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ソニアの事件があって、またしばらく学園を休んでしまった。
このままでは、不登校として有名になっちまうじゃないか!!
そんな不名誉な称号いらないよ!
私はこう見えて、学生時代は小中高と皆勤賞だったんだ!!
ま、怪我をしてても親父に「そんなもんかすり傷だ!」って言われて、仕方なしに行ってたようなもんだからな。

で、今日が久しぶりの学園登校日だ。
クラスへ行くと、カナリヤが……いない?
いつもは一番でクラスに来ているのに?

──あの子は、また中庭かい?

そう思い、中庭まで足を運んだが人の姿すら見当たらない。
おかしいねぇ。どこ行っちまったんだ?
首を捻っていると、頭上から声がした。

「ミレーナじゃないか」

「ん?」

ガサガサッ!と木の枝が揺れると、隣国第三王子のカルロが降りてきた。

──こいつの事、忘れてた!!

そうだった。カルロには中庭での立ち振る舞いを見られたんだった。
ソニアの事があって、すっかり忘れてたよ。

「ご機嫌よう、カルロ様」

「おや?この間とは口調が違いますね?かしこまらなくて結構ですよ?」

まったく、食えない人間だ。
カルロは随分と賢い。下手な言い訳など通用しない。
こういう奴が、一番何考えてるのか分からない。

「そうかい?ま、こっちの方が気楽でいいけどね」

「ふふっ、面白い人だ。で、あなたは一体何者なんですかね?」

そりゃ、そういう結論になるだろうね。
勘のいい奴は嫌いじゃないけど、めんどうだねぇ。
さて、困ったね。正直に話してそれを信じるか?
しかし、下手な言い訳は通用しないからねぇ。

──仕方ない、腹を括るか。

「……簡単に言えば、肉体はミレーナのもの。中身は違う奴ってとこかね?」

「では、あなたはミレーナではないと?」

「正確には良くわかんないけど、そんなとこじゃないかね?」

他に言いようがないからねぇ。
当の本人がよく分かってないんだから。

「ミレーナの中にいる、あなたは誰なんです?」

「東雲菜知。極道の元頭だよ」

「極道?」

「あぁ、ちょっとした組織だな。その組織の頭だったんだよ」

「ほるほど、それであの立ち振る舞いですか……ますます面白い」

ああ、この顔は何かを企んでる顔だね。
これからは平穏な学園生活を目指そうとしてんだ。
面倒ごとはもう御免被りたいんだが?

「あっ!そういえば、カナリヤ見なかったかい!?」

そうだった!カナリヤを探してる途中だったよ!
こんな奴に構ってる暇はない。

「あぁ、フォンターナ嬢なら先生に呼ばれていましたけど?」

「なんだい!探しても見つからないはずだよ!」

こんな事なら教室でじっとしてるんだった。
そうすれば、こいつにも会わなかった。
そうと分かれば、ここに長居は無用だね。

「カナリヤの居場所が分かったことだし、私はクラスに戻るよ」

「そうですか?……ああ、次の長期休みに一度国に帰ろうと思ってるんですよ。もしよろしければ、一緒に来ませんか?」

「はっ?」

カルロの国に一緒に行くのは、カナリヤのはずだろ!?
この流れ、原作で読んだんだ!
カルロに誘われてカナリヤは一緒に行くんだ。
そして、着いて行ったカナリヤにカルロはプロポーズをする。
しかし、カナリヤの返事はノー。
アレンの事が好きだからと、断るんだ。
そこで、カルロはアレンに手紙を書く。

「カナリヤと婚約をした。婚約発表をするから是非来て欲しい」と。

この手紙を読んだアレンは激怒、隣国に乗り込み一髪触発の所で、ネタばらし。
いつまで経っても、自分の気持ちを伝えないアレンにカルロが発破をかけたのだ。
そして、この事が幸をそうしカナリヤとアレンは婚約を果たす。
そう、カルロはすべてこの二人の為に仕組んだことだった。

──自分の恋より、友の恋か……

「返事は今でなくていいですよ」

「いや、私は遠慮しとくよ。これ以上兄様達に心配させたくないからね」

「まぁすぐに答えを出さなくてもいいじゃないですか。休みまで一月ありますので、ゆっくり考えてください」

「いや、ちょっ!」

言うだけ言って、カルロは立ち去ってしまった。

──はあ、困ったね。



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