厳しいんじゃない?」
「魔王様の逆鱗にでも触れたらどうなるか……」なんて恐ろしい言葉の数々が聞こえ、咲の顔色は徐々に悪くなっていった。
これまでのことを考えると、リスクがあり過ぎるのは重々承知しているが、このままタダ飯食らいと言う訳にもいかない。
「さあ、どうします?やります?やめます?」
「やります!!やらせてください!!」
止める二人を制止して、咲は魔王の専属侍女へ就任することになった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。
妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる